旅立ち
知らぬ内に200PV感謝です!!
…面白いのがかけるようになりたい…
「日本に行くにあたって貴方にはあるスキルを覚えて貰います」
「覚えると言ってもどうやって?
自慢じゃあ無いけど僕自身そんなのとは縁遠いのだけれど」
「あぁ、その点については問題ありません。『適応化』という文字通り世界の境界と呼ばれる物を越えた時に誰しもが身につくスキルですから」
「一応聞きますがその『適応化』と言うのは具体的にはどんなものなんです?」
「そのまんま、異世界で会話や読書などと言った日常的な物や、自分の能力をそのまま使えるように置換すると言うスキルです。異世界の殆どはスキルに依存してますので何も無しに異世界に転移させられるなんて素っ裸で砂漠のど真ん中に置いてけぼりにされる様なものですし。そういう事になればまず死にますから転移の処理が終わって一息ついたと思ったらすぐさま魂の処理に取り掛からねばならない訳で…
まぁ、ぶっちゃけ迷惑なのですよ。転生局からも輪廻局からも果ては管理統括局からも苦情が来ます」
何か聞き慣れぬ単語がちらほらと…
「読んでそのままです、転生局は転生する魂の転生先の斡旋から受肉までを管理してってそうじゃなくて」
一人大げさに頭を振り咳払いを一つ
「話を戻しますよ?…とまぁそこでの救済措置が『適応化』という訳です。例えば料理人が異世界へ渡った場合その技術力に応じたレベル又はランクの『料理人』スキルが得られます。料理人Lv.2とか料理人B+とかね」
成程、と思う…思ったが
「現代日本に転生?する訳ですし自分には関係ないんじゃ?」
そう、日本には技量はあってもスキルレベルなんてモノは存在しない……筈なのだ。多分、きっと、願わくば。
「夜月さん貴方それ本気で言ってます?何で察しは良いのに自分の事になるとこうなんですかね。彼女さんとか妹さんににもっと自分の事に目を向けなさいとか怒られませんでした?私、貴方に鈍感補正とか付けた覚えありませんよ?」
ボロクソに言われた、そりゃあもう図星だから何も言えませんよ、はい。
「確かに貴方の言う通り現代日本に転生しても…今更ですが現代日本での人生のやり直しって転生って言うんですかね?どちらかというと転送のような…。まぁどうでもいいのですが。えぇと、気を取り直して、貴方は確かに日本で何不自由なく生活出来るでしょう。
装備開発していた技術を使って職人さんを目指すもよし、武道をやってみるのもよし、絵を描くのも、紐やるにも何でも出来るはずです」
器用な方っていいですよねーっと右手をヒラヒラさせながら少女は言う。少しばかりイラッとする。
「で!す!が!ただでさえオーバースペックな貴方に更に余計なものがくっ付いてますよね?手に!足に!目に!諸々に!」
そこで合点がいく、確かに自分の身体の約半分は日本に、いや世界にあってはならないものなのだ。つまり『適応化』無しに日本に行ってしまうと良くて銭湯とプールに入れずに通年長袖生活。
悪くて日本に来た瞬間に世界の修正力的な何かが働いて自分の半身である存在し得ない異形の部分がまるっと消されて即終了まで有り得てしまう。
まぁ前者は年中ジャケットでも着ればいいプールと銭湯は堪えるけれど。
しかも問題はまだある。
「しかも!貴方さっき銃をどこから出しました?今は持ってないようですし、どこに消しました?」
あーはい。やっぱりでした、ダメでした。
観念して右手を突き出し先程の銃をもう1度作り始める。今度はゆっくりと、見せるように。
先ず、ハンドボール程の立方体が掌から浮き出る。そして2つに分かれ、4つに分かれ―――
次にいくつかに分割されたそれらが銃のそれぞれのパーツを形成していく、そしてそれが終わった時、それらが組み合わさり一つの銃が彼の手に収まった。
「はい、アウトー!」
「でしょうね」
言いつつ銃を消す。作った時とは異なって銃はぱらぱらと粒子となってその形を次第に失っていきやがて完全に霧散した。
説明しておくと、異形が一般に持っている能力である。個体によって性能は変わるらしいが簡単に言うと構造原理を知る物を生成するものだ。
異形はこの能力で礫を作って撃ち込んで潰しにかかったりとエトセトラ…。兎にも角にも色々な方法で無惨な肉塊を異形達は生み出していったのだ。低位の個体は知性が低いため礫程度が関の山だが高位の個体になればなるほど知性は高まるために生成する物は増え、そのせいで死に方のバリエーションは増えていく。
いやほんと、汎用性ってすげぇや。
とまぁ、それがほぼ無限にバンバンと撃ち込まれるのだ。もう普通に死ねる。そう、汎用性こそが最強なのだ。
口説いがこの能力は能力の許す限り無限に物を生成する物だ。言うまでもなく人間はこの能力に盲目的に飛び付いた。この能力を持つ事が出来れば戦地に弾を持って行く事が無くなるのだ。つまり『弾切れ』と言う事実上の死から遠ざかることができる。故に行われたのが先の移植である。
高位のものはほぼ不可能であったが低位ならば成功率は高かった。
そうして幾らかの兵に施術し無限となった物量を以て蹂躙する――
――筈だった。
そう、筈だったのだ。当初は圧倒する事が出来たが時が経つにつれ兵の数は減っていった。そしてそれらの多くは決して死んだのではない。廃人となり戦うことが出来なくなったのだ。
原因の解析がすぐさま行われたが分からぬままに実験は打ち止めとなった。
関係があるのかは定かではないが、移植に失敗すると良くて廃人悪くて異形に呑まれベースが訓練された兵士の為半端なく強く処理が面倒くさい異形が誕生したりする。言い方はどうかと思うが事実そうなのだ。
あくまで私見ではあるが、この能力…使う度に異形に近いていくのではなかろうかと思ったりしている。
我ながらなんて怖いもの使ってるのかと思った。
まぁやめる気かったけど
当然そんなものが持ち込めるわけはないのでやはり『適応化』は必要なんだろう。
「恐らく能力や義肢の方は心配は要らないでしょう。能力は消え、五体満足で転生出来るはずです。ですが本来有り得ない物を持ち込むわけで、自動に付与される程度だとスキルが一瞬で処理できず危険なので私が謝罪…いいえ、お礼も兼ねて少し高性能なものを付与するという訳なのです。」
「成程、なら早速お願いします。自分はどうすれば?」
「胸に手をあてさせてくれれば大丈夫ですよ。えぇ、それ以外何もしませんから。」
何故か少し危ない予感がした。
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「そういえば目が覚めてからずっと慌しく働いてるのは何者なんです?」
付与されている間暇なので気になっていた事を片付ける。一部少女の背後で冷やかしたり紙吹雪を散らしたりとガヤガヤしている者もいたが基本慌しく働いていた。
「あぁ、ならちょうどいいのでそっちの用も片付けちゃいますか。」
夜月の胸に両手をあてながら神は言う、実はもうとっくに付与など完了しているし、そもそも指先1つ、本気を出せば触れることすらせずに出来るのだがあえてしない。昔は見てるだけだった気になる人、そして今や目を離したくない愛しい人。それがまた見守ることしか出来なくなるのだから、出来るだけ触れていたいのだ。名残惜しそうに片手を離し、ある一団を呼ぶ。
「向こうに落ちていたものを回収させたものです。刀を三振り、ダガーを6本、銃を2丁、手甲にワイヤーにアンカー。あと薬とタバコですね、これ大事…その他諸々全部貴方のものです。遅くなりましたがお返ししましょう。とりあえずデカイ鞄に詰めて刀だけは別に筒にでも入れておけばいいでしょう。付与と処置も終了です。はぁ20歳の夜月さん…眼福です。勿論、元の26歳のもいいですが。まぁ置いといてこれですべて問題は無いはずです。叶わなかった夢を今度こそ叶えてください。それではさようならです。またいつか、悲しいですが遠い日の再会を祈っています」
気付けば僕の身体は高校の頃のものになっていた。
しかし筋力などが落ちたような気はしない、本当に外見だけがそうなったようだ。
とは言え、準備は済んだのだ。
神様と向き合ってたところから振り返ると白い大きな扉が現れていた。そしてまわりで謎の白服たちが紙吹雪を撒き散らしたり演奏したりとまたもがやがやとしている。
内心で苦笑しつつもその中をゆっくりと進んで行く。そして静かに指先で扉に触れそっと押す。不思議と軽く扉は開いた
「それじゃあ、行ってくるよ」
首だけを再び振り返らせ別れを告げ、扉の先白い光の道を歩み出した。
そうして柊 夜月は日本へ旅立った。
次回幕間です。
書いてると技とかが某運命のようになってくのどーにかせねば…一生懸命考えてこれです