望みし楽園③
駆け足で物語が進んでいるかも…
稚拙な文章で申し訳無い。
ハルスの自己紹介で何か重要なことを思い出しそうになった私は必死で思考を巡らせる。
別に前世で似たような事があった訳じゃない。こんな風にイケメンに微笑みかけられる機会も、ましてや狼に襲われて助けられるような機会があったことなどある訳がないのだから。
しかし、結局思い出せることなく話は進んでいく。
「あなたの名前は何ですか?異世界の迷い子さん」
「あっ、私の名前は潮沢瑠璃香。るりかが名前です」
慌てて名乗りながら異世界の迷い子って何だろうと思う私。
名前からして、何となく意味は分かる。だけど騎士団の副団長なんてそこそこ偉そうな人が迎えに来るような重要な立ち位地には思えないんだけど……どうしよう。どうしたら良いんだろう?
迷いながらも状況に流されるままに行動している私は、気がついたらハルスと一緒に街へ向かって歩いていた。
何故かわざわざ馬から降りて私と一緒に歩いているハルスはいろいろと私の質問に答えてくれた。
「異世界の迷い子って何ですか?」
「この世界は勇者召喚を初めとして異世界から来る人が多いんですよ。その中で、勇者召喚などに関係なくこの世界に紛れ込んでしまう人達を総称して異世界の迷い子と呼んでいますね」
「あれ?召喚した訳でもないのになんで私があの場所に居るって分かったんですか?」
「それは神託によるものですね。異世界の迷い子などが現れるとその近くの神殿などに神託が下るんですよ。基本、異世界の迷い子は戦闘力も殆ど無く、ほおっておくと死んでしまう可能性もあるので、殆どの国では異世界の迷い子の保護を義務付けていますね」
にっこり笑ったハルスは私に提案して来た。
「一緒に王宮まで来ませんか?この国では王家が保護してくれるので、かなり安全な生活が出来ますよ」
強制ではないらしい。
ハルスは私にウインクすると、更に手を取って軽く口付けをした。
耐性の無い私は既に全身真っ赤だ。頬が凄い熱を持っている気がする。
そんな私を見て調子に乗ったのか、少し笑ったハルスは私を引き寄せて耳元で囁きかける。
「どうだいルリカ。もし城に来てくれるなら、今度の舞踏会で私と一緒に踊ろうぜ」
「~~~っっっ/////」
恥ずかしさや緊張で思考が一回転した後、から回っていた歯車が偶然噛み合わさったかのようにふと、少し前にハルスの自己紹介で感じた違和感の正体を理解した。いや、思い出したといった方が正しいだろう。
これ、私が前世で死ぬ前に書いていた乙女ゲームものの恋愛小説のプロローグと同じ展開だ!!
非常に驚いたが、これもテンプレの一つなのだろうか?
全ての出来事を書いたわけではないのでスキップ機能の無い現実では分かりにくかったが、この展開やハルスの囁きは間違い無く私の小説と同じ展開だ。
◆◆◆◆◆
私はハルスに連れられてザルム王都までやって来た。
街を囲む外壁の門をくぐると多くの人達が賑やかに騒いでいた。武器を持ち鎧を身に着けた姿は、いわゆるファンタジーで定番の冒険者風の格好で、そんな人達があっちこっちで思い思いに過ごしていた。
そのまま大通りを真っ直ぐ進み内壁の門をくぐると、先ほどの喧騒は無くなり、落ち着いた雰囲気の場所に変わった。
貴族たちの住む第二区という場所で、流石に路上で騒いだりまではしないようだ。
そんな貴族たちの区画も通り抜け、城門をくぐる。
すると、かなり凝ったメイド服を着た綺麗な赤髪の女性が既に待ち構えていた。
「お待ちしておりました。そちらの方が今回の異世界の迷い子ですね?」
そうハルスに尋ねたメイドは返事を待たず、私に向き直り挨拶をして来た。
「ザルム王国王宮メイド長のマリアナと申します。以後、お見知り置きを。それではお部屋へご案内致します」
「…どうやら私はここまでのようですね。マリアナさん、後は宜しくお願いします」
テキパキと指示を出し、キビキビと動くメイド長。そんなメイド長に後を任せてハルスは騎士団の方に戻っていった。
小説の時よりメイド長の出来る女感は強いが、ここでハルスと別れるのもストーリー通りだ。
そのまま王宮内を案内され、部屋を与えられた。メイド長が部屋を去り、一人になったところで今までの疲れがどっと押し寄せて来た。フラフラとベッドに倒れ込むと素早く布団に潜り込み、そのままグッスリ寝てしまった。
◆◆◆◆◆
こうして、私は今王宮にいる。
この世界が私の書いたあの小説と同じだというのなら──
目指すは1つ、逆ハーレムへの道!!
ちなみにコボルトもちゃっかり此処までついてきてるよ。
これでプロローグが終わりました。
と、いうわけで次回予告的な何かです。
理想が体現された世界にて、少女は逆ハーレムへの道を目指す。
少女が目指した理想の果てにある未来とは──
次章、夢の理想郷
お楽しみに!!
まあ、期待に応えれるかどうかは別ですが。