黒の烙印
遅れました。申し訳ございません
「これを見せる…ですか?でもどうやって?直接渡せば良いのでしょうか」
少しガッチリとした体格の男子が言う。そう言えばこの子少し影が薄い様な気がする。
ちょっと待て、なんでそっちは敬語なんだこら。
【ステイ、夜月さんステイ。今あなた見た目高校生】
「方法については問題は無い。ベス、あれを持って参れ」
ベスと呼ばれた耳の長い男は黙って薄い板状の物を12枚取り出し半分を王に残りをこちらに1枚ずつ差し出した。
「それはステータスを見せるための魔法具だ。この魔法具に紙を乗せるとそれぞれに対応するこちらの魔法具に君達のステータスが映し出される。これを使って自己紹介のようなものでもしてみようという訳だ。さぁ乗せてみよ」
自身の情報を開示するわけで余り気は進まないが、ある意味いいチャンスだろう。少しくらいの仕返しくらいは許されるはずだ。
敢えて王の戯れに乗り板に自分のステータスを乗せる。
ほかの5人は既に板に乗せ終えているらしい。
黒髪ポニテの女子だけは少し渋ってはいたが、結局は肩をすくめながら載せていった。
王はそれぞれのステータスを確認し、僕のを見て驚愕を浮かべ少しの思案の後、自分達にそれらを開示した。
しっかし本当にファンタジーなのね、板がなんか浮いてらぁ。
それぞれのステータスはこうだった。
東宮 遼 (トウミヤ・リョウ)
種族:人間
年齢:18
性別:男
称号
勇者
直衛 碧 (ナオエ・ミドリ)
種族:人間
年齢:18
性別:男
称号
勇者
弓月 由来 (ユミヅキ・ユラ)
種族:人間
old:18
性別:女
称号
勇者
二宮 千鶴 (ニノミヤ・チズル)
種族:人間
old:18
性別:女
称号
勇者
歌川 美鈴 (ウタガワ・ミスズ)
種族:人間
old:17
性別:女
称号
勇者
それぞれ優男、じゃない方、アンタ呼ばわり、ポニテ、「あの!」って言ってきた娘のものだ。
やはり勇者らしく、称号には勇者とある。
そしてこちらは当たり前だが勇者などは無い。
最も、勇者など願い下げだが…
「な、なぁ、俺達の紙の色は白だよな?」
今のはガッチリとした体格の青年―のものだ。
「あぁ、白だな。私と同じだ」
国王はおおらかに笑って答える。
「なら何でアイツは黒いんだ?」
初対面の年上をアイツ呼ばわりってまぁ…
【ちょい夜月さん、ステイ。今あなた見ため高校生】
畜生め!!やっぱアレだね。見た目って大事、すっごく大事。…じゃなくてだ。
この国王サマはどうやって説明を付けるのだろうか。だがそれ以前に先の目線も気になる…あとさっきからベスと呼ばれた人物がこちらを見てるのも気になる。しかしだ、あの男…どうにも違和感があるが何故だ?
ま、何れにせよ…だ。やる事は何も変わらんな。
「国王様!この理由、私から説明しても宜しいか?」
コツと前へ踏み出し、右の手をやや大振りに胸へと持っていき恭しく、大袈裟に畏まりながら声を張る。
…うわ、うぜぇよ。我ながら。
でもほら眉が動いた。やっぱりそうか、この黒色には何かがある。
きっと面倒くさい類のアレだろう。
「ほぅ、許す。申してみよ」
とは言ってもやる事は変わらない。
傍迷惑な6人に軽く仕返しくらいはしてやろう。
「はっ」と短く答え数瞬思案した。これは後悔に類するものだ。やはり意味を特定してからやるべきだったか…!!
【出ました!ここでの黒色の意味ですが――】
なるほど…やっぱり拙い類のでしたか。しかし思い当たる節があるのが痛いか…、それにしても助かったよ、ありがとう。
【お気になさらず。では存分に】
了解です。
「では申し上げます。ここでの黒色は『 悪人』又はそれに類する存在である事を示すものですね?…いえ、首肯しなくてもいいです。知っています(そうでしょう)から」
空気が硬直した。同時に端に控えている文官達の雰囲気が一気に張りつめた。
…冷ややかな視線を一気に浴びる。これは蔑視の類のものだろうか。それならば彼等の目的も見えてくる。やはり排斥だろう。勇者が奴隷でもないような賤民を連れて歩くのは宜しくないのだろうか?…なら奴隷にされる可能性が?
それはやっぱり…嫌だなぁ。
【不味いですね…それは不味い。…で、どうするのです?】
変わらないさ、ただアレはあります?
【アレと言うのが私の認識と同じなら勿論ございますとも】
ならば良しです。これで何とかなるといいのですが…。
神様の答えに少しばかりの安堵を覚えつつ、懐を探る…あった。
自分の予想が正しければあれは存在しては居ないはずだ。無論、その理由が無ければの話になるけれど…。
「日本国陸軍第一師団所属、横浜第二遊撃部隊司令柊夜月…日本での自分の身分だよ。初耳だろ?」
手帳と首のタグを取り出し、5人に見せつけた。
「日本は…自衛隊じゃないの?」
聞いてきたのは弓月由良と言う少女だ。
「あれ(・・)が居ないのだから、やっぱりそうか…。自衛隊はとある災害への対処を名目に10年ほど前に軍を名乗っている。二年後にその災害、異形と名付けられた怪物を相手に戦争が始まった」
「う、うそよ…そんな小説みたいな事ってあるの?」
「紛れもなく、どうしようも無く事実だよ、弓月さん。…これを見せるのは心苦しいけれど、ほら」
そう言って何枚かの紙を取り出して弓月さんに渡す。4人はその周りに覗き込むように集まった。
「これ…写真、なのですか?この赤いのって、血?」
歌川 が見たのは血のべっとりと付いた子供の写真
「この黒いおぞましいのが『異形』と言うものか、これと戦ったという事なのか」
二宮千鶴が見たのは戦車を壊し、人を潰し、串刺し、喰らう『異形』の写真
「こっちのは人が写ってる。なにかの記念写真なのか…?」
「真ん中、焼け焦げて見えないが、それがあんたか?」
東宮、直衛が見たのはかつて所属していた部隊の記念写真。
そしてそれらの声に僕は頷く事で返した。
「静観していたが…夜月、貴様は何が言いたいのだ?」
「――100人」
5人から写真を取り返し国王に向き直る。
「戦況は圧倒的に不利だった。見ての通り、都市はボロボロに壊滅させられた。そんな中でだよ。100人を救うためにまず20人の助けを待つ人を見捨てた。たどり着くために7人、7人の部下を殺した。そしてだ、その100人を逃がすために12人の部下をあの胃袋にぶち込んだ。その道中の数人、歩けずに脱落した何人もの人を見捨てながら…結局生きて帰れたのは60前後だったはずだ。俺は…僕は、こういうのを幾度となく繰り返したさ」
自嘲気味に語る。この空間が僕を見る5人の表情が、強ばっていくのがわかる。
「仕方…無かったんじゃないのですか?」
大きなため息を吐いた。
「そうだね…仕方なかった。どこかで立ち止まって犠牲になった誰かに手を差し伸べようものならその時は僕らが死んでいた。そしたら自衛手段もないその100人はどうなるんだろうな…。でも世間にとってはそんな事知った事ではないんだよ、彼らが気になって仕方が無いのは救った人数より、死んだ人数だ。『40人も尊い人命が失われた!』『軍は何をやっているのか!?』『救うべき市民を盾にして、最小限の被害でのうのうと帰ってきやがって!!この人殺し!!』ってね。そうやって、机を叩きながらわめくのさ」
「なるほど。して、その人殺しの言葉を私が信じる必要はあるのか?」
「えぇ、それはもう。尤も、信じるしか無いの方が正しいと思われますが。証拠は出した、5人の反応を見てもそれは確かだ。それでも信じないなどと仰ることは皆の前で愚を晒す事になるのではと愚考しますが?」
少しばかり挑発的な目を向ける。
「ふん、試しただけだ。許せ」
【目的はどうあれ、下がるしかないでしょうね、これは。やりましたね】
「僕のが黒い理由、これで分かってくれたかい?直衛君」
直衛 緑は強ばった表情のまま頷いた。
「長らくお待たせしてしまい申し訳ございません。そしてお聞きして下さった事に感謝を。それでは国王様?どうぞ本題にお入りください」
僕は再度恭しく礼をした。
言い訳フェイズに入りますと
一つに黒色の設定及びその説明が上手くいかず進められなかった
二つに部隊名を考えるためにwikiを回りまくってた
(納得のいくものは出ず)
三つに登場人物が多すぎてわちゃわちゃし、文が酷くなったため
(わかりやすい特徴的な口調にする事ができませんでした)
四つに王様の威厳が出せなかった
本当に申し訳ございません