女子会。思惑は様々に
ある日のこと。
千鶴は自室でシャワーを浴びていると、寝室の方で何やら複数の気配がする事に気づいた。
一瞬険しい顔になるものの、この魔王城で敵が出るわけもないかと考え直し、しかし取り敢えず確認しようと、バスローブを羽織って、部屋へのドアを開けると、
「あー、居た居た!」
と、やたらとハイテンションな様子の恵子がまず目に入った。
「うっわー、バスローブとか、何であんたっていちいちそうカッコつけるのよー。しかもそれが似合ってるのがまたムカつくー」
ぶうぶうと不満たらたらに言う朝霧三波も居た。
「何事かしら?」
「ちょっと待ってなさいよー……あ、来た来た」
質問が聞こえていたのかすら怪しい三波がドアの方を振り向くと、山中果歩が、愛奈を引きずるようにして現れた。
愛奈は寝る前だったのか、まだ意識の方はハッキリしているようであったが、すっかり準備万端のパジャマ姿である。
そう言えば、他の面々もパジャマを着ているなと千鶴は気づく。
「連れてきたぜー」
「あ、あの……私、本当に疲れてるんですけど……」
「たまには女同士の付き合いも大事にしろよ。いつもいつも修業修行じゃ息詰まるぜ」
千鶴は額を指先で押さえながら俯き、首を横に振る。
「……で、どういった趣向なのかしら?」
「怖い顔すんなよ。三人で集まってたら何か盛り上がっちまってさ、いっそ日本人女子連盟でパジャマパーティーしよーぜって事になったんだよ。お前ら全員、ちょうど上がり時間が重なったみたいだったし、そんなチャンス滅多にないだろ?」
「はぁ……」
困ったものね、と溜息を零した千鶴であったが、ここで怒って追い出してしまうほど、彼女も冷淡ではなかったらしい。
「あ、リドウだ」
千鶴が少し目を離した隙に、大切に立てかけてあった写真立ての存在に恵子が気づいたらしかった。
「あ、ちょっと!」
そこまで気を回していなかった千鶴は、頬を染めながら恵子の元へ駆け寄るが、友人との日常で闘気を用いないと己に戒めてる千鶴は間に合わず、三波も写真立てを覗いて騒ぎ立てる。
「すっご! なにこの超絶イケメン。これが例の若様!?」
「びびるだろ? あたしも最初会った時はびびった」
「すっごーい。一条と並んでんのに全然見劣りしないわね、この人。ってゆーか、なんて素敵な微笑み♡ こんな風に笑いかけられたら、私一発で恋に落ちちゃう♡」
「どれどれ……おー、写真写りまで超絶にいいな、あの人。一条もまー、幸せそうに腕組んで笑っちゃって」
「千鶴もさ、もう少し普段からこうやって素直に笑ってれば可愛げがあるのにねー」
写真立てを囲んで勝手に盛り上がる三者に、千鶴は少し手前で顔を引き攣らせて手を伸ばしながら立ち尽くす。
「あんなのどうしたんですか?」
「……桂木くんがデジカメ持ってて、リリステラさんがお作りになったプリンターもあったから、リドウが出て行く前に撮っておいたのよ」
「目敏いですね。でも千鶴さんらしいです」
何はともあれ、こうしてパジャマパーティー・イン千鶴ズルームが始まった。
「栗崎さんは? 参加しないのかしら」
「行ったけど居なかったんだよ。大方、水瀬の部屋でしっぽりいってんだろ」
「そう。羨ましいことね」
千鶴は特に何とも思っていない様子で相槌を打ちながら、備え付けの魔法な冷蔵庫に歩み寄り、中からお酒が入っていると思しきビンを取り出して、一同へ見せつけるように掲げる。
「生憎と、晩酌用にお酒しかないわよ、この部屋」
「だから何でそうもいちいちカッコつけなのよ、あんた!」
きーっと憤る三波。
「グラスが足らないわね」
「無視すんなー!」
「あ、私お酒はちょっと……」
愛奈が困った様子で両手を胸の前に上げた。
「んじゃ、ついでにノンアルコールのジュースでも一緒に貰ってくるわ」
そう言って、果歩はいったんフェードアウトしていった。
「段取り悪いわね」
「勢いで行っちゃわないと、あんたとか冷静に拒否りそーだったし」
「今夜だけ、特別ですからね」
残った四人は、椅子の数も足りなかったので、カーペットの上に載っていたテーブルを移動させ、即席の宴会場にする。
「私もそれでいいわ」
千鶴が手酌でお酒を注ぐのを見て、三波が言った。
「あたしもー」
黙って三波へグラスを差し出す千鶴は、呑気に挙手する恵子に驚いた様子を見せる。
「あら、お堅いあなたにしては珍しいわね」
「んー、どうせもう繰り上げちゃえば二十歳だし、いっかなーって」
「別に止めはしませんけれど、初めてでしょう? 舐める程度にしておきなさい」
「はーい」
どこかわくわくした様子でグラスを受け取った恵子は、試しに一口。
「からっ」
途端に、うえーと舌を出しながら顔を顰めてしまった。
「辛いってゆーか、甘いのに舌と喉がぴりぴりするんだけど、これ……」
「これ、かなり強いわよね」
同時に飲んでいた三波が、こちらは平然とした雰囲気で言った。
どうやら、こちらの世界に来てから今までの間に、それなりに経験を積み重ねていたようで、飲み慣れているらしい。
「ええ。最近は潰されて終わる事が少なくなってきたせいで、戦闘の興奮が醒めなくてぱっと寝つけない時があるから……」
あまりにも物騒な理由だった事に、三波だけは大いにドン引きしていたが、愛奈は曖昧な愛想笑いを浮かべるだけだったし、恵子は既に何とも思っていない様子だ。
「そういう時に睡眠薬代わりにしているだけで、だらだらやるためじゃないもの」
「やっぱあたし、やめとくわ」
と、恵子は顔を歪めたまま、グラスを床に置いた。
「それで、わざわざこうして改まって、一体何をお話するんですか?」
「女子会って言えばー」
「恋バナ一択に決まってるでしょ!」
ねー、と顔を見合わせる恵子と三波。
「そういえば、愛奈ちゃんって結局、シャイリーとはどうなっているのかしら?」
「え、えー!?」
ずばり直球な千鶴に、愛奈は思いっきり動揺してしまった。
「べ、別に私とシャイリーさんはそんなんじゃ」
「今更誰も気づいてないとでも思ってたの? もしかして」
「け、恵子さん……そんな本気で驚いた顔しないで下さいよ……」
あう、と頬を染めながら俯いてしまう。
「いいわよねー、高坂は。その可愛いお顔で、その胸があれば、大抵の男はイチコロでしょ」
「朝霧、触らせてもらった事ある? これマジで感触凄いわよ」
恵子が、愛奈の胸を横からつんつんと突きながら言う。
「へー。私も触ってみていい?」
「別にいいですけど……」
愛奈は不安なのか、躊躇いがちに許可をすると、三波は遠慮なしに堂々と正面から愛奈の胸を両手で鷲掴み、むにゅむにゅと揉みしだく。
「うわっ、本当に柔らかーい」
「パジャマでノーブラだから、余計に凄いわよねー」
と、三波から右側を譲ってもらった恵子も感触を確かめながら言った。
「ってか、前より大きくなってない?」
「いえ、そんな事は……」
「大きくなったわよね?」
凄まじく冷たい声音に、愛奈は冷や汗しながら愛想笑いをする。
「じ、実はちょっとだけ……」
「……今サイズ幾つ?」
「…………」
恵子のじとーっとした目から、愛奈は気まずそうに視線をそらした。
「教えなさい!」
「そーだ、教えろー!」
「きゃあっ。千鶴さん助けて下さいよー!」
二人から押し倒された愛奈が涙ながらに千鶴へ助けを求めるが、そちらは微笑ましげに自分たちを眺めながら口元で優雅にグラスを傾けていて、助ける気はゼロらしかった。
「や、やめ」
「ほら白状しろー!」
もみもみもみと、二人はとてつもなくイイ笑顔で手を動かす。
「ち、千鶴さーんっ」
「ふふ」
千鶴はそんな三人を微笑ましそうに見るばかりで、やはり愛奈を助けるつもりは無いらしい。
「ってゆーかさ、その余裕な顔なのも結構むかつくんですけどー」
「あら、そう?」
「そんな立派なもんを持ってるあんたはそりゃ余裕でしょーよ!」
「そ、そんな泣いてまで訴えるような事かしら……?」
三波の指摘にも余裕の微笑をキープな千鶴に、恵子が涙ながらに叫んだ事で、千鶴も正直若干引いた。
「何だかんだ言って、やっぱ一条もおっきいわよねぇ……今幾つなの?」
「ひみつ」
何で答えなきゃいけないのよ、と思いながらも、外面は冗談めかして誤魔化そうとする辺り、本当に丸くなったものである。
が、三波は納得しなかったようで、じっと千鶴の全身を上から下まで眺めた後、
「……ちょっと失礼」
と、千鶴の正面に膝立ちになり、彼女の腰の両端を手で掴むと、バスローブでゆったりと隠されていた部分がきゅっと本性を現した。
瞬間、三波の顔が盛大に引き攣る。
「……身長くらいはいいでしょ?」
「176センチね」
「…………ちなみに、体重訊いたら教えてくれる?」
「嫌よ」
「けちー」
ぶぅ、と頬を膨らませる三波をよそに、恵子が自分の胸を手のひらで押さえ、そこへ目線を下げながらぽつりと言う。
「サイズアップのための努力は色々してみたんだけどなぁ……」
「男に揉まれると大きくなるってよくゆーわよね」
「ただの俗説じゃないんですか?」
愛奈が、別に揉まれた事ありませんし……という心の声を隠しながら言った。
「恋愛感情の促進や性感が刺激される事で女性ホルモンの分泌が活性化されるから、とは言われているわね。他にも、一度太ってから痩せたら胸のサイズが上がった、という話も聞くわよ。こっちの方が信憑性は高いと思うわ。結局は脂肪の塊なのですから、上手に痩せられるなら、ありえなくはないのではないかしら」
「それは……」
「説得力がありすぎるわね……」
千鶴の台詞に触発された恵子と三波は、凄まじい目で愛奈の胸元をガン見する。
「あたしも一度、太ってみようかしら……」
恵子はかなりマジな様子で呟いた。
「体質もあるでしょうから、止めた方がいいわよ。大体あなた、減らなくていい部分から減っていくタイプなのでしょう? それに、あまり太り過ぎてから急激に痩せると、皮が余って大変な事になるという話ですし」
恵子が本気で言っているのかと心配になった千鶴が、内心少し焦りながら言い、更に愛奈も控え目な口調で付け足す。
「私もおすすめはしませんよ。今考えると、太ってた時って、色々と身体に負担が掛かってた気がするんです。太った身体であんな訓練してたら、たぶん膝壊しますよ」
「うーん……」
「大きくなったらなったで、肩こりますし。これ本当に大変なんですから。ですよね、千鶴さん」
「ごめんなさい、愛奈ちゃん。今のところ肩こりとは無縁なの、私」
「えー!? そのバストサイズでですか!?」
どうやら、愛奈が肩こりで苦労しているのは本当のようで、本気で羨ましそうに千鶴を見ている。
「ええ、鍛えてますもの」
「鍛えると肩こりにならないんですか?」
「細かい蘊蓄は省きますけれど、要するに肩甲骨辺りから胸部に掛けての筋肉全般が発達していれば肩こりにはなりにくいわよ」
「私も鍛えます」
両手を胸の前で握り締めながら真剣な表情で、しかも考える素振りすら見せない速攻で宣言した。
「今度、どこをどう鍛えればいいか、詳しく教えてあげるわね」
「はい。お願いします」
「胸も鍛えたら大きくなればいいのに……やっぱ太ってみよーかしら」
「ばか。リスク高すぎるでしょ」
「と言うか、お互い今の生活を繰り返していて太れと言うのは無茶ではないかしら」
「そーなのよね。この前サリスさんがしてくれた健康診断の時の数値、あたしも胸以外のスタイルは日本に居た頃よりもちょっと良くなってたし」
「羨ましいやつ……。つか、麻木も言うほど小さかないわよねぇ」
「ギリでCからちっとも増えないんだもん。Eか、せめてたっぷりDくらいが理想よねぇ」
「何を贅沢言ってるかなこのおバカさんは!? 麻木も結局は持ってる側なのよっ、この勝ち組どもめ!」
などと、自称負け組が一人で嘆いた頃、物資の調達を終えた果歩が戻ってきた。
「おー、何やら盛り上がってるなー」
「お帰りー」
手をひらひらさせて迎える恵子。
カーペットの上に座り込んだ果歩はジュースの入ったビンを床に置くと、千鶴の傍に置いてあったお酒の方へ手を伸ばした。
「先生には内緒な。頭堅いから、あいつ」
と、悪戯っぽく言いながら手酌で注いだそれを軽く一口呷ると、「お、いける」と笑ってから話を切り出す。
「で、勝ち組云々って、顔の話か?」
「スタイルの話。でも結局、最終的にはそれなのよね」
三波は盛大に嘆息しながら応えた。
「愛奈も本当に可愛くなっちゃったわよねー」
恵子が感心した風に愛奈を見つめて言った。
「そ、そうですか? そんな大した事ないと思いますけど……」
「あー、あんた昔が昔だからしょーがないかもだけど、そーゆーの、止めといた方がいいよ」
「え?」
「ねえ、千鶴」
疑問の表情を浮かべる愛奈であったが、問われた恵子は千鶴へと同意を求めた。
すると千鶴は、口に付けていたグラスを置いて、
「まあ、そうね」
と、小さく笑った。
「あまりこうして自分で口にしたくはありませんけど、私たちが謙遜しても嫌味にしかならないわよ」
「その通りだな。ぶっちゃけムカつくだけだ。ハッキリ言われたら言われたでイラッとくるのも嘘じゃねーけど、お前ら別に、他人から指摘されなきゃ言いやしねーしな」
「私って何だかさー、別に大した事ないと思うんだけどー、何でか知らないけどー、男が勝手に周りに寄って来るのよねー」
果歩が大真面目に頷いたと思うと、今度は三波が、顔の横で手を翻しながら、やけに軽い調子でそんな事を言いだした――と思ったら、真顔に戻ってしまう。
「……とか、全然遠回しになってないモテ自慢されるよりは遥かに神経に優しいわよ、マジで」
「真面目な話、あーゆーのって反応に困るのよね」
と、今度は恵子が嫌そうな顔で言う。
「モテるんだねー、って素直に感心してるとさ、メチャクチャ攻撃的な眼で見られるの――」
は? 本当は私の事なんて大した事ないと思ってるくせに、よく言うわね。嫌味がお上手な事で。
「――みたいな感じで。ならどおせえっちゅーの? って思うわよ、ホントに」
「美人の宿命だな」
「大変なんですね……」
「そこまで可愛くなっちゃって、よく今まで女の妬み嫉みとは無縁でいられたもんね、あんた。それとも鈍感で気づけなかっただけかしら?」
「私が特別鈍感なんて事はないと思いますけど……」
この時、愛奈以外の全員が心の中で「いや、あるでしょ」と声を揃えていた事に、彼女自身は全く気づいていなかった。
「痩せてから先、主に一緒に居た女性って、ずっと年上でもうご結婚されてる人たちか、恵子さんと千鶴さんだけでしたからね。それこそ、このお二人はそういう感情とは無縁でしょうし」
「人に恵まれたな。女だけじゃなくて、男の方にも。若様とシャイリーくんじゃなかったら、とっくにお前……つか、お前らの人気を取り合って仲違いしてたろ」
と果歩が締め括った途端、三波が身を乗り出さんばかりに瞳を輝かせた。
「そーそー! 若様ってマジヤバくない? 正直めっちゃ好みなんですけど!」
と、皆の方を見ながら写真立てを指さす。
「私と競い合うおつもりがおありなら、尋常に受けて立って差し上げますことよ」
「め、眼が笑ってないわよ、一条、あんた……」
冷たい眼差しでニッコリと笑う千鶴に、三波は頬を痙攣させながら、手をひらひらさせる。
「そんな怖い顔しなくっても、誰もあんたと張り合おうなんて思っちゃいないって。たださ、不思議よね」
「何かしら?」
「あんたが未だに片想いなこと。二年近くも一緒だったんでしょ? それとも実はあんた、本人目の前にしたら押し切れないシャイガールだったりするわけ?」
「個人的には攻めて攻めて攻めまくったつもりでしたけれど――色々と難しい男なのよ、あれは」
千鶴は極めてつまらなそうな調子で、ぶっきらぼうに応えた。
「私の自惚れでなければ、好かれてはいると思うわ。けれども、最後まで自分からは指一本触れようともしてくれなかったわね」
「あんな『女の事なら俺に任せろ』みたいなルックスしてて、案外ヘタレな人なの?」
「そーじゃなくって、すんごくプライドが高いのよ」
と、恵子。
「いい意味で融通が利かないってゆーか……」
「頑固なの?」
「そーゆーとこもあるにはあるけど、そーゆーんでもなくって……」
「もし、あなたの足下を蟻が歩いているとするわ」
「はい?」
言葉にできなくなった恵子を見かねた千鶴が三波へと口を開いたが、三波はその言葉の意味が分からずに呆気に取られてしまっている。
「一億円……金貨一万枚を上げるから、その蟻を踏み潰せ、と言われたら、あなたはどうするかしら?」
「えー? そりゃ、いい気はしないけど、やっちゃうわよね」
「リドウなら一顧だにせずに拒絶するわ。一度己に定めたなら、どんなに魅力的だろうと、己のプライドが優先するのよ。彼の中には抱いてしまってもいい女とそうではない女があって、私はその条件を満たせていなかった……そういう事よ」
「何それ!?」
すっげー、と驚いた顔を見せた三波は、両手を組んでうっとりと見上げる。
「それで一条相手に毅然とした態度を取れる男なんて、マジで理想の恋人じゃん!」
「それがそーでもないのよね。基本、女タラシで、女ってのは口説いて抱いてやるもんだ、とか平気で言っちゃうやつだもん。付き合ったら付き合ったで、半端じゃなく苦労するタイプよ、絶対」
「何で? つまりはさ、一生女は自分だけ、って誓わせる事さえできればいーんでしょ?」
「へ……?」
あっさりと真理を突いてみせた三波に、そんな発想をした事が無かった恵子は唖然としてしまう。
「『俺に惚れたら火傷するぜ』って感じに若様本人が普段の態度でハッキリ意思表示してるわけでしょ? なら、付き合うなら最初からある程度覚悟しとかなきゃだし、自分だけを愛してほしいなら、そこまで惚れさせられない女の方が、その場合は悪いんじゃないの?」
「安易に女性寄り思考をしなかった公平な部分は評価しますけれど、あの男を相手にそれがどれだけ難しい、奇跡に等しい業か……分かってから口にしてもらいたいものね」
「そこまで?」
「まずはあのリリステラさんをあらゆる意味で上回らなければ始まらないでしょうね」
うぐっ、と息を詰まらせる三波。
「そりゃ確かにキツイわ……」
と、美の女神の化身かと思わせるパーフェクトな美貌を思い浮かべる。
「……その二人ってデキてるの? 一応さ、親子なんでしょ」
「いえ。直接訊ねるようなマネは流石にできなかったけれど、それは無いと思うわ」
千鶴が断言するも、三波の表情は疑問で一杯であったが、これに関しては恵子や愛奈もが、千鶴の意見に消極的ながらも同意を示した。
「ホントに? あの女神様が相手じゃ、義理の親子なんて関係、ぶっちゃけ何の枷にもならないと思うけど」
「実際、二人ともそれが枷になるとは思ってもいないと思うわよ。けど……」
「けど?」
言葉を濁す千鶴に、三波は興味津々な眼で続きを迫るが、千鶴は首を横に振った。
「……とても言葉にはできないわね。正直、私にもよく分かっていないと言った方が正しいわ。まともな神経をした人間にとっては、複雑すぎて理解できる範疇を越えるような関係なのよ、あの二人は」
「お前、まともな神経なんて持ち合わせてたのかよ」
果歩が茶々を入れると、千鶴はキツイ眼差しを送るのだが、喰らった方はしれっと受け流した。
「でもさ、一条ってこんなに喋り易かったのね。なんか意外だったな」
「喋り易くなった、の間違えだな。あの頃のこいつはマジで怖かった。こいつに対するイジメが無かったのはひとえにそのせいでしかなかったと思うぞ」
「言えてる言えてる」
「あの頃の千鶴は刃物みたいだったもんねぇ」
「それも妖刀な。観察力と推察力が頭抜けてっから、下手に陰で嫌がらせすれば、ソッコーで察知されて報復されそうな雰囲気をデフォで纏ってるもんだから、馬鹿な女連中も誰も手出しできなかったんだろ」
「そこまでゆーほど怖くはないと思いますけど……」
愛奈だけは控え目に否定しようとした。もっとも、他の面々から言わせれば、とても成功しているとは言えなかったようだが。
揃いに揃って貶されてしまった千鶴は無表情でグラスを呷っているだけで、何も言い返そうとはしなかった。
「な? 可愛くなったろ、こいつ」
「もしかして……拗ねちゃったの?」
え、やだ可愛い、と口元に手を当てながらニンマリと笑う三波と、余計な事を言った張本人を、千鶴は交互に冷たい眼差しで見つめたのだが、今の状況で二人が怯えるわけもなかった。
「って、こんな超絶お綺麗なビジュアルで普段はおすまし顔な女がたまに見せる可愛い反応とか最強じゃない!?」
気づいてしまった三波がまた騒ぎ始めた。
「可愛い仕草云々を論ずるなら、それこそ恵子ちゃんではなくって?」
「え? あたし?」
恵子はここで話題を振られるとは思ってもいなかったのか、心底意外そうに自分自身を指さした。
「あんた、あざと可愛い系じゃん。自覚無いの?」
「いや、別に計算してやってんじゃないんだけど、あたし……他人からしたらそんな風に見えんの?」
と、困ったように頭をかく。
「お前が計算してねぇのは理解してるぜ。本気でバカだからな、おめぇ」
「ひどっ!?」
「バカ可愛いからまだ許せるのよ、私はね。でも許せない女は絶対居るわよ、少なからず」
「そんな事言われても、無意識だし……まあいいけどね、八方美人に誰からも好かれたいとも思ってないし」
「あの……ちなみに私は皆さんから見たらどんな感じなんでしょーか……?」
愛奈がおずおずと手を挙げた。散々可愛いの云々と言われたせいで、自分も恵子のように、自分でも気づかない内に同性へ不快感を与えていたりするのだろうかと心配になったらしい。
その回答は見事に全会一致であった。
すなわち――ぶりっ子――という。
「ええ!?」
「ほら、そうやっていちいちオーバーリアクションですぐに瞳うるうるさせるとことか」
「そういう愛奈ちゃん、個人的にはとても可愛いと思っているわよ。けれども客観的に考えると、大概の女からはそう受け取られてしまうでしょうとも思うわね」
「あたしも千鶴と意見全く同じ」
「素直に可愛いと思ってられるのは、お前らが高坂よりもモテるからだよ。普通の女からすりゃ、お前ら三人の中じゃいっちゃんイラッとくるタイプだ」
「そ、そんなぁ……」
と涙目な愛奈であったが、それが要するに『ぶっている』と思われてしまう原因なのだと、天然な彼女ではどうしても理解できないようであった。
――この後も女子会はまだしばらく続いたが、恵子と愛奈が肉体的な疲労から限界に達し、いつの間にかうつらうつらと舟をこぐようになっていたため、そこでいったんお開きとなった。
途中、身体が乾いた千鶴はバスローブからベビードールという、これまた彼女らしいセクシーな寝間着に着替えていた。
全員が思わず目を向けてしまう中でも、平然と一糸纏わぬ姿になった千鶴に、そりゃそれだけのスタイルをしてりゃ、他人のスタイルなんて何とも思わないでしょーよ――と、胸回りやら腰回りやらと人によって内容に差異はあったようだが、何かしらを理由に揃って肩を落としていた。
千鶴は眠ってしまった二人を、彼女たちの自室まで連れて行こうとしたのだが、お泊り会でそれは野暮だと主張する果歩や三波によって、千鶴のベッドへ横に寝かせた。
すし詰めに近いような状態にはなるだろうが、元々ダブルサイズくらいの広さのベッドなので、これなら全員が横になるのも可能だろう。
すると、二人の身体を軽々とベッドまで運ぶ千鶴が男らしく見えたらしく、三波が目を擦りながらこんな事を言い出す。
「気のせい? なんか背景に白亜の宮殿が見えるんですけど?」
「酔っぱらったのかしら?」
「なんの。まだまだ宵の口よ」
「でも実際よ、一条がもーちょっと愛想良かったら、女子からも宝塚的人気があってもおかしかなかったと思うぜ」
「あら、それは勿体なかったかしら」
「お、意外な反応。てっきり『別に欲しくなんてないわ』ってクールに言い切るかと思ったわ」
「恵子ちゃんや愛奈ちゃんみたいに純粋で可愛らしい女の子から懐かれるのはとっても楽しいわ」
二人が沈没した事で椅子の数が丁度になり、カーペットの上に位置を戻したテーブルを囲みながら、静かに酒を酌み交わす三人。
お酒があるだけかもしれないが、比較的大人な雰囲気を漂わせている気がする。
いまいち子供っぽい部分が抜けきらない恵子や愛奈がこの雰囲気を醸成するのは失礼ながら難しそうだ。
しかし、たまたま会話が途切れた時、三波が少し重く感じられる口調で言い出した。
「ねえ、一条。麻木と神崎くんって何かあんの?」
「そう言えば、まだお礼を言ってなかったわね」
「は?」
「話を合わせてくれたことよ。ありがとう、朝霧さん」
「とりま、あんたがどーしてもそこから話題逸らしたかったみたいだったからさ。いちいちソコに話題が行かないように誘導してくれるんだから、流石に判るって」
三波は更に、ぐっすりおネムなお子ちゃま二人じゃあるまいし、と手を翻した。
「恵子ちゃんには絶対に内緒よ?」
「いいわよ。今思うと、この前の『あの男』って神崎くんの事だったんでしょ? わざわざそこに絡みそうな部分だけ英語で喋ってたのも、そーゆー事だったんじゃないの? やけに慎重よね」
「私ね、恵子ちゃんと神崎くんを別れさせたいのよ」
千鶴はすぅっと細めた眼差しでどこともつかない場所を見つめながら、冷ややか極まりない声音で言った。
思わず目を見開いてしまう三波であったが、果歩の方は平然としたもので。
「今でも自然消滅したようなもんだろ」
「でも、恵子ちゃんは未練があるのも判るでしょう?」
「未練ってより、何かありゃ強迫観念って感じにしか思えねーけどな。少なくとも心の方は完全に神崎から離れちまってるだろ」
「そこなのよ」
と、千鶴は深く椅子にもたれて腕を組み、顎を摘む考える仕草を取りながら果歩を見つめる。
「山中さんはどう思うかしら?」
「分からね。かなり厄介な内面をしてるのは日本に居た頃から何となーく知っちゃいたけど、細かくは何とも。お前は?」
「同じね。おそらく家庭環境か、何かしら過去の出来事によるPTSDに近いものと見てはいるけれど、迂闊に抉るようなマネは怖くて、とても……」
二人の会話について行けない三波は、両者の間で戸惑った視線を右往左往させている。
「え? あの能天気に何かあるの? つか、神崎くんにも問題あるの?」
三波は、眠る恵子を刺激しないようにと考えたのか、身を乗り出し気味に小声で二人へ問い掛けた。
「あっちは問題だらけだろ」
「は? お勉強できてスポーツ万能で誰隔てなく優しいイケメンじゃん。ぶっちゃけクオリティ高すぎて胡散臭いなぁ、とか思った事もなくはなかったけどさ」
でも本当に優しかったから、そんな僻み根性を発揮する自分の方が嫌になった、と気落ちした様子で言った三波であったが、果歩はその直感の方が正しかったのだと言う。
「バーカ。おめぇ。ありゃホストになったら、搾れるだけ搾り取った女をソープに沈めて、馬鹿な女、って陰でおもっくそ嘲笑っちまえるタイプだぞ」
「うそ……?」
と、千鶴へも確認の視線を送る三波。
「そこまで言ってしまうのは流石に悪意的すぎるとは思いますけれど……」
遠回しに肯定する千鶴に、三波は言葉も無く口を半開きにしてしまう。
「あんな男と恵子ちゃんが結ばれるなんて断固阻止よ」
「基本的には同意するけどよ、自分が認めた男じゃないと許せねーとか、お前はあいつの母親か?」
「似たような気分ではあるわね。リドウと一緒に二年も保護者やってましたから。可愛くて可愛くて仕方ないのよ」
と、呆れ顔の果歩に対して、頬を緩めながらグラスを呷る千鶴であったが、上品に少しずつ口にしていた今までとは違い、残りを一気に全て飲み干してしまった。
「ん……私もそろそろ寝るわ」
「あたしらまだ起きてようと思うけど、お前、気配とか大丈夫か?」
ダメそうなら部屋を変えると言う果歩に、千鶴は、お泊り会でそれは無粋なんでしょと微笑んで言う。
「最初から私の意識領域に居てくれたなら、よっぽどの大声でも出されない限りは大丈夫よ。ただ、部屋の中の気配の数が変化したら問答無用で反応してしまうと思うから、この後の出入りは控えてくれると助かるわ」
「了解。付き合わせて悪かったな。本当は疲れてたんだろ?」
「いいえ、楽しかったわ。たまにはこういうのも悪くないわね」
優しい笑みを浮かべながらベッドの方へと歩む千鶴を黙って眺めていた二人であったが、千鶴が穏やかな寝息を立て出したのを知ると、会話を再開させた。
「流石はモノホンのお嬢だな。ちょっとした立ち歩き姿すら気品があるっつか、様になってて目を奪われる」
「あいつお嬢だったの? 本人は一般家庭だったって言ってなかった?」
「大企業の社長令嬢とか、何代も続いた何たらの家元とかじゃねーのはホントだけど……あいつの日本でのお稽古事の種類と数知ったらびびるぜ。それだけで普通のリーマンだったら給料の大半が吹っ飛ぶ。ホントに一般家庭だったら無理だって」
「さっすが情報通」
「勝手に耳に入ってくるんだよ。ちなみに、父親は現役の医学教授。母親はパリコレも歩いた元トップモデルで、今じゃデザイナーとして世界で活躍中」
「血かー」
「サラブレッドの典型には違いないだろうな。あんま羨ましかねぇけど」
「どして?」
「あのタッパに運動神経だろ? あいつが入学した時、バスケ部やらバレー部やらがしつこく勧誘したんだけど、月金で放課後は華道、書道、バレエ、薙刀×2。それ以外にピアノが週四。それ聞いて先輩たちも引かざるを得なかったと。それで成績はアホかと思うほどだぜ。寝てる暇あったのかと本気で疑うレベルだぞ」
「自分がそれ押し付けられたら絶対グレる自信あるわね」
「他の全てを犠牲にしてそれだけこなしてのあのクオリティなんだよ。まともな神経してりゃ、知ればイチャモンつける気は失せるだろ」
「まともじゃない神経だったら?」
「自分だってあいつと同じに生まれてりゃ負けないはずだ――って妬むだけだろうな」
「そのくせ、遊びは遊びで同時にこなしたいって根性なのよね、そういう女って」
「だな。リアルにあいつと同じだけこなせなんて言われたら、普通の女じゃ間違いなく心折られてる」
真面目な顔で語る果歩に、三波はニヤリと唇を歪める。
「それにしても、随分と評価高いじゃない」
「ま、昔はともかく、今は純粋に尊敬してられっからな。ホント、可愛くなっちまったもんだよ」
と、果歩は、いつの間にやら愛奈を抱き締めるようにして眠る千鶴へと視線をやった。
「やっぱ、あいつがあんなに可愛くなっちゃったのって、例の若様のせい?」
「麻木や高坂の影響もあるだろうけど、大部分はそうだろうよ」
「会ってみたいなー」
今からその時を想像してうっとりとする三波であったが、
「似た者同士なんだろうな、結局」
「え?」
唐突にすら思える果歩の言葉で我に返った。
「一条と若様の話。お前が来る前は桂木と一緒に居る事が多くてな、どんな育ち方したらあんな男が出来上がるのか、そん時に興味本位でシュリちゃんに訊いたんだよ」
「で?」
「ま、一条と似たようなもんだ。ただし、過激さって意味じゃ遥か上を行ってる。そりゃ一条だって敵わねーのもおかしかねぇ。一条を落とせるとしたらどんな男か、昔は想像すらつかなかったけど、何の事はねぇ、あいつもただの女だったって事だな」
ここは果歩も少し誤解をしていた。千鶴の場合、単純に好みのタイプだったリドウが、ついでに自分よりも格上と素直に認められる男だっただけなのだが、果歩がそう判断してしまったのも無理はなかった。
「ああいう人間離れしたメンタルの持ち主じゃねーと、この世界じゃ強さの極みにはそうそう達せねぇんだよ。いや、自分に甘えを許さずに鍛える事が本当にできるのは、結局はある種のイカレた神経をした連中だけなんだよ。特にここの修業は人道なんて言葉を完全に置き去りしてるんだから、尚更だ。だからさ、朝霧」
「……何よ」
思わせぶりな果歩。その後に続く言葉に予想がついてしまった三波は、警戒した様子で問い返した。
「大島のこと、嫌いになってやるなよ」
果歩は優しい声音で言った。
その台詞が三波へもたらした反応は、俯き唇を噛み締めるというものであった。
「いい感じだったんだろ?」
「そ」
「しっ」
思わず声を大きくして言い返そうとしてしまった三波へ、果歩は口の前に指を立ててみせた。
三波はあっと口を開けながら眠り続ける三人の方を見るが、幸いな事に目を覚ました様子は無く、ほっとしながら改めて言葉を口にする。
「そうよ。……そうだったわ」
三波はわざわざ過去形にして言い直した。
「あいつ、何にも要求しようとなんてしないで私たちを助けてくれてた。落ち込んでたら慰めてくれてさ、超いい奴、って。凄く頼もしかった。なのに……ここに来たら……」
段々と声が涙ぐみ始めてしまって、なかなか続きが口から出て来ない。
見かねた果歩がおもむろに口を開き、三波の心の声を代弁する。
「侍女長さんたちに夢中なのじゃねーんだろ? 諦めちまってるのだよな」
「……そ」
ごく短く、息を吐いただけのような声で、顔をそらしながら肯定した。
「一条も高坂も、麻木だって、頭おかしいんじゃないかってくらい頑張ってるじゃん。私らもうすぐ二十歳よ? 日本に居て普通に進学してたら、今頃オールで遊び三昧よ? なのにあいつら、こんな時間で疲労に耐えられなくって眠っちゃうくらい頑張ってるのよ? なのにあいつ、寛治には力があるのに……修業見学しただけで顔真っ青にして、無理、の一言よ? 情けないと思わない?」
三波は友人の同意が欲しいのか、救いを求めるように問いを重ねたが、問われた果歩はゆっくりと首を横に振る。
「だから、無理なんだって。それを強制できる資格は、少なくともあたしらにはねぇよ。お前がそんなだから、大島の野郎も気まずくて、雨宮と一緒になって侍女長さんたちの尻追っかけて時間潰してんだろ。いいか? あいつらは特別なんだ。魔王様たちや若様側なんだよ。そこをまずきっちり認識しろ」
「一条は分かるわよ。でもじゃあ、麻木や高坂まで最初からそうだったとでもゆーわけ?」
「そりゃねーけどよ」
三波の目が、それ見た事か、と無言で語るが、果歩は怯んだりしなかった。
「最初は憧れでしかなかったんだろ。けど、そういう生き方がこの世には存在できるって実物を常に目にしてきた。才能だけじゃ圧倒できねぇ敵とも戦わざるを得なかった。話変わるけど、お前や雨宮だって、少しでも大島の力になろうって努力はしてきただろ?」
「そりゃ……まあ……」
「その尺度が、若様が基準のあいつらと、大島が基準のお前とじゃ違いすぎるんだよ」
「か」
「しっ」
また大声になりそうだったところを、危ういところで果歩の制止が遮った。
三波は気まずそうに目を泳がせるばかりで、言葉を口にしようとはしないでいる内に、果歩がニヤリとした意地の悪い笑みを浮かべたのを見て、うっと目元を引き攣らせる。
「寛治を悪く言わないでよー、ってとこか?」
「べべべ別に」
「ツンデレか? ちっとも誤魔化せてねーからな、それ。ま、そういう事だ」
「は?」
「大島を他と比べてやるなよ。ありゃいい男だぜ。神崎なんかよりゃ遥かにおすすめできる」
三波はぶすぅっと唇を尖らせるだけだった。
「それと、若様と会えたとしても、くれぐれも若様と大島を比べるような発言はよしてやれ。特に喧嘩になった時とか。あんな存在自体が反則みたいな男と比較されたら大島が哀れだからな。他にもザイケンさんとかシャイリーくんとかラヴァリエーレさんとかガルフさんとかクリスさんとか」
「多いわね、反則」
「本気で好きな男が居なけりゃ、目移りして当然ないい男ばっかだろ、この城」
「同意。もっとも、女の人もなのが困りものだけど」
「だな」
と、二人はしばらくぶりに笑みを交わし合った。
結局二人はその後も一時間ほど平然と酒を飲んでは、尽きる事なく会話を続けていた。
三波も男子二人と一緒に、比較的不自由はしないで暮らせていたらしいが、やはりアルコールに頼らざるを得ないような時もあったのだろう。そのせいで大分強くなってしまっているらしかった。
比べると果歩は、お堅い教師と一緒だったせいで、ルスティニアに来てからは殆ど飲んでいなかったはずなのに、やはり平然としたものであった。
元々の体質もあったのかもしれないが、日本に居た頃にどれだけヤンチャしていたのか窺える。
しかし、明日の仕事に差し支える程の深酒にはしない内に寝ようと判断してしまうあたりが、まだ若いというのに、お互いにルスティニアに来てから苦労したのであろうという面影を忍ばせていた。
ちなみに千鶴さんの公式プロフィール数値は176cm、58キロ、96(G)・61・86となっております。
割と体重あるなと思われるかもしれませんが、千鶴の体格で50キロ割るようなモデル体重だったらまずまともに闘えません。筋肉って重いですから。闘気頼りになるのは恐ろしいと思っている千鶴は自力も超鍛えています。これは彼女的に美貌と戦闘力を秤に掛けた時の本当にギリギリの数値となっております。
ちなみに、愛奈の胸囲自体は千鶴と殆ど変りません。愛奈は小柄なのでアンダーも小さいのです。
恵子については彼女の名誉のためにもノーコメントで。




