大演武 ~選抜~
夏休みが開け、2学期に入り、今日で3週目に入る。
学校に来ると生徒全体が浮き足立っているように見えた。
「なんか今日はいつもより騒がしいな、なんでだ?」
「夾くん、知らないの? 今日は大演舞の参加者が発表されるんだよ」
「大演武の参加者が今日決まるのか、俺も昔大演武見たことあるよ」
「たしかあれは、各学年から8人が選抜されるんでしたよね」
大演武、それはアストランド領内に東西南北4カ所設置されている騎士学校同士の交流試合である。
各騎士学校から学年ごとに8人ずつの計24人選抜され、4つの騎士学校で合わせて96人の生徒が参加する1対1のトーナメント形式の大会である。
1年生は1年生同士戦う新人戦形式で、2、3年生は合同で戦うことになる。
また、交流試合と言ってもその大会の規模はでかく、大きなドーム型会場の特設ステージで行われるその試合は、見応え充分なものがあり、見物の一般客、生徒含めて、観客の動員数は膨大である。
「まあ下位クラスの俺らには関係のない話だな」
「だね」
「わからないですよ。衛上くんならもしかしたら」
「帝は俺を買いかぶり過ぎなんだよ、俺なんて次元刀も出せないのに」
その時、廊下で歓声が上がった。
「どうやら、一年の選抜メンバーが発表されたみたいですね」
「じゃあ、見に行こうよ~」
「そうだな」
俺達は廊下に出て、人混みの中に入っていった。そして掲示板に張り出された、大きな紙を見た。上から順に見ていく。
最初に小泉夏陽という文字が見えた。夏陽か、当然と言えば当然だろう。あと知っているのはっと……義朝もか。あいつらはさすがだな。
あとは……推薦枠、衛上夾也……。俺の名前があった。
「なんで俺の名前が……」
「推薦枠ってことは学年一位の小泉さんの推薦ですね」
「夏陽さんの……推薦」
推薦枠。これはクラスや実技の成績などとは関係なく、学年第一位の人が一人指名できるというシステムらしい。 俺も今、帝から聞かされるまでは知らなかった。
俺は夏陽の元へ走った。上位クラスの窓際の席に座っている夏陽の姿を発見し、話しかけた。
「夏陽なんで……?」
「ああ……あれね……私、推薦枠の指名権利もらって迷ってたんたけど、義朝に言われたんだ。迷ってるなら夾也を指名しろって。夾也は次元刀を召喚できないのになんでって聞いたけど、それは教えてくれなかった。だけど義朝がこういう時適当なことを言うはずないのは知ってたし、私も夾也が戦うところを見てみたかったから」
「そうだったのか」
納得がいった。義朝の次元刀を俺の次元杉で出来た木剣で防いだことがあるし、義朝は今でも俺が高等妖魔を倒したんじゃないかと疑っている。
そしてこの大演武は、義朝にとって俺の実力を確かめるにもってこいの舞台という訳か。
「夾也、嫌だったかな……?」
立ち止まってばかりもいられないと俺は最近思っていた。
そう考えた時、学校の枠組みを超え、強い同年代と戦える機会である大演武は俺にとって大きなチャンスだ。覚悟を決める。
「いや、いいよ。俺は大演武に出て……戦うよ」