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望みし楽園②

しばらく歩いていたが、何もイベントは起こらず、道にたどり着いた。……いや、別に何も起きない方が平和で良いんだけどね?

ほら、異世界で森からスタートっていったら熊とか狼のモンスターに襲われたり、盗賊に出会うのがテンプレじゃない?

後は、盗賊やドラゴンなんかに襲われているお姫様とかかな……私は女だからお姫様は無いな。

ハーレム作って百合展開なんて誰特だし。


よく考えたら、狼では無いけれど犬系のモンスターだったらコボルトにあっていることに気づいた。

この子が異世界最初に出会ったモンスターねぇ。……チェンジで。ノーカンでいきましょう。せめてペガサスやドラゴンのようなもっとファンタジーらしい生き物に会いたかったわ。


そんなことを考えていたから罰が当たったのだろうか?

道沿いに進めば人里に出れるだろうと考えて平原を呑気に進んでいた私は、遠くから群れで駆けてきた灰色の毛並みを持つ狼達にあっという間に囲まれてしまった。

只でさえ室内派で、走ったりするのが好きではない私が狼に競走で勝てないのは仕方ないとはいえ、味方はコボルト1匹、武術などが出来るわけでもなく武器も持っていない少女1人でどうやってこの状況を打開しろと?

十数匹の狼達に見つめられ冷や汗をかいている私。


そんな私をみかねて助けようとしてくれたのか、勇敢にもコボルトが一歩前へ進み出る。


「キッ、キッ。 キャン!」


「「ガルルルルゥゥゥ!!!」」


「クキュ~~~ン!?」


涙目で私の足の間に潜り込んでブルブル震えるコボルト。

弱ェェェ、分かってはいたけども。

あっ、ちょっと待て!汚い汚い、泥が付いている。ちょっと!?擦り付けないでよ!足が汚れる。靴が……手遅れだったか。


一瞬、狼のことを忘れかけていた。

コボルトが煽るだけ煽って逃げてしまったので、未だに臨戦状態だ。

どうしよう?

正直余計なことしやがって、といった気分だ。コボルトが何かしなくてもさして状況は変わらなかった気もするが……。


緊迫する状況の中、ついに狼達が襲いかかろうと牙を剥いて飛びかかって来た。

もうダメだと思ったとき、赤と白の二色で紋様が描かれた金属鎧を着た男が、皮製ではあるが同じように鎧を装着している赤茶色の毛並みの馬に乗って、狼の包囲網を突き破って私の前に飛び出して来た。



「ライ、アーーーツ!!!」


チョッ?!それってそんな使い方をする武器じゃない!

男は手元を覆い隠す程に大きく鍔が広がっているランスを片手に持っていて、それで狼を横殴りにしている。

……もう何でも有りだな。ランスは本来、馬に乗った状態ですれ違いざまに突き刺す攻撃を基本とする刺突用の武器である筈で、片手で振り回すなんて出来るわけが無いのだが、男は軽々と振り回して鈍く重い音を立てて狼を吹き飛ばしており、何らかの術を使っているのかランスからは電撃が狼に向かってほとばしっている。


「凄い……」


悪い方の意味で。

悪い意味で男は凄かった。


槍であるという武器の長所を完全に押し殺した挙げ句、鈍器として使用。

戦術も作戦もあったもんじゃ無い、完全に力押しの戦い方。

私を……コボルトを含めて私達を守る為なのだろうが、せっかく馬がいるのに移動しないので使えない。


強面で筋肉隆々の大男がこういう戦い方をしていたのなら、まだ私も納得が出来ただろう。

しかし、金属鎧を身に纏い、全身が判らぬとはいえ、顔から見ても北欧系の優男に見えるのだ。

格好良い、イケメンの青年と現状の戦い方が似合ってなく違和感しか残らない。

どうしよう、このもやもやした気持ち。



「大丈夫でしたか?お嬢さん」


仲間が数匹やられたところで狼達は去っていった。

見事に狼を退けた青年は私の前で馬から降りると、片膝をついて私を少し下から見上げてくる。


「ザルム王国第二騎士団副団長、ハルス・フィーネです。あなたをお連れする為に参りました」


グリルーに囲まれているのを見たときは少しヒヤリとしましたが、御無事で良かった。

そう付け加え、フワリと微笑みかけて来たハルスを前に、何かが思考に引っかかった。



ん?この展開、何か知っている気が……?


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