世界の真実
長め?です
「自分のいた世界?それが自分と何の関係があると?
何か特別な事をした覚えは無いのだけれど」
自分のいた世界の他にも世界が多数存在するのは理解出来た。そして神の口振りから自分の世界、又は自分に対し神が何らかの干渉をしたのだろう…それも何らかの恨みを買うような。
「えぇ、大ありなんですよ。先ほど他にも多くの異世界があるみたいな事を言いましたよね?ですが厳密に言うとそれは少し違うのですよ」
「どうゆう事です?まさか…あの世界の方が異世界だったとか冗談言いませんよね?」
「流石ですね。正解です。貴方の世界は主軸となる世界から派生された世界、いわば平行世界のようなものでした」
「は?」
思わず間が抜けた声が出た。
「当然、派生元の世界は日本、もとい地球です。過去2度の大戦を経験したのは同じですが、それ以降は基本的に平和な生活を営んでいます。分岐が起こりこの平行世界が発生したのは丁度2、3年前ですね」
「はぁ?」
「そしてその平行世界の正体とは何か?
それは――――――――――――」
一呼吸置いて神は真実を語る。
「元の世界に存在する人々の手によって想像され創造された所謂幻想の世界でなのです!!」
「はぁああああ!?」
見事な三段活用である。自身の動揺がそれ以外の発言を許さないのだ。
「よっしゃ!うまいこと言った!!」などとどこぞの神がガッツポーズしてるがそんなもの頭に入らない。しかし、確かにそう考えるとあらゆることが腑に落ちるのだ。
寧ろ真実を知った今、それを疑う方が難しいほどに。
そしてもう一つ絶対に見逃してはならないことがあった。
「つまりは………こういうことか?」
青ざめつつも何とか言葉を紡いだ。
「何でしょうか」
「この世界は…いや、俺達は…向こうの世界の誰かが作り上げた物語だったと、異形が出たのも仲間が死んだのも、妹を、恋人を失ったのも全ては向こうの世界の奴らの掌の上だったと……。俺達は奴らの思い通りに紙の上で踊らされていたと、そういう事なのか……?」
「……」
神は答えない。しかしその沈黙こそが答えなのだ。それがわからない夜月ではない、それは神としても理解している。だがそれを言葉にするのが怖いのだ。
神にも感情はある、故にそれを言葉にすることで目の前の今にも打ちのめされそうな青年をどれほど追い詰めるのかを知っている。
「それじゃあ俺達の喜びが!悲しみが!怒りが!!全て嘘になる!!俺達の、俺達だけのものじゃあなかったと!!
いや、違うか…端から俺達に自由は無かったのか。俺達のモノは存在すらしてなかったのか…。それは……それだけはダメなのに…。それだけは……………」
青年は慟哭し、消え入りそうな声で…
充血し真っ赤に染まった目から流れる涙は紅い色をしていた。
神はそれを静かに眺めていた。
覚悟はしていた、だが甘かった。目の前の人間は今、今までの人生を、異形と戦い救ってきた命を、そしてかけがえのない恋人を、妹をその全てを否定されたのだ。
それは絶望という言葉じゃあ余りにも温かった。
神は暫くの間真実に打ちのめされる青年を見守るしか無かった―――
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「落ち着きましたか?」
「一応、取り乱して申し訳無いです」
一体どのくらいの間打ちのめされていたかわからない、当然ながら回復出来ているはずがなく、それこそ幻想だと言ってくれた方が楽なのだ。しかし、話の現実感が自分に逃避を許さず強引に背ける顔を押し戻す。
「では続きを話させていただきます。本来平行世界、紛らわしいので幻想世界とでも呼びましょうか。幻想世界は作者によって構築され、それが多くの人の目に届き、受け入れられ、場合によってはアニメーションなどの想像の助けがあって初めて創造されるものです。そして最近何故だか次々と創造される現象が起きています。えぇ、異形の出現時期とほぼ同時期に」
「あの世界が幻想世界?だと言うのは既に証明されているはず、それに幻想世界が出現するのは問題のない事なのでしょう?ならば何故――」
「有り得ないからですよ」
「有り得ない?」
「えぇ、あの世界を作った物語は主人公どころか語り部すらも居ないのです。それなのに人間から異形まで気味が悪いくらいに綿密な設定がなされていました。しかしこの作品世に出されていない無銘の物語なのです。勿論完結もされてはいません。恐らく没になった物語なのだと思われます。そんな幻想世界になれないはずの幻想の成れの果てとも言うべき作品が何らかのエラーで世界として創りあげられてしまった。当然不完全な作品からは完全な世界など生まれる訳がありません。そうして出来たこの世界は異常なまでに不安定で作者の決めた設定すらも無視し暴走し始めたのです」
「で、その設定とは?」
「『異形』です」
あっ、やっぱり。
神曰く『異形』は銃器は効かずとも戦車あたりなら十分に対処出来る程度のものであったそうだ。だが現実には戦車は一番最初の本格的な襲撃で既に手も足も出ずに壊滅させられていた。
改めて思うがよく3年間近く生きてこられたな、俺。
「暴走し始めた世界は何もかもを無視して異常な強さを持った異形達を暴走させました。そして暴走した先にあるのは間違いなく世界の滅びです。世界は自ら望んで滅びようとしていたのです。ですがそれを許してしまっては折角生まれた世界を、そこにいる人達を悪戯に殺してしまいます。それだけは止めなければならない。そこで私はこの世界に干渉する事を決めました。暴走する世界に少しでも歯止めをかけるために」
「事情は分かりましたが…何故それを貴方が?」
「先程申し上げた通りこの世界の異常は特例も特例なのです。勿論私の[・・]領域には世界を保護し正しい形で存続させる為の機関があります。然しながら今回の件は世界が根本から狂っている為、私の介入に至った次第です」
「成程、それでその異常が自分に関係のある事だと…そう言う訳ですか」
「残念ながら大ありなのです。干渉すると言っても私が世界に降りて異形達を殲滅する事は過剰に干渉する事になる上、私が世界を焦土に変えてしまう可能性が高く、それでは本末転倒になってしまいます。途方に暮れていたところ偶然死にかけの貴方を見つけたのです」
そこで少し合点がいった。今この瞬間に至るまで自分は2度、死を迎えるはずだったのだ。
その1度目、自分は自分と他10名程で隊を組み、拠点から巡回に出ていた。数日前に襲撃があったために多くの行方不明者の存在が確認されていた。あわよくばそれを発見、救出するのも目的の内の一つだった。
結果として道中行方不明者と思しき民間人を数名見つけることが出来たのだが明らかに異形側の罠であった。それでも救出しないわけにはいかない為、最大限の警戒をしつつ救出した。
案の定救出した直後異形10数体と遭遇、内4体は人型をとっていた。
異形は進行が進むにつれ、形容し難い型から徐々に人型を取っていくようになっている。当然ながら強いのは人型であり、美しい身体を取るものほどその力は強大になっていく。
そして何故か多くの人型の異形は女型をとっていたのだ。
民間人を伴って戦闘する事など論外なので撤退を開始。殿として女型4体を引き付け戦闘を行い結果、4体全滅させる事には成功したものの瀕死の重傷を負った。
撤退戦の結果は怪我はさせたものの民間人に死者は出なかった。
しかし、10人いた隊の内2人を失い、5人ほどが重軽傷を負ったが生命に別状は無いらしい。なんでも撤退中に2体の人型に襲われたらしい。それで2人が残り、時間を稼いでくれたのだそう。そして奇跡的に基地近くまで辿り着きそこで息を引き取ったのだ。
後にその話を聞いた自分は安堵と共に自身の無能さを激しく呪ったものだった。
そう、あの時自分は普通なら2人のように死んでいるはずなのだ。左手を、左眼をそして右脚を失い軍医の元に運び込まれた時既に失血量が致死量に達していた。
しかし身体は生命活動をやめなかった。
そのためにとある処置が間に合い生命を拾う羽目になった。
軍医はそれを奇跡だと言った、まさに神がかった事なのだと。
「気が付きましたか、あの時貴方に干渉し延命させたのは私です。私は考えました、この世界の状況を変え、安定した状況へ持ち込めば事態は良い方へ向くのではないかと。そこで私はあの世界の人間に不足している要素である主人公とヒロインの役を与えた。それが貴方達2人なのです。そして狙いは当たり、異形達の進行を遅らせることには成功したのです。」
確かにその後、しばらくの間は出現率が減少していた。
「しかし私の干渉を世界が許すはずがありませんでした。何故進行が収まったか、決まっています。世界はターゲットを世界から2人に移したのです。世界はまずヒロインを消し、そして貴方を追い詰めようとした。それが貴方に降り掛かった恋人の失踪を始めとする数々の不幸の正体です。」
彼女はある時異形の大規模侵攻の騒ぎに乗じて行方不明となっていたのだ。
そして自分は失った手足に機巧義肢なるモノを組み込まれ、薬物や、機械を身体に入れるなどといった処置がなされ、自分は人から兵器にされた。
そして機械化部隊のなどといった隊を率いらされた。
不幸にも何故か決まってあらわれる人型との戦いに突っ込まれていったのだ。
というあらましがあるのだが、詰まるところ神の干渉を受け、主人公となった自分を消すために集中的に人型を送り込んでいったために異形にとっても大きな進行ができず表面所は安定を保てたと、そういうことなのだ。
「そして2度目の死や最期のあの事。私のせいで貴方には数え切れないくらいの不幸を背負わせてしまった。それが私の負い目です。本当に申し訳ございませんでした。大丈夫です、覚悟は出来てますからどうか私をいかようにも致してください。」
2度目の死、それはある時、とある女型の異形と戦闘し何とか無力化には成功した。しかし左眼を含む機巧義肢を失い、片方の手足を失い、そして身体も色々な所を貫かれボロ雑巾のようになっていた。それでも何故か自分は助かった。
今度は損傷部位を異形の部位を移植する事で補うという異例の処置がなされた。
なんでもそのような実験は既にいくつか行われていたらしい(尽くが失敗であったが)。
そして移植元の異形には自分が無力化させたばかりの女型が用いられた。なんでも適合率?が異常なまでに高かったらしい。
処置は成功し、無事?四肢を得ることが出来たのだ。
ここで人間としての自分は死んだとも言えるだろう。
そして最期のある出来事、これはまだ語らない事にする。
神の謝罪を受け、回想を終え、少し考え込む、そしてある結論に至った自分はそれを神に伝えるために口を開く。
その顔は少し、笑っていたように見えた。
感情表現がむずかちい
100PVありがとうございます。これからもゆるりとよろしくお願いします




