第1話 絶望の味
皆さま、お久しぶりでございます。ミルフェでございます。
早、半年ぶり更新されない「下位神なんたら」にお暇を持て余していたところでしょう!
この先導者たるミルフェ、今回も皆さまを新たな物語へご招待して差し上げましょう!
??はいはい。下位神の更新が先?それはですねー、ネームを入れたデータが紛失してしまいまして……。
とにかく、あちらはラグタナ君に任せてですね。私は先導者としての仕事を全うするわけですよ。
では、ご案内致しましょう。
場所は、山奥のお屋敷。名家の跡取りのその人生について……
第1話 絶望の味
人が一番怖れることといったら命に関することだと僕は思う。
例えば、家族や友人の死。でも、それ以上に自身の死については怖れたことがきっとあるはずだ。
と、昨日12歳になった僕がそんなことを考えている訳を話すと長くなるけど付き合って欲しい。
今、朝食すら食べず、ベットで天井見上げている僕の気持ちがわかるはずだから。
それは突然だった。
「……。余命半年です……。」
……
今は12月、冬真っ盛りの気温の暖炉の熱気が対抗しつつあったが一気に冷え上がった。
担当女医から告げられた4文字の重い一言。
もはや、立ち上がる気力さえ失い不安定な自分の体を支えるので精一杯だった。
他人から伝えられる自分の死期に、
僕は……、どうして何も考えられないのだろう……。
目の焦点を合わせることさえ面倒になりそっと暖炉の方へと目を向けた。
ゆらゆらと赤や黄色の光が走馬灯のように僕のこの12年間を映し出していくのである。
お前はもう十分生きることができたのかもしれない。
生まれながらに治療方法のわからない難病にかかり、普通は5年も生きられないと知ったときには何度も絶望したが、12歳となった今では未来への期待も出てきていた……。
だが……、
「昨日あれだけ状態がいいと!言っていたじゃないですか!」
両親はもうすでに泣き出し、母親が女医に抗議している。
一方も剣幕に押されたのか、それとも存在しない責任感に押されたのか泣き出してしまった。
やっと出た一言が……、
「昨日は最後の頑張りだったんです。」
絶望と言うのはこういう状況のことを指すのかもしれない……。
強いて味を言うならば無に他ならない。
あと半年……か。 6ヶ月……。180日間……。
具体的にしていってようやく心に感情が、不安が生まれる。
でも……、
不思議と涙は流れなかった……。
12月25日 クリスマス……。
そして……、僕の誕生日。
バースデーケーキのろうそくは寂しそうにゆらゆらと消え、サンタクロースは今年初めて余命と言うプレゼントを置いていった。
もはや絶望通り越し虚無の域へと達している。
ああ……、生きたい……、死にたくない……。
まだ残る3人の部屋を後にし、ベランダから空を見上げ、ようやく願いをつぶやく。
少年のはかない声は振り続ける雪へと吸収され静かに消えていった。