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転生失敗者の異世界奇譚  作者: 水瀬 春樹
一章 異世界チュートリアル
11/15

神様のそのころ

間違えて投稿したものをふたたび

ハイ、私です。神様です。激動の人生を終え、大団円を迎えた(本人談)青年が日本へ転生した瞬間にほかの転生に巻き込まれ異世界へトリップしてしまった訳ですが…。


「実際夜月さんが巻き込まれた世界というのはどんなものなのでしょう…」


今私がいるのは大量の本が詰まった巨大な空間だ簡潔に言うと図書館だ。


という訳で目下調べている最中である。


どうやら彼がトリップした先はどうやら地球の様です。場所はヨーロッパ、AD1400~1600くらい。中世から近世あたり…日本でいうと大体1392(イザクニ)立たんの南北朝統一から1582(イチゴパンツ)の本能寺あたりのようで…。話はズレにズレますが南北朝統一の語呂合わせ意外と上手いと思うのですがどうでしょう。


おまけに案の定魔法、魔術、法術、呪術、降霊術、神降ろしetc…と言った『神秘』が存在します。故にこの世界は『人間の技術による文明の発達がなされずに神秘による文明の発達が成された世界』と…なーるほど、めんどくせぇ!この間までいた世界(夜月さんの世界)が曲がりなりにも現代日本だっただけに余計めんどくせぇ!

まぁ今回は?夜月さんを見守ればいいだけだからまだ言いものの…。これ終わったら本格的に通常業務に戻らなきゃいけないのですよね?…嫌だなぁ、私もどっかのローカル神様みたいにちゃぶ台囲ってお茶すすってたい。

いやほんと、また転生局の局長に浣腸でもしてイボ痔を爆発させて自宅謹慎にでもなろうかしら…そうすればまた仕事もせず夜月さんの事見てられますし。む、謎の天の声…はい?今何と、汚い?今すぐ脱糞してくれようか?いや、ごめんなさいね。神様はそんなはしたないこといたしません!よし、これで方々問題ないですね。

じゃあどうしたら合法的にサボれるのです?…神様は基本年中無休??えぇ、でしょうね。もぅマヂ無理、心折れた、岩戸っちゃお…。こんな世界に誰がした!?


……私だわ。ふぁーく!創世期時代の私ふぁーっく!!こんなんでどうにかなるわけじゃないけどふぁーっく!


まぁ、いいです、もういいんです。とにかく!神様が高潔だーなんてそんなもの古事記読んでから言いなさい。最悪北欧神話でも可。


ってうぉ!何この白いの!?あぁ、プラカードでしたか…。もうさ、あんたら喋れるでしょうに、いい加減戻していいのですよ?…えぇと、なになに?『ご命令された調べ物です』ですって、黙ってすっと出せばいいでしょうにこの…え、何?『黙って出しました』

ですって!?よし、貴様今後2年間給料4分の3減な。うるさい!給料くれてやるだけありがたいと思いなさいよ!他の神様(奴ら)の所なんて無休で無給でむきゅうなんてザラなのよ?あーもう分かった、分ーかったから4分の1減で勘弁しておくから、さっさと報告しなさい。


えぇと、なになに…?ふむ、やはりそうなりましたか。それでは『技術』を使うのは些か危険な様ですね。なにせ『人間の技術』には神秘を否定する力がありますから。となるとこの世界の力関係は『神秘<人間の技術<神秘による災害』と、そのように見て取れますね。夜月さんがこの辺りを考慮してくれるとありがたいのですが…いざとなれば、ね?残念でなりませんが。目付けは置いた方が…いえ、それは私の方でやりましょう。


言語の方はどうやらこの大陸に於いては種族ごとに別れているようで…。エルフはエルフ語ドワーフはドワーフ語人間は人間語?という様です。なーんてご都合主義的な世界でしょう。


取り敢えず相当変わった地球…と言うより

『技術革新による神秘の否定が行われなかった世界線』の地球の様ですね。


「はぁ、成程。これはまた、道理でさほど座標が動いてないわけですか」


少しだけ苦い顔で呟いた。

明確に『地球』である以上、夜月さんのいた世界ないし大元の世界と同じ根幹を成す並行世界と言うのは間違いでない。しかし()()()といっても異世界転移である。転移先から近いのならまだしもこの場合においては寧ろ遠すぎる。なにせ最低でも千年以上前には既に分岐した世界なのだ。当然分岐に分岐を重ねた末にその距離はとてつもないものであると言うのは想像に難くない。にもかかわらず何故召喚が可能だったか。否、それ以前に如何にして遥かに遠い世界を観測することが出来たのだろうか。ギリギリだったにせよそれら全てを補った魔力はどうやって得たのだろうか。

それらが一瞬頭を過ぎった故のものだった。


「大分きな臭い所に飛んじゃいましたね…もしや不幸体質は生まれつきでしたか」


そう言って私は軽く頭痛を覚え頭を抱えた。

休憩しようと椅子に体を思い切り預ける。気づけばそこら中に書物が散乱し、机を見れば積み上げられた本の塔が今にも倒れようとしているところであった。


いや、違う。確かに本は積み上げられているがバランスを崩すほど高くはないし、勿論机を揺らした訳でも無い。


「という事は…」


軽く辺りを見渡す。やっぱりだ、本棚も灯りも揺れている。


という事は、彼か…。


「よーす!お嬢~。帰ってきた…でいいのか?場所(座標)変わってるからそこんとこどうなんだろうな…。まぁいいか、一位(ファースト)任務終了だ!」


大正解(JACKPOT)!!紅の髪に紅の服、そして紅々(あかあか)と燃える焔の様な大剣を引きずり妙に溌剌とした表情で任務完了の報告をして来た青年(馬鹿)がいた。


「なーにが『一位(ファースト)任務完了だ!』ですかwまぁいいですお疲れ様です。…で?任務をサボりたい一心で179位(下の子)のを強奪したようですが、どうでしたか?ってぬぉぉぉぉお!」


――頬杖をつきながらジト目と共に顔を彼へと向けた。

だがそれが拙かった。紙の上に乗った肘が頭を支えきれずそれごと机の上を華麗に滑走、塔のように積まれている本に激突する。支えの安定性を失った塔がジェンガ式に崩壊するのは自明の理である。ついでに倒壊が倒壊を呼び挙句の果てには本の山の下敷きになってしまったのだ――


「モノローグ入れんな!こっちだってこんなピタゴ〇スイッチみたいに埋もれたくないわ!あと助けて!!」


ハイハイお嬢と紅髪の青年が肩を竦めながら近づいてくる。

なんて屈辱、あの子の不幸体質が私にも流行(うつ)ったか!?


「任務自体はかなり退屈だったぜ?ありゃあ俺向きじゃねぇな。誰だよ俺に斡旋した輩は、戦わせろ」


ニマニマと笑いながら本を退かしつつ青年は話す。畜生め、さりげなく誤魔化しやがった。


「誰がどうとち狂ったら貴方みたいな脳筋に長期の観察任務など回すのです?グレン。万が一回すとしたら20位くらいでしょう、次点で7位の彼女です」


「ハハッ、だろうなァ。ほいよ、終わったぜ?お嬢」


グレンと呼ばれた彼は全く気を悪くする素振りも見せず快活に笑った。

――訳ではあるが、やはり多少気に食わなかったのか手に持ってるうちのなるべく薄めの本を選んで私に落としてきた。…痛い。


「えぇと、取り敢えず報告の続きです。結局の所()()()()()()でいいんですね?」


「あぁ、()()()()()()ぜ?という訳で後処理頼むわ」


「統括局に伝えときますから取り敢えずそこでやってもらうように、あと報酬に関してはちゃんとやっておきなさいね?」


「りょーかい。ところでさお嬢、このなんだ?鏡に映ってる現在落下中の小僧は何者だ?」


グレンは机の端に置いてあるそれに興味があるらしい。これ自体はただの向こう側を映す鏡なのだが、彼はどうやらそれに映った夜月さんに興味がおありのようだ。


「柊 夜月、まぁ…あれです。私の謹慎理由です」


少しそっぽを向いてさも嫌そうに呟いた。もっとも、そうやっても頬が朱に染まるのも右の人差し指がその頬をかいているのも隠せている訳では無いのだが…。


「あれがねぇ…、で?お嬢はアレと、その夜月ってのをお世話するために管理局のおっさんの痔を破壊したと。いくら何でも犠牲を払いすぎてるだろ…いや、あの堅物クソジジイはいーんだ。寧ろもっとやれって、でもお嬢…つまるところやった訳だろ?あの、指を…尻に?…拙いでしょ」


「……」


最初明らかにからかいだった彼が途中本気で心配し始めたのには正直驚いた。だがそれが閉口の理由では無い…、断じて無い。ただ自分でも内心驚き気恥しくそして知らぬ間に自分が晴れ晴れとしていたのに気付いたのだ。そう、まこと今更なことだ。そう思ってみれば色々とおかしい。まずいくら手っ取り早く、かつ楽で変な展開になりにくいといえど割と中年で八徹目に突入しようとしているおっさんに浣腸などと言う頭のおかしな行動はこの私がするわけが無い。


「いや、アンタはする。『こーすれば手っ取り早く、且つ楽にやれます!!流石私天才!!!』みたいな感じで真っ先にやる」


そう、絶対に有り得るわけが無い。うん!しかしこれを認めねば話が1ミクロンすらも進むことが無いのでここは断腸の思いで認めるとしよう、私えらい。


でだ、繰り返すようだが中年の八徹目に突入せんとするおっさんだ。しかも激務のせいで凄いことになってる。八徹目に突入する程の激務と言うから現状ドブラックとなっているのは言うまでもないのだが、私の名誉のために言わせてほしい。管理体制か頭おかしい訳でははない筈なのだ。ここ数十年において何故か知らんが特殊な形での転生、転移事案が異様なまでに増えている。主に夜月さんがいた場所、つまり地球における極東の島国で…。


どれくらいかを例を挙げてに示すとするならば、七日もの間全力を費やして粗方の処理を終え、花を積みに行って帰ったところ、驚くべき事にその社長っぽい机のうえに転生者達に関する赤い色をした書類の塔があったそうだ。その高さ広辞苑にして約10冊、これが12程あったらしい。


因みにだが赤い色の書類は特殊事例を表すものであり、この場合情報局や、輪廻局等との相談や統括局の許可等が必要になってくる為、必ず局長を通さねばならないのだが…昨今のこの量である。現在転生局、転移局揃って見事に嫌われ者と化している。


とまぁそんなこんなで少なく見積もって二日以上の徹夜が決定し、絶望に沈み霊体が崩壊しかけてる転生管理局局長の尻に衝撃走る。約一時間後、彼は尻を真っ赤に染めて倒れていたのを無慈悲にも追加の赤報告書を持ってきた部下により発見されたそうな…。

一体全体誰が彼を襲ったのでしょう――


ともかく!私が敷いた管理体制はトチ狂ってはないんです…。


「まぁ想定外ではあるわな、そのせいでこの数年俺達が謎の量の任務に明け暮れてる訳で…めんどくせぇ」


一応上に行くほどに負担が多くなってるのはまだ安堵すべきなのですかね…。ただ上の負担をどう軽減させるかが中々に困難を極めます…。


「末端の増員は確定だろ、今度飛ぶ時適当に見繕うか?」


「そうですね、そうしましょう。50から70位辺りに頼んでおきます。書類やら何やらは取り敢えず3位(サード)に集めとけば問題ないでしょう」


一瞥もせずに答える。

するとグレンはまたも声を上げて笑い出した。


「…なにか」


「いやぁ、信用されてねぇなって」


やはり全く気を悪くする素振りも見せずに答えた。

そうだ、いいこと思いついた――


「局長達には貴方たちの中から非番の者を補佐に回すようにしましょう。私の方で追ってマニュアルなども作成しておきます。これで大分変わると思いますので、グレンは他の者達に伝達を頼みます」


「了解、それにしても対策がかなり今更になったな」


グレンはにィと笑い了承の意を示す…と同時に茶化すのも忘れない。


「対応が遅れたのは本当に申し訳ないと思ってます。そう言えば、あれからあの人はちゃんと休めたのでしょうか?」


「状況を甘く見てたのは確かだろうな。局長さんについては無事だぜ?()()()やった後にちゃんと休んでる…恩返し?だとさ。あとさ、お嬢――」


「そうでしたか、後で()()()()()()()()()と伝えといてください。で、あとなんです?」


グレンの言葉を待つ。彼の視線は鏡に向かっているようだが?


「いやな、俺としては別段どうでもいい話ではあるんだが…その、なんだ?」


「なんですか、歯切れの悪い。もっとしゃんとしなさい。貴方らしくも無い」


視線をうろうろと彷徨わせ始めたグレンをジト目で睨む。本当に、なんなのです?


「なら報告事項だ、お嬢。このままだと鏡の小僧が死ぬ」


「ぅえ?…いやいや、まさかそんな事が?」


「いや、あるぞ…その机の上の資料を見るにそれ小僧の能力だよな?」


「はは…」


それを聞いて愕然とする。錆び付いた機械のような挙動で資料の方に視線を向ける。

そして勢いよく反対の資料の山へ向く。これらは処理済みのやつのはずだ、ちゃんと判を押して処理済みと分かるようにしてあった。再度夜月さんの能力についての資料へ向く。

まるで新品のように綺麗だ、と言うか新品だ。判子はもちろんペンの跡、果ては折り目すらも無い、しかしそれは新品なので当たり前である。


最早解りきってはいるのだが敢えて纏めよう。異世界に行くことになっちゃった夜月さんに能力を返そうと、それに関しての処理をする為に書類を作成。すぐに作業に取りかかれば良いものの何故か放置、現在に至る。


あれか、馬鹿か?私は…否、否だ…馬鹿だ私は。

急いで鏡の状況を見る。なんか馬鹿でかい鳥に引っ張られてる。…あれ空中では滅茶滅茶に強くなかったかしらん!?


「あれだな、フランスとか言う国に言った時に見た信号機みたいだわ、顔が」


うるせぇ、でも取り敢えずヤバい…


「夜月さあああああん!」


「お、でもこれ案外健闘してるな…こりゃおもしれぇ」


暫くの間その書架は少女の叫び声と青年の笑い声で満たされた。

基本的に神様サイドは解説役兼お茶濁しです。

特に1位やら順位で呼ばれる方々は恐らく今のところ茶番以外の出番はないと思われます…多分

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