表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
塔の管理人に選ばれました  作者: 白銀美月
15/27

15. 夕食までの時間潰し

志岐が次に見かけたのは防具屋だった。

適当な店の扉をあけて中へと入る。

今度はじっくりといろいろな防具の値段を見て回る事にした。

「何かお探しですか?」

ここでは若い真面目そうな女性の店員さんが声をかけてきた。

「いえ、将来の目標のためにどれぐらいするのかと見ているだけです」

店員さんは志岐の言葉を聞くと、ごゆっくりと言いながら少し離れていてくれた。


それで魔法使いのローブや皮鎧などいろいろな値段を鑑定かけながら見ていった。

この世界に来て気づいた事だが、志岐は一度見たものを記憶できるようになっていた。

塔の管理人の後継者として選ばれたからだろうか。

この世界に来て一度読んだ書物はいつでもその内容を思い返す事が出来る。

だからお店で鑑定をかければ、商品の値段と価値とを、

そのイメージと共にあとから思い出す事が、いつでも可能だった。


ローブや皮鎧も、良いと思う品物もいくつか見つかったが、

志岐が今着ている物と比べるとかなり品質が落ちる。

大賢者やゼノが用意してくれたローブが高級すぎるという事だが、

それが分かっただけでも、良かったと思った。


防具の値段を一通り確かめると店を出て、他の店へと足を運んだ。


野菜や果物などは大通りを歩く人から見える場所に置いてあった。

カゴに盛られた果物は大銅貨1枚とかだが、野菜1個は中銅貨1枚が多かった。

大きさに若干違いがあるものの、志岐がスーパーで見ていた値段とあまり

変わらないように感じた。


そうなるとギルドで紹介された宿屋の料金はかなり安い。

防具の値段も初心者用の品は、剣の値段とさほど変わらなかったが、

良質だと思われるものは、それなりに高価だと感じていた。


野菜も果物も何が何だかよくわからないし、買っても料理するわけにもいかない。

値段を見るだけで過ぎると、今度は変わった絵模様の店を見つけた。

絵で表示されていると、わかりやすいのかもしれないが、絵の理解が無いと

さっぱり何の店なのかわからない。


それでも志岐は扉をあけて店の中へと入っていった。

「何を探しているの?」

店員らしき女性が声をかけてきた。

「すみません、ここは何を扱うお店ですか?」

パッと見たところ、棚が何段かあり、そこに商品が置いてある。

しかし外観からだけではどういう用途なのかさっぱり分からなかった。


志岐の言葉に店員は少しムッとした表情になったが、すぐさま口を開いた。

「こちらは魔道具の店だよ。あんたみたいな子供に買えるような品物は置いていないね、お高い代物ばかりさ」

志岐は店員をじっと見つめた。

「買えるかどうかは、値段を見てみないと何とも言えない。

まあ、それでも……あんたが店員だと、魔道具もたかが知れているのだろう」

志岐はそれだけ呟くと、店員が声を出す前に店から出て行った。


子供扱いされたのも気に食わないし、買えないと思われたのも癪に障った。

いや、確かに成人前なのだから子供扱いでも仕方がないが、大賢者の用意した服装を見ても、悪く思われたようで、それが気に入らなかった。


これからいろいろな人と接する時には、こういう事もあるだろうと、

早めに経験できたのは、良かったかもしれない。

志岐はそう考えるようにしたけれど、商品としての魔道具が見られなかったのは、

かなりショックだった。


それから幾つかの店を見た後、宿屋へと戻った。

「夕食はどうしますか?」

中のカウンターみたいな向こうから声をかけてきたのはおかみさんだろうか。

「はい、こちらで食べてみようかと思います」

「ではこちらの食堂に来て下さいね。値段は別料金となっております」


志岐は部屋の木札を受け取ると、部屋へと戻った。

「そういえば、これも魔道具の一種だったな」

部屋の中へ入ると、手に持っていたカバンを空間収納の中へと片づけた。

それからマントも脱いで、これも空間収納へと入れた。

それから部屋の中に置いてある水差しで手を洗うと、部屋から出た。

出入り口の横にある箱に木の札を押し付けると、鍵がかかった音がした。

志岐は部屋の鍵である木の札だけ手にもって食堂へと入っていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ