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塔の管理人に選ばれました  作者: 白銀美月
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19. 初心者講習 その3

 翌日、志岐は宿の食堂に頼んでおいた昼食を二つ受け取った後、ギルドに向かっていた。

いわゆるサンドウィッチのような昼食なのだが、二つあるのは多い方と一般的な方とどちらにするか尋ねられたが、量が分からないために志岐が二つとも頼んだせいだった。

若い男性ならば多い方がお薦めと言われたが、この世界での基準での話である。

とても一人で食べきれる量なのかはわからない。

この宿の食事は美味しいという評判だったし、空間収納に入れておけば問題はない。

結局二つ頼んで受け取った包みを見比べて、一般的な方で充分な量だと志岐は思った。


志岐がギルドに着くと、昨日見かけた人が同じようにやってくるのが見えた。

初心者講習の参加者だとは知っていても、個別に名前を聞いたわけでもないし、

誰かに紹介されたわけでもない。

同じ部屋で講習を受けたわけだが、このような場合、どうすればいいのか、

志岐は迷ったので、軽く会釈するだけで終わらせた。


「やあ、お前、魔法使いではないのか?」

志岐に話しかけてきた男が居た。見た目だけでは年齢はよくわからないが、

まだ若そうで、自分と似た年齢のような感じがした。


「魔法使いといえるのかどうか。得意なのは魔法ですが」

「まあ、魔法が使えれば魔法使いというはずだが、でも昨日は剣で戦ったよな?」


じっとその表情を伺うと、志岐と同じように剣で戦っていた人だと思い出した。

「そうですね。見てもらうならば、剣の方がよいと思いましたので」

「ふうん、ま、事情があるってことか」


そんな会話をしているうちに、また昨日と同じギルド職員のトーマスが現れた。

「今日は実技講習に入る。グループに分かれてもらうから、こちらに来てくれ」


グループとはいっても、結局は二人一組で、その二組が1つのグループとなり、

八人の初心者は、大きく2つのグループに分かれた。

志岐はさっき話しかけられた男と組むことに決まった。

「俺はカイ。お前は?」

「シキと言います」

「じゃ、よろしく、な」

あっさりとカイはそう言って、志岐の隣に立った。


残りの一組は若そうな女性二人の組み合わせだった。

「お前らもよろしく」

カイは特に名前を言う事もなく、女性二人にはそういうだけだった。

「ええ、まあ……」

女性二人もそれ以上は何も言わなかった。


初心者講習で出会ったとはいえ、これから先にどうなるのかはわからない。

男性の方から声をかけるなというのだけは注意事項としてゼノから聞いていた。


一つのグループ、つまり四人には指導員が二人就いて、二つのグループは別々の場所へと行くらしい。


「さてあなたたちは私についてきてね。最初は採取の実習だから」

指導員として紹介された中の一人の女性がシキ達に声をかけてきた。

声をかけてきた女性ともう一人の男性の指導員の後ろに続いて、志岐はカイと肩を並べ、その後ろから女性二人がついてきた。


この初心者の一行は、ギルドから出て真っ直ぐ進み、町の出入り口から出た後、

街道を歩き出した。

シキの感覚で30分ぐらい歩いた後、街道からそれて草原の中に居た。

もう一つのグループは他の場所に向かったらしい。


「さて昨日、教わったと思うけれど、ここで薬草を採取してもらいます。

各自10本ずつ、分からなければ必ず聞くこと。そして周りにも注意を忘れずに」


志岐は少し他の人から離れた場所で、冒険者カバンを使いながらも、

『採取に必要な道具」と念じて空間収納から取り出した。

手の中に現れたのは一つのハサミ。

こちらの世界のハサミらしく、持ち手が革製になっていて重かった。


目の前の草に鑑定をかけつつ見ていくと、かなりの薬草があるのが分かった。

名前を見ても、『薬草A』とか『薬草B』という名でしかない。

薬草を採取しようと、手で触れると、根本に近い茎の部分が色付きで見えた。

手に触れていない薬草には特に変わりはない。

何となく切り取り線はここと教えてもらったような気がして、

シキはその部分をハサミで切って採取して、そのまま冒険者カバンに入れる。


また次に手に取った薬草だけ根本が色付きに見えるところから、やはりここで切るのかと思いながらも、もう一つ採取した。

昨日の講習を思い返してみると、先ほどから手に取ると見える色付き部分で、

採るようにと説明があったことをようやく思い出した。


志岐はようやく安心して、次々に見えた薬草類を採取していくと、10本はあっという間に集まったが、それでも数は気にせず採取を続けた。

冒険者カバンに入れているが、そこから空間収納へと移動させていく。

もしも違う種類の草があったとしても、空間収納では分類されるからだった。


他の人の様子を見てみると、適当にやっている人と真面目にやっている人とが、何となく感じられた。

ついでに薬草以外もあるかと鑑定で見てみれば、『眠り草』と表示される草があった。

人目がないことを確かめてから、もう一度眠り草に詳しい鑑定をかけてみた。

今度出てきた表示は以下のようだった。


『眠り草:睡眠補助剤の材料、

     動物・魔物に投げつけると、一時的に眠らす事が可能。

     投げた個体の能力に応じて時間は変わる』


透明パネルは読み終わると自動的に消えたが、目の前の草むらを見ると、

薬草か毒消し草か、ただの草かの区別がつくようになっているのに気が付いた。

志岐は鑑定を何度かかけている内に、機能が向上したのかもしれないと思った。

きっとゲームならば、レベルアップしたという事なのだろうなと感じた。

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