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ディメンション×ソード   作者: 空のいさや
第二章-大演武-
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大演武 ~開幕~

 病院で軽く手当をしてもらい、付き添ってくれた由良と帝を帰して、俺は家路に着いた。体の節々( ふしぶし)が痛むが、初戦は2日後だ。傷を直し、まずは必ず初戦を勝たなければいけない。2戦目であいつともう一度戦うために。



 大演武一日目の朝が訪れる。俺は今日は戦わないが、夏陽の初戦があるからそれを見るためにコロシアムに向かっていた。コロシアムでは由良と帝が待っている。 チケットを買わなくても選抜メンバーは、友達や家族を3人まで連れて関係者席に入場することができるのだ。


「おはよう。由良、帝」

「大丈夫夾くん?」

「衛上くん大丈夫ですか?」

「大丈夫だよ、痛みももうあまりないし。それに夏陽の試合は見ておきたいんだ」


 二人とも本当に心配してくれてるのが伝わってきた。

 そのまま俺達はコロシアムの関係者席に入り、試合が始まるのを待った。人が続々と入ってきて、会場は満員状態になる。


 開会式が始まり、主催側の、アストランド騎士団の幹部や東領騎士学校の校長先生の話があり、生徒側の代表の開会宣言もあった。生徒代表で開会宣言をしたのは早見はやみつかさ、帝の兄だった。

 その開会宣言は堂々としたもので、さすが東領騎士学校の生徒会長を務めてるだけはあるなと思ったのと同時に、やはり帝とは雰囲気が違うなと思った。


 開会式が終わり、試合が始まる。

 次元刀は形も能力も人によって様々である。最初に次元杉によって次元刀を召喚した人が刀を召喚したので、その名前が付けられただけなのだ。だから刀以外にも、剣の形をした次元刀もたくさん存在する。

 そんな次元刀の戦いを見れる機会は妖魔に襲われた場合を除いてこの大演武以外ほとんどない。だから観客は一戦一戦に熱中する。

 騎士学校に在籍する生徒としても、学年問わず選抜された学生のレベルの高い試合を見る機会はあまりなく、非常に勉強になる機会と言える。

 いろんな学生の試合が次々と始まりは終わっていく。早い試合だと一分以内、遅くても10分くらいで試合が終わるからだ。各学年の選抜メンバーの初戦が二日にかけて行われる。

 試合を見ていて本当にいろいろな能力、そして戦い方があるなと感じた。能力で押し切るタイプや、力で押し切るタイプ、速さで押し切るタイプ、技術で押し切るタイプ。またそれらが複合されて力を発揮している者もいた。


「きれいだな」

「そうだね」

「そうですね」


 次元刀同士が接触しお互いの能力が競り合う瞬間が、見ていてとても心に来るものがあった。そしてその度に観客は声を上げていた。


 そしてとうとう夏陽の試合の順番が来た。服装こそいつもと違い、騎士スタイルだが、顔付きからは緊張感などは感じられない。その瞳からは圧倒的自信すら感じられる。

 帝曰く対戦相手は南領騎士学校1年の次席じせきらしい。試合開始の合図が出される。

 

 大演武では、学校の敷地内でもつけている次元刀の力を抑えるブレスレットを着用して、切れなくなった次元刀を使い、相手を気絶させるか、降参と言わせれば勝ちである。もちろん相手が特設ステージから逃げ出しても勝ちである。


「東の天才1年生とか言われてるらしいが、女に負けるつもりはないぜ」

「……」

「無視かよ。調子に乗りやがって、俺から行くぜ」

「……」

「おりゃああああああ」


 南領1年の次席が刀身から冷気を漂わせた次元刀を顕現し、夏陽に斬りかかる。夏陽は相手が動きだしてから次元刀を顕現する。夏陽の顕現する黄金に輝く次元刀に観客から歓声があがる。


「そんな見かけ倒しぃいい」


 南領の1年の次席は見かけ倒しと言ったが、見かけ倒しでは説明つかない圧倒的実力がそこにあった。

 キーン。夏陽は一瞬で相手の動きを見切り、南領1年の次席の次元刀を弾き飛ばし、眼前間近に光剣を突き立てる。

 南領1年の次席は圧倒的実力差を見せられて完全に肩を落とす。止まっていた光剣がまた再び動きだそうとした瞬間。


「まいった、降参だ」


 南領1年の次席は、試合終了を告げる一言を吐いた。夏陽は光剣を消し、また会場が大きな歓声に包まれた。


 俺は試合が終わった夏陽を探しに、選抜メンバーだけが入れるコロシアムの待合室に入った。水筒から水を摂取する夏陽の姿があった。その姿はさっきの試合の冷徹な雰囲気とは違って柔らかい雰囲気を感じ、戦ってなければ年相応の女の子なんだなと思った。

 俺は声をかける。


「夏陽2回戦進出おめでとう! すごかったよ」

「初戦ぐらい勝つのは当然よ。でも……ありがとう」


 夏陽が急に素直になると、気持ちがそわそわする。


「夾也、明日頑張ってね。私楽しみにしてるから」

「俺……倒したいやつがいるんだ……だから明日は負けないよ。じゃあ、いくね」


 俺は帝と由良を待たせているからと言い、待合室を一人で後にした。

 

 そうして大演武1日目が終わった。明日は俺の初戦だ。


  ーー ーー ーー


 大演武二日目の朝が訪れる。二日前に兆也いざやから受けたダメージはまだ少し残っているが、なんとしてでも今日の初戦は突破しなければいけない。俺は会場に向かった。


「おはよう、夾くん」

「おはよう、衛上くん」

「二人ともおはよう」

「昨日はよく眠れた?」

「まあまあかな」

「そうだ衛上くん、今日の対戦相手を調べておきましたよ。相手は西領1年の6位らしいですよ」

「西領1年の6位……情報ありがとう、帝」

「じゃあそろそろ会場に入るか」


 俺達はコロシアムの関係者席に入った。

 試合の少し前までは、ここで由良や帝と一緒に俺は試合を観戦しようと思っている。なぜなら俺の試合の少し前に、見ておきたい試合が……成瀬なるせ兆也きざやの試合があるからだ。


 大演武二日目がスタートし、次々と試合が始まりは終わっていく。

 とうとう次は兆也の試合だ。帝曰く相手は東領1年の2位の生徒で、海馬かいばりくという名前らしい。そして次元刀の能力は水らしい。


 兆也は会場に入り、やる気のなさそうに相手を見ていた。


 試合開始の合図が出される。

 先に動いたのは海馬かいばだ。刀の形をした次元刀を顕現し、相手に向かっていく。兆也は相手の次元刀がこっちに振り下ろされる直前に、やれやれといった風に次元刀を顕現し相手の一撃を防いだ。

 兆也の次元刀も刀の形をしていた。しかしその次元刀は炎や氷などの能力をまとっていなかった。次元刀と次元刀がせめぎ合う最中さなか、海馬は刀身から水を走らせる。

 こないだ由良が精神をすり減らしてやっとできたことを、海馬は涼しい顔をして行っている。つまり能力のコントロールができているのだ。

 その水にはまるで意志があるかのように、刀身から兆也の手まで伸びて、相手の手から次元刀をすべらせる、すべらせるはずだった。


「こんなもんかよ……つまらねえ」


 その瞬間突如兆也の次元刀の刀身が炎に包まれる。しかもそれは前に見た上位クラスの秀次しゅうじの炎とは違い、青い炎だった。

 兆也の次元刀から青い炎が発生した瞬間、海馬の次元刀から兆也の次元刀へ走っていたはずの水が消し飛ぶ。そしてあまりの熱さに海馬は一瞬で次元刀を手から離してしまう。

 海馬は、昨日夏陽と初戦を戦った相手のように、一瞬で力の差を感じとった。そして。


「まいっうっ」


 ここが昨日とは違う。一瞬で無防備な海馬の腹に一撃を叩き込む。相手は気を失い倒れこむ。観客は兆也の圧倒的能力に、大きな歓声で返す。


雑魚ざこが」


 兆也は特設会場から去っていった。


「兆也は、能力を完全にコントロールしているのか」

「海馬くんもすごかったのに」

「そのうえ彼の次元刀は特に珍しく、そして強力な力を持つと言われる青い炎を纏っていましたね」

「これが西の天才か……じゃあ俺もうすぐ試合だから行くよ」

「夾くん、がんばってね」

「衛上くんがんばってください」

「おう」


 もうすぐ俺の初戦が始まる。今だけは兆也のことは忘れて、初戦の相手に集中しなければいけない。



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