表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ディメンション×ソード   作者: 空のいさや
第一章-騎士の学校-
3/51

騎士の学校 ~約束~

 俺は両親を事故でなくしたが、13歳年の離れた兄貴がいた。騎士学校を出て騎士になった兄貴は俺の面倒をよくみてくれたが、とても忙しそうだった。

 俺はそんな兄貴に、ようやくの思いで日帰りの旅行に連れて行ってもらう約束を取り付けた。

 約束の日、兄貴といろんな場所を見て楽しく過ごした。しかしその帰り道、王都で突然妖魔に襲われた。

 兄貴は騎士としては最上位の円卓の騎士に属し、青騎士と皆に知られているほどに強いことを知っていた俺は、妖魔という人を殺す恐ろしい存在が目の前にいるという状況にも関わらず、少しワクワクしていた。強い兄貴の戦いが見られると。

 しかし妖魔も強かった。そもそも王都には結界のせいで妖魔は基本的に侵入できない、それを突破してきた時点で普通の妖魔ではない。しかも流暢に言葉を話すという知能レベルから考えて、高等妖魔である。それが3体もいた。

 ただ円卓の騎士である兄貴の前では、その高等妖魔3体を倒すのは時間の問題だった。あと数体増えたとしても、兄貴一人なら負けることはなかっただろう。しかし。


「夾也ぁああああ」


 高等妖魔はもう2体潜んでいて、少し離れた場所にいた俺を狙ってきた。

 兄貴は俺が襲われるほんの少し前に気づき、俺を助けてくれた。自分の身を捨てて、膝を地に落とす。次元刀もその手から滑り落ちた。

 俺を襲い兄貴を刺した高等妖魔は、勝ち誇るような顔をしながらすぐに距離を置き、仲間のところに合流する。


「兄貴……血がたくさん……なんで……」

「やられちまった……な……」


 高等妖魔たちがざわめく。


「青騎士の腹に穴あけてやったぜ」

「グリーバス様の話は本当だったな。弟の方を狙えばやれるとは」

「ああなってしまえば、青騎士はもう十分に動くことができない、虫の息だ」


 グリーバスという名前を聞き、兄貴は驚く。


「あの野郎……まだ生きてやがったのか……」

「グリーバス様は、こないだお前に奪われた両腕を見るたびなげいておられたぞ。さて、お前が死んだらついでに弟も殺してやるぜ」

「そうだな、あの世で兄弟仲良く再会させてやるよ」


 兄貴の血は止まらない。


「いま……なんて言った?」


 兄貴が立ち上がる、顔を伏せたまま。


「お前の弟を殺してやるといったんだよ」

「それだけは……絶対に、させない……俺の全てを懸けてでも……ディメンション……!!」


 兄貴は顔をあげた。その手には再び漆黒の次元刀が顕現されていた。


「両目が赤く……なにっ!」


 その瞬間兄貴を刺した高等妖魔が真っ二つに切断される。

 それを見て高等妖魔3体が同時に兄貴に襲いかかる、それも一瞬で3匹同時に斬り裂かれる。残った1体はそれを見て。


「化物だ……かなわない……逃げなっぐはっ」


 動く前に一刀両断される。


 兄貴は壁に倒れかかった。俺は急いで血まみれの兄貴に駆け寄る。


「兄貴、病院に行こう、まだ助かるから……」

「いい……夾也ごめんな……今日楽しみにしていたのに……」

「いいよ、また次行けばいいから……まだ兄貴と行きたい場所……たくさんあるんだ」

「ごめん……それ叶えて……あげられるか、わからないや」

「いいよ、兄貴忙しいもんね……じゃあ今度剣教えてよ……俺兄貴みたいな強い騎士になりたいんだ……」

「夾也……騎士になりたかったのか……知らなかったな……」

「うん、兄貴みたいに……みんなを救えるような……強い騎士に……いつか……必ずなるよ……約束する……!」


 俺は涙が止まらない。いつのまにか俺の手も服も兄貴の血で染まっていた。


「……それ、なら……夾也は……弱くて泣き虫だから…………夾也が強くなるまで……俺、が…………」


 この続きが思い出せなかった。すごく大切なことのはずなのに。

 それに兄貴の次元刀が消える時、俺の中に光となって入ってきたような感じがしたが、あれはなんだったのか今でもわからない。


 そして兄貴は死んだ。俺のせいで。


 今まで俺は、兄貴が自分のせいで死んだというショックから抜け出せず、兄貴が死んだ時の過程と光景、そして言葉を、記憶の奥底に追いやってしまっていた。自分が傷つくのが恐ろしくて……とても怖くて……。

 そして都合のいいことだけを思い出し、それで騎士になろうとしていた。つまり、中身のないからの約束を果たそうとしていた。

 だけど今思い出した。あの事件で兄貴に騎士になりたいと言った時の気持ち、約束が、今蘇る。


 暴風のなかで俺の手にも、次元刀の使い手であるという証の紋章が刻まれる。そして暴風が止み、俺の手には。


「そんな……なんで……!?」


 次元杉は消え、紋章も手に刻まれているのに、その手には……次元刀が握られていなかった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ