決闘 ~いつかまた~
目が覚めるとそこは病室だった。
周りを確認すると夏陽や由良、帝が近くに座っているのが見えた。
「また負けたのか……」
俺の声に気付き、皆が声をかける。
「おはよう夾くん、惜しかったね」
「夾也あんた最近入院ばっかりして、もっと体を大切にしなさいよ」
「衛上くん、おはようございます。いい勝負でしたよ」
俺と霞河秋人の決闘で、俺はまた負けた。
最後の俺の一撃は全然届かなかった。
でも俺は自分の力をやっと見つけることができ、やっとスタートラインに立った気がした。
「そういえば昨日先生が行ってたけど、あいつ今日の朝、元の学校に汽車で帰るらしいわよ」
今日の朝、霞河秋人が帰る……。なにか胸にひっかかるものがあった。
ふと周りを見渡すと。
「あの青い花は?」
「あれは最初から置いてあったよー」
由良が答える。
最初から置いてあったのか……。
でも花を持ってきてくれる人なんて、今ここにいるメンバー以外思いつかない。
「あっそうそう、ここにお見舞いに来る途中で霞河くんに会ったよ」
由良が続けてそう言った。
「もしかしてあいつ、夾也をお見舞いに来たんじゃ」
夏陽がそう言った。
霞河秋人が俺の見舞いに、だとしたら俺は。
「9時半、南領行きの汽車が出るのは10時ですから、急げばまだ間に合いますよ」
帝がそう言い、俺はベッドから降りる。
「夾也もう大丈夫なの?」
不思議なことに、少し動いてみても、痛みはほとんど残っていなかった。
「大丈夫、もうほとんど治ってるみたいだ」
「夾くんあんなに怪我してたのに、すごい」
由良が驚きで目を丸くしていた。
「俺行ってくるよ」
俺は急いで着替えて、病室を飛び出した。
急いで駅に向かう。
病院から駅までは歩いたら50分はかかる。
俺は行かなきゃいけない。
もう一度会わなければいけない。
だから、走る。
「はぁー、はぁー」
息を切らし、駅までたどり着く。駅の時計を見ると時間は9時55分を指している。病院を出たのは35分くらいだからおよそ20分で着いたことになる。
俺は駅のホームで霞河秋人を探す。すると東領騎士学校の制服を着た女子が群がっているのが見えた。
まさかあれかよ。近づいていくとその隙間から霞河秋人が見えた。
俺は女子の群がりなど気にせず、声をかけた。
「霞河秋人、腕大丈夫か?」
秋人の左腕はぐるぐるに包帯で巻かれていた。
「衛上夾也か、なんで勝った俺が負けたやつに心配されんだよ」
秋人が笑って答える。その笑顔にどこか救われた。
そして俺は言いたかった言葉を口にする。
「秋人、次は……必ず……俺が勝つ! 絶対……届かせてみせるからな!」
秋人は口元を僅かに緩める。まるでこの言葉を待っていたかのように。
「できるならやってみろよ。夾也」
秋人はそう言い、時間通り来た汽車に乗り込む。
秋人はいつかまた夾也と戦う日が必ず訪れるという、限りなく確信に近い予感を抱く。
同時に、再び好敵手と次元刀を交える日を楽しみに思った。