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ディメンション×ソード   作者: 空のいさや
第一章-騎士の学校-
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騎士の学校 ~試しの儀~

 俺たち下位クラスの新入生は、担任にどこに行くかも教えてもらってないまま連れられて歩く。

 次元刀が召喚できないかもしれないという不安を解消する意味でも、俺と義朝と由良はあえて会話をしながら歩いていた。


「へえー、由良ちゃんって言うんだ。よろしくね」

「夾君の友達の義朝くんかー、じゃあー義朝って呼ぶね」

「なんでこいつが夾くんで、俺が呼び捨てなんだよ! このちんちくりん」

「ちんちくりんじゃないよ! 理由はうーんっと、なんとなくかな! 嫌……だった?」


 由良に上目使いでそう言われ、義朝もあえなく。


「もう好きに呼んでくれ」

「義朝、よろしくね」

「じゃあ俺も呼び捨てで呼ぶぜ、由良、よろしくな」

「うまくまとまったみたいだな、よかった!」


 東領騎士学校の新入生がクラスを問わず一箇所に集められる。俺と義朝と由良はその不思議な空間に驚く。


「なんだろうここは、そしてこの入る時にもらった1メートル程の木の棒って……」


 俺はその棒を軽く前に振ってみる。


「なんか不思議な感じがするな」

「気味が悪いね……」


 由良も同調する。


 そこは東領騎士学校の裏にある大きな洞窟だった。洞窟といってもあかりが灯されていてかなり明るい。広さも充分で、300人ぐらいは入っても問題なさそうなぐらいだ。


 新入生が集まりきると、先生とおぼしき背が高くて、真面目そうな男が生徒たちの前に出てきた。


「静粛に!!!」


 そのあまりのばかでかい声に、それまで友達と喋ってた新入生たちも静まり返り前を向く。


「私は一年上位クラス担任の才賀さいがだ。では今から試しの儀について一度だけ説明するからよく聞くように。まず試しの儀とは今から数分後にくる、霊的磁場が年に一番高まる一時間に、限られた数箇所でしか行うことができない重要な儀式だ。次元刀が大量に眠るこの世界ではない次元から、召喚媒体を用い「ディメンション」と詠唱することで次元刀を召喚してみせろ。気付いている者もいると思うが既に、召喚の媒体となる次元杉から削り出した棒を、入口で一人一本渡してある」


 次元杉……聞いたことがある。成長が遅い上にこの国でも4箇所でしか取れない貴重な木だ。これを使い「ディメンション」と詠唱すれば次元刀を召喚できるということか。


「最後にひとつだけアドバイスだ。次元刀は思いの強い者のもとに現れやすいし、思いの強い者の前でこそ真の力を発揮する存在だ。それだけはずっと覚えておくように。ちょうど時間がきたようだな、では次元刀の召喚を始めろ!」


 新入生の皆が 各々おのおのに召喚を始める。するとすぐに風が巻き起こった。最初の次元刀召喚者が出たようだ。

 ディメンションと詠唱した直後風が巻き起こり、手に次元刀の使い手の証である紋章もんしょうが刻まれる、そしてその紋章が輝きを放ち、その手の中で次元杉が次元刀へと姿を変える。これが次元刀召喚の流れなようだ。

 召喚初成功者の手に握られた次元刀は、刀身に炎をまとっていた。召喚を終えたその生徒は次元刀をすぐに消した。一度召喚に成功した次元刀は消すのも自由で、再び「ディメンション」と詠唱することで、またその姿を現すようだ。

 だから、初めて次元刀を出すことに成功することを召喚、二回目以降を顕現けんげんと呼ぶらしい。


「もう成功者が出たのか――あの次元刀の性質はほのおだな」


 次元刀には性質があり、その性質にはさまざまな種類がある。なかでも光剣こうけんと呼ばれる光属性の次元刀は、妖魔に対して特に有効となるため騎士として大成しやすい。

 しかし光剣の出現率は特に低く非常にレアである。現在アストランド騎士団の最高位の騎士である円卓の騎士5人のうち、2人が光剣使いと言われる。


 そして次々に風が巻き起こり、水に炎、氷など、さまざまな性質の次元刀をその手に収める次元刀召喚者が誕生していく。

 突然ひときわ大きな風が巻き起こった。


 何度詠唱しても、なかなか召喚できずにいる俺は、思わずその風の巻き起こった方向を見る。

 暴風とも思える風の中に、黄金に輝く次元刀を握る少女が立っていた。その少女を俺はよく知っている。


「夏陽……今日はおまえに驚かされてばかりだな」


 周りにいた新入生から歓声が湧き上がる。すでに次元刀を召喚し終え、自分のクラスへ帰ろうとしていた新入生も思わず立ち止まり魅入っていた。


 先生たちもざわつく。


「才賀先生、たしかあの子はあなたが担任する上位クラスの生徒ですよね? まさか光剣召喚者が出るとは驚きました」

「そうですね、私も驚いています」


 しかしまだ、次元刀を召喚できていない新入生は感嘆ばかりしてはいられない。すぐにまた精神を集中させていた。


 俺は、少しだけ離れた場所で次元刀を召喚しようとしていた由良の方を見る。もう約30分ほど経過したにも関わらず俺と由良は次元刀を召喚できずにいた。由良も俺と同じでなにか悩んでいるように見える。

 しかし俺がちょうど由良を再び見た時由良はすっと顔をあげ、視線に気付いたのか俺のほうに振り返って、にこっと笑顔を見せた。そして一言ポツリと呟く。

 すると由良を中心にまた大きな風が起き、その強風の中心には……刀身をビリビリと雷が走る、次元刀を持った由良の姿があった。


「由良のは――かみなりか」


 召喚を終えた由良は、まだ俺が次元刀を召喚し終えていないことを知ってか、少しこっちを見はしたが近づいてはこなかった。

 俺からすこし離れた壁まで歩いていきちょこんと座り込み、俺の方を見ている。その少し離れた場所で夏陽も、壁際に立ち俺の方をちらちら見ているのを偶然発見した。


「二人とも応援してくれているのか……俺なんかを」


 義朝も俺から少し離れた場所で次元刀を召喚しようとしていた。すると突然、義朝の大きな詠唱が聞こえ、俺は義朝の方を見た。

 見ると強い風が巻き起こっていた。


「黒い……風……?」


 黒っぽく見える風の中で、義朝は漆黒の次元刀を召喚していた。召喚時に炎や雷、水などが走る様子もなかったので、いったいどんな能力を秘めているいるのだろう。


 先生たちがまた少しざわつく。


「あれは黒剣か、要注意だな」

「光剣に黒剣か……今日は珍しい物がよくみれるな」

「光剣と黒剣では性質は真逆だけどな……黒剣は危うい」


 義朝は召喚を終え、次元刀を消し、俺の方へ歩いてきた。


「次は夾也、おまえの番だ、まさかこんなところで……終わらないよな?」


 義朝は由良のとなりに座り、黙って俺を見ている。


「……そうだ、ここで終わってたまるかよ。だから……思い出さなきゃいけない、全部」


 俺はよりいっそう神経を研ぎ澄ます、そしてトラウマを乗り越えようと思った。ズキっと頭が痛くなる。


「まただ……また……だけど……俺は」


 あの事件を思い出すのはやめろと心がいっている。

 これ以上思い出すと心が壊れてしまうかもしれない。だけど――。


「約束……そうだ約束したんだ……兄貴と……だから……俺は前に進むんだ……! ディメンション……!!」


 その瞬間俺を中心に強い風が吹き荒れる。夏陽の時と同じか、それ以上の。


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