5人+1人
500越えてましたね、PV。ありがとうございます、すっごい嬉しいです。
ブクマも2件下さって嬉しい限りです。これからも稚拙で牛歩ではありますが頑張っていくので主人公をよろしくお願いします
城内、『儀式の祭壇』そう呼ばれる場所は今、騒然としていた。
「お…おぉ!」
「やった!やったぞ!成功だ!」
「やっと…できた」
等と歓喜する者達。
「一体何が起こったのだ…」
「本来5つのはずの召喚陣が何故6つ描き出されたのだ!」
「何故人が空から。そもそもこの上空は騎龍であっても通ってはならぬ筈…」
「それにあの服…異世界人なのか?だとしたら…」
「そもそもあの鳥は何だ!あれに空で勝ったというのか」
そして想定外の事態に驚愕する者達。
そして最も多いのが――
「手の空いた者は急ぎ倒れた者らを治療院へ運べ!生死問わずだ!!」
「重症者から運んでいけ!死体は最悪後でいい!」
想定外の自体の被害を被り倒れた魔術師達の対処に追われる者達だ。
「シャルティア様を連れて参れ!事態はどうあれ儀式は成功したのだ!想定外の事態についてはその時に追って報告すればよかろう。」
明らかに身分の高い中年の男性が声高に指示を出す。数名がその指示に従い『儀式の祭壇』を出て何処かへ向かった。
「何この状況」
突然怪鳥を引き連れ落ちてきた青年、柊夜月はそう呟きフィルターだけになった煙草をぽとりとこぼした。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
どうやら何か大変な状況らしい。
そして僕のせいらしい…やったぜ。
落下して暫く辺りを見回した結果、それがこの陳腐な分析である。
取り敢えずあの鳥は絶対に許さん。
機会があればあの鳥だけは絶対に滅ぼそう。そう思いつつ辺りを見渡す。祭服をきた集団に囲まれているのは相も変わらずで目の前には制服を着た5人の……ん?制服…?と言うかこの子達すっごい見覚えあるのですけど。
まぁ見間違いかもだけどね。
「やぁそこの青少年諸君、これってどーいう状況なの?それ以前にどっかで会った?」
「知るか」
「こっちがが教えてほしいくらいだよ」
「私達にも全くわからんのだ。しかもたった今追加で明らかな面倒事が降ってきたところだ」
「と言うかアンタ、タメでしょう?なんで青少年呼ばわりされなきゃいけないのよ」
「皆さん少し落ち着きましょう?ね?」
口々に5人はそう言ってきた。状況はさっぱり分からんが取り敢えずここ飛ばされる前に見た五人組で相違ないらしい。
そして何やら騒いでる祭服たちと下の魔法陣を見るにあの5人は所謂被、彼らが召喚者と言う奴なのだろう。
足元の6つ魔法陣、死屍累々の魔術師の様な格好の者達、想定外…本来は5つ――
なーるほどねぇ・・・
「完っ全に巻き込まれてんじゃん、これ」
ファンタジーの類は自発的にはあまり触れる機会がなかった為それほど詳しくはないがゆったりとしたローブを着ているのは大抵は魔術師だ。そう言おうものならどこぞの部下にそれは偏見だと怒られた挙句ファンタジー講義を延々と続けられるだろうがこれだけは幸いな事にここは恐らくその異世界、今のとこ部下など1人もおらぬ身だ。言ってしまって問題は無いだろう。
第一進められた大量のライトノベルでは大半の魔術師、魔法使いなるものはローブを着ているのだ。僕は悪くない。
つまりアレだ。本来五人召喚するつもりだった為に五人分しか魔力の用意をしてないのだ。多分…だけど。で、僕という余計なものが付いてきてしまったため、その分の魔力を賄わねばならず根こそぎ魔力を持ってかれた魔術師達があの地獄絵図の主人公と。
よし、不可抗力だね!
【もう1つ、言うとするなら貴方を召喚するために必要な魔力が阿呆みたいに多かったからというのもお忘れなく〜】
突然脳内に声が響いた。
…え、誰?
【いやですねぇ、もう私忘れられちゃいました?神様寂しいです】
あー…いや、質問が悪かったですね。…何故ここにいるのです?と言うかどうやってこんな、頭弄られたり?
【あー、かくかくしかじかでですね、つまり諦めてくださいな。頭の中は軽く弄りましたが拡張しただけなので問題は無いですからご安心下さいませ】
まるまるうまうまと…あらそうなのね、ならいいけれどもって納得出来る理由が無いでしょう。何さ、かくかくしかじかって。
まぁ別に良いケド…。身体なり脳なり弄られるとか今更だしね!
僕にとって重要なのは現在進行してるこの状況です。
【まぁ後々説明致しますから、私が居ますよと言う事だけ把握をお願いします。第一詰め込んでもお腹一杯でしょう?】
そういう系の無駄はしたくないんですーと神様。
「な、なぁ…アンタ、何でそんなに落ち着いていられるんだ?」
茶髪の優男が恐る恐ると言った様子で聞いてきた。
落ち着いてるって、そりゃあね。
「一通りパニクった後だから。こっちだって気が付いたら空中に投げ出されてたり鳥に喰われかけたりしてるんだ。内心じゃあんまりだァなんて叫び散らしてたさ。次はそっちの番というだけでしょうに」
そもそもこっちだって聞きたいことは山ほどあるのだ。
「なら取り敢えず同情すれば良いのかな?そちらは随分と大変だったように思える」
艷やかな黒髪をポニーテールに結んだ娘が少し皮肉混じりに返してきた。
「高い所は苦手なんだ」
少しだけ右の肩を竦め、左手で頭をかく真似をする。
「そうか、それはご愁傷様だ。ではついでに右手の用事を片付けてくれないか?向こうも落ち着いてきたようでな、周りもそれしか言わなくなってきたから現状の把握もままならないんだ」
そう言われてみると右の手が塞がったままだった。どうやらとうに脱出を諦めていたらしく随分と大人しくしていたので忘れ去っていた。
周りに気を回してみるとようやく一段落ついたのだろう。手が空いた者達の注目がこちらへと…と言うより僕自身へと向いてきたように思える。
なるほど確かにこれでは進むものも進まないだろう。
右の胸ポケットから再びジッポーを取り出し、蓋を開け、点火する。当たり前のように火は付いた。良かった、壊れてはないようだ。これ自体色々と弄ってあるので現時点で直すのが困難な今、壊すわけにはいかないのだ。そもそもライター自体が渚のプレゼントな以上万に一つであっても傷ひとつ付買うものなら大惨事である。
無事な事を確認し蓋を一度閉め、親指で少し下のカバーを奥へスライドさせる。すると弄った箇所の1つである小さなダイヤルが顕になる。今度はそれを奥に回し、カバーを閉じる。
蓋を開けホイールを回して火を付けたら指先から伸びる糸に一気にかざした。
先程とは違いガスバーナーの様に吹き出た火が糸を焼き切り、火が勢い良く鳥に向けて昇っていく。
そしてとうとう鳥へと到達し、その身体を覆っていった。
「ほぅら、焼き鳥だろ?」
支えを失って堕ちてきた鳥を尻目に見て呟いた。
って、熱い!こっちにも燃え移りやがった畜生!!
「…これでいいかい?ポニテのお姉さん」
「あぁ、助かる。これで頭上関連の問題は君の右手だけになった」
しきりに振り続けている右手を見ながら黒髪のポニーテールの彼女が言った。
此方としてはそれに触れられても困るというか恥ずかしいので苦笑いが精一杯のレスポンスである。
【夜月さん、誰か来ます】
「みたいね」
「少し落ち着きましたでしょうか?」
鈴の鳴るような声がした。
声をする方を振り向くと1人の少女がいた。
「へぇ、あれがシャルティア様と」
一瞥し、呟く。
彼女も急いでやって来たのだろう。少し服を乱し、汗ばんでいる。
あたりを見回し最後に此方を幾秒か見つめた後、少女は続ける。
「多少のイレギュラーがあった様ですが、いいでしょう。ふぅ、先ず突然お呼び立てして申し訳ございません。そしてようこそ!勇者様方!」
少女は顔いっぱいに笑みを浮かべそう言ったのだ。
んんん?ちょ待て今なんつった?
【勇者らしいですね】
いや、それは分かってる、理解もしてる。で?今なんつった?
【帰還命令でも出しておきますか?】
…頼みますわ。
「俺らが…勇者、ですか?」
茶髪の優男が表情に驚きを浮かべて言う。同然だろう、日常生活からいきなりの非日常へ吹っ飛ばされたのだ。しかも勇者など非日常の最たるものだろう。
ところで、やっぱり自分もそうなっちゃう感じ?
【…でしょうねぇ】
「えぇ、そうです。状況をお話したいところですがこんな場所では少しやりにくいでしょうし、父…。いえ、国王のいる広間にて私と国王からお話いたしましょう。ついてきて頂けますか?」
と言いい終えるやいなや、祭壇から下り建物の中に入り始めた。
高校生5人もそれにおずおずと従って行く。
そうやって神殿を後にするのを見送りながら呟いた。
「神様、後で校舎裏」
【告白ですかぁ!?】
謎の凄まじい反応の速さである。
「残念ながらしてもらう方だ、それに桜にも銀杏にも椛にも、果ては金木犀の木の下にも用はない」
呆れて溜息をひとつ、右手でこめかみを抑えながら突っ込んだ。
全く一々茶化すのだからもう…。
【尺稼ぎですね】
何のだ
【とまぁ合流しながらお話致しますのでどうぞお進み下さいな】
「頼みますよ?」
そう呟いて自分もこの場を後にした。
…逆でした、すみません。