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第一章 三幕 Grill&Tongue

一本の電話が鳴り、蛇の思考は回転した。

「はい・・」

「タンだ・・怪しい動きをしたらウェザードを殺す・・・状況は把握できたか・・」

「・・あぁ・・」

「ナインポインツへ向かえ・・一人でな・・」

・・・

「分かった・・」

言い終わる前に電話は切れた。

ウェザード・・元ブルーイナフの6番目。

サーティーンと同じ戦闘タイプの能力・・生粋のガンファイター・・舌を切られた仲間。

清春にはまだ伝えないでおいた方がいいだろう。昔の仲間が捕まった何て聞いたらな・・まだナインポインツの力関係も知らないだろう。

「悪いがタイムアップだ。詳しい話は副社長から聞いてくれ。」

ホイルスピン・・・

工場で会った時は目を疑った。ブルーイナフの悪魔が思慮深く悲しい目をしていた。俺は初めて清春に会った時、目を見て思った。殺される・・

だけど、お前は変わった。ブルーイナフの仲間がお前を狂気の呪縛からといたんだと、俺は勝手に思ってる。俺も何回もお前に救われた・・そういえばあの時の彼女とはどうなたんだ。久しぶりに会ったってのにビジネスの話しか出来なかった。「俺が結婚・・そんな冗談笑えねーな。」なんて最高の助言を鼻で笑いやがって。いつもは音楽やエンジン音が俺を落ち着かせたが今は違う。車内はやたら静かだ・・速度は80マイル・・林道を抜けハマ湖が見えた。「綺麗だ・・」運命に流されるのも有りって思えるくらい・・だが運命は予測を裏切る・・今日は久しぶりに第六感と蛇の思考が一致した・・

俺は今日・・死ぬ・・

おもむろに携帯を取り・・

「俺だ・・今日は帰らない・・」

「・・あなた・・」

「最後にエリカの声を聞かせてくれよ・・」

キャッチ・・タンの番号。

「せっかちな奴だ・・じゃあな・・元気で・・」

ピッ・・

サイドミラーに黒塗りのベンツがうっすら写る光漏らし・・追尾。

「車を林の中に止めろ・・」

また切れた。タンてのは舌足らずのことなのか。キャデラックの車体を擦りながら林道の中を進むと湖の浜辺に着いた。

ピッタリとくっついて着ていたベンツの止まりヘッドライトを向けたまま運転席側のドアが開いた。愛銃=デザートイーグルを両手で握り息を潜める・・バックミラーに写るタンの姿・・

「清春・・いくらお前でもこいつはきついかもな・・」

2メートル以上ありそうな大男・・スキンヘッド・・片手にはショットガン・・俺が握る銃ぐらいに見える・・歩み寄る。

唾を飲む・・タンの気配に飲み込まれる。

・・助手席に人影・・ウィザード・・抉れた横顔=キレる

「タン!くたばりやがれーーー!!!」

振り返りざまの連射・・キャデラックのガラスごと打ち抜く45口径・・7発中5発HIT。息を切らす蛇・・ドミノの様に倒れた大男・・でかいため息。

「クソ・・愛車に穴が開いちまった・・」

あとはスキンヘッドに一発喰らわすだけ、六感やら思考やらは大きな勘違いですむ。撃鉄を起こしキャデのドアを勢いよく開け、湿っぽい土に足を付けた。

ドォーン・・ガッシャ・・

12ゲージショットシェルの炸裂音・・リロード。

「あぁぁぁぁ・・ッファック・・」

蛇の悲鳴・・吹っ飛んでいった左足・・転がり落ちながらタンに銃を向けた・・

ドォーン・・ガッシャ・・

機械の様に正確に、戦闘に関してタンは何枚か上手だった。

無くなった右手とデザートイーグルを見ながら言葉にならない叫びを上げ土砂をのた打ち回っている・・踏み潰された蛇のように。さらに追撃・・残りの足も吹っ飛ばした・・

リロード。防弾着にへばり付いた弾を払いながらも、何事もなかったかの様な無表情・・もがく蛇を上から眺めながらショットガンを突付けた。

「グリルが呼んでる。来てもらうぞ。」

蛇は痛みで震える声を出した。

「カミングアウトしてやる・・」

無表情に見下ろすままだ。

「俺はこう見えてMなんだ。てめーはいたぶらずに殺してやるよ。」

ニヤリと笑い。ショットガンを振りかぶり顔面へフルスイング・・強制的に意識を飛ばされた。タンは忠実にグリルからの指令を全うし最後にキャデラックにウィザードを乗せ湖に沈めた・・・


翌日



「スネークか。」

朝っぱらからの着信音。十数件の履歴=メッセージ。投げ捨てたい衝動に駆られながらでてみると甲高いセブンの声・・

「俺だよ。七つの頭脳を持つ男。セブンだ。」

「はぁ・・朝からお前のテンションはさすがにきついな。」

「何言ってんだ。もう11時だぞ。」

マジだ・・

「ていうか、スネークが電話にでねーんだ。」

「おいおい、てめーは今頃思春期かよ。スネークが電話にでないぐらいでなんなんだよカマ野朗。」

「てめー・・タンのことは昨日話したよな。俺の作った携帯には発信が着いてるんだ。タンはグリルの右腕だ」

「グリル。オルガニズムのトップ。ナインポインツのイーストダウンタンの支配者か。」

「以外と知ってるじゃねーかよ。なら、話が早いそのビルの一角からスネークの携帯が電波を発してる・・分かるか。」

「さらわれたのか。」

「恐らくカートルームで別れたあとすぐに。さっきスネークの奥さんだかなんだか来て、昨日の夜、最後に娘の声を聞かせてくれって電話があったそうだ。だから早く会社に着てくれ。」

こいつ切りやがった・・発信機、よりいっそう投げ捨てたい騒動に駆られたが、スネークのことが気になる。会社=スネークヘッズのアジトだが場所は知らない。

P`P`P`・・メールだ。アジトまでの地図が添付されていた。「はいはい・・ったく気が利くこった。」

スネークが支配する街。にぎやかでいいがスラムみたいな赤レンガが並ぶ中心街。ストリートチルドレンがうろつき、中年はうなだれている。ここで息を吹き返すのは若い奴らだけらしい。ボロ車で通り抜けるメインストリート。引ったくり、かつ上げ、売人が視界の中に横通る。

「はっ。ミホ。」

車を止め・・フリーズ。

「えっ・・清春・・」

工場に入る前、俺はミホと一緒に住んでいた。ミホは澄んだブルーの瞳で少女の様な笑顔をしている。ナインポインツの一つ・・元だが・・ウエスト・ウッド・ウィッチのメンバーだったらしいが、俺はその頃を知らないがミホの左腕にはWWWのタトゥー。その時の通り名はBrutal Witch・・残忍な魔女。

いきなり殴られても当然なことをした俺にいつもの笑顔で接してくれた。

「清春。何処行ってたの。いきなり帰ってこないんだもん。」

俺はそれに答えられなかった。やっと自分の探してた答えが見つかった・・とは言えなかった。ミホとの生活・・このまま一緒にいればきっと・・。だけど俺の求める女神との約束は果たされぬまま。

「悪い。ミホは何してんだ。」

「私は・・サイレントキラーの魔女狩りって知ってる。」

サイレントキラーの魔女狩り・・ブルーイナフと並ぶ、噂の事件。ウエスト・ウッド・ウィッチのメンバー38人・・惨殺された36人のバラバラにされたパーツがブラットバンクにまかれていたって話。生き残ったのはミホと、バラバラのパーツを組み合わせても出て来なかった、消えたもう一人の女。と、されている吐きたくなる様な事件。

「あぁ、噂で聞いてたけど。」

「犯人を・・追ってるの。」

「はっ。そんなの警察にでも任せておけよ。」

「・・・私は友達を殺されたの・・この辛さが清春なら分かるでしょ・・あっ・・ごめん。」

一瞬、人形の様な冷たい顔をしたが、謝る姿はいつものミホだった。

PPP・PPP・PPP

携帯が鳴っていた。こんな時に・・ミホは驚いた様子で言った。

「携帯待たないっていってたくせにぃ。」

「あっ。これ、仕事で一時的に持たされてるだけ。」

「ふーん。」

ピッ・・セブンの怒鳴り声。

「清春。そんなトコで何やってんだよ。早くこいよー。」

ピ・・GPSめ。

「えっ・・いいの。」

クスクスと笑うミホ。「ちょっとかして。」俺から携帯を取り打ち始めた。

「はいこれ。私の番号入れといたから。いつでもかけてね。」

PPP・PPP・PPP・・

「お友達呼んでるよ。」

「お友達。こいつが・・吐き気がする。」

「はいはい・・やっと出来たお友達でしょ早く行ってあげなよ。」

「だから・・」

ミホは俺を車に押しこみながら

「もしも・・犯人追ってて危なくなったら、助けに着てね。」

「・・あぁ・・白馬の王子様とはいかないけどな。」

ボロ車をポンと叩いた。ミホはまた笑った。

「相変わらずセリフがくさいんだね。」

ミホといると調子が狂う・・くさいセリフのいい訳じゃない、ずっと抱えてきたものが軽くなり・・消えて無くなってしまいそうだから。

「じゃあ、またな・・」


PM2:00


「結局、着ちまったな。」

ブラックマンバのアジト。一つだけ浮いた24階建てのビル。一階には受付があり、ナインポインツ内ではめったに御目に掛かれないビジネスマンのポーカーフェイスが並ぶ。

「セブンに呼ばれてきたんだが。」

受付嬢は上目遣いで答えた。

「アポイトメントはお取りですか。」

アポを取るような男に見えるのか・・俺の態度と服装じゃ警備員に摘み出されてもおかしくない。見るからに軍人崩れの警備員が睨みを利かしピンマイクで連絡を取っている。伝言―伝言―伝言。受付の内線がなった「少々お待ちください」。受付嬢はうなずき。

「清春様。どうぞ、案内の者とあちらの社長室直通のエレベーターにお乗りください。」

ボディーガードが二名、同行しエレベーターは24階へ向かった。

ピンポーン・・

エレベーターが開き、真正面に立つ銀髪が手を広げながら歓迎。

「ウェルカーーム。」

こいつ・・酔ってやがる・・

銀髪のボディーを撃ち、酒が散乱しているテーブルに叩き付けた。

「ちょ・・ま、待て・・」

「いいか・・お前の酒くせー息を嗅ぎながらヒステリーに付き合ってられるほど暇じゃねーんよ・・。」

ボディーガードは警棒を抜いたが、首筋に突きつけられた酒瓶に戦意喪失した。

「清春。スネークと連絡が取れないのはマジなんだ・・くそ・・いってぇ」

腹を摩りながらヨロヨロとボディーガードに近づき「この役立たず共が、てめーらクビだ。」

エレベーターに蹴り倒し一階に送った。

「受付の女いたろ。あいつは俺の女だから手ぇだすなよぉ。最初はやりたくて犯したんだけどさー、今じゃセブン早く入れてって。哀願してくるようになってさー、調教のしがいがあるってもんだろ。」

「・・お前の頭ん中どうなってんだ。一分前には俺に痛めつけられて、スネークの話をし始めたんじゃないのか・・懲りない奴だ。」

ボキボキ・・拳を鳴らす・・分かりやすく安い威嚇。

「待て待て・・てめーは一日何回暴力で訴えるんだ。ったく・・着いてきな。」

連れられて入った場所は副社長室と書かれ、スピーカーからはザー、と雑音の様な音が流れ、何に使うか分からないが基盤やらガラクタが山の様に積んである。コレクションらしき棚・・ゴチャゴチャした机に・・7台のPC。

「これが7つの頭脳を持つ男の正体か。」

「7つの内に一つだぜベイビー。」

「はっ・・。」

よく見ると改造中の携帯が置いてあった。

「俺が持ってをのもこんななったんのか。」

「イエース。セブン特製モデルだぁ。暴力馬鹿にも分かりやすく説明してやるよ。」

「GPSの他になんか付いてんのか。」

俺は携帯をへし折るモーションをとった。

「ば・・ふざけんな・・いいか。まず、二つの専用ダイヤルからかけられる。1つはアクセスすれば周りの音を高性能マイクで拾うことができる。これはさっきからスネークにアクセスし続けてるが、目立った反応なしだ。」

「ストーカーかよ。当然、俺のにも付いてんだろ。」

「男のプライベートなんて興味ねーから安心しな。」

「もう一つはデータの消去。まだあるんだぜ。」

「もういい。で、スピーカーから流れてるこの音がスネークの状況を捕まえられるかもっってことだろ。」

「ご名答」って感じで、銀髪は指を弾いた。

「要するに、俺呼んだのはNBTの話は後回し。グリルの支配下に潜入し、007の様にスネークを連れ戻す。」

パチン・・「グゥッド。スネークはナインポインツの一角だぞ。捕まってたら警備体制も半端じゃない。かといってオルガニズムは話し合いにおおじる連中じゃない。殺り合っても頭を潰されたら蛇は終わりだ。」

「そこで、元工場作業員のおでましか。潜入のプロを雇った方がいいだろ。」

「元ブルーイナフのサーティーンだろ。ビジだ・・頼む・・スネークを・・助けてくれ。」

頭を下げる銀髪・・

「わーったよ。俺は高いぜビジネスマン。」

ニヤっと笑い

パチ・パチン・・「その調子だぜ。サーティーン。」

「実際問題、携帯があるってだけでスネークはそのビルにいるのかよ。」

「分からねー・・けど、手掛かりはこれだけだ。」

ガッチャ・・

「えっ・・」セブンと顔を見合わせた・・

確かにスピーカーから聞こえた・・

「そろそろ薬も切れる頃よね・・」

パン・・

「ん・・・く・・てめー・・・・俺が誰だか分かってんだろーな・・・」

スネークの声だ・・・「セブン・・」「シィ・・バイトしたぜ」

「始めまして・・・私がグリルよ。」




俺は視界を奪われていた・・

潰されたのか・・

パニックで妙な戯言をほざいたが・・ついさっき、俺はタンに・・

思ったよりも痛みはない。が、身体が寒い・・ここは何処なんだ・・

・・クソ・・

どうなってやがる・・・

・・グリル・・

パン・・頬に感じる二度目の衝撃

「早く起きなさいおデブちゃん。」

・・グリル・・

「・・目が覚めたぜ。まぁ、何も見えないけどな。」

「たいした度胸ね。さすがは元セカンドってとこかしら。」

声の方向に手を伸ばしたが空を切る・・感覚がおかしい。

「手も付いてないのに掴もうとしちゃってかわいいはねボーヤ。」

ちぃ・・

「グリル・・俺は第一印象で人の性格を見抜くのが上手いんだ。ギャンブルが得意でね・・ポーカーで勝つには見えない相手の心理を覗くことが重要だ。」

「へー。僕の性格・・当ててごらんよ。」

「お前は変態なエゴイスト、サディストなゲイで、人前に姿を現せないほど不細工な臆病者だ・・へへ・・当たってんだろ。」

腹を蹴る・・飛び散る唾液・・髪を掴み・・耳元で囁く

・・甘い香り・・この匂い・・どっかで・・

「君すごいねー当たってるよ。だけど、不細工と臆病者は違うな・・僕の姿を見た人は焼死体になる・・グリルの由来だよ。」

聞いたことがあった・・

「ナインポインツの奴らは口を揃えて同じ事を言う。グリルと会った絶対に顔は見るな。生きたまま焼かれるぞってな。」

「よく知ってるねー。」

甘い香りを漂わせながらこつんこつんと俺の周りを歩いている・・

「なら、早くお家に帰らせてくれないか・・かわいいアバズレが俺の帰りを待ってるんだ」

グリルの足音は止まなかった。その代わり高らかな笑い声が木霊した・・どうやら狭い所にいるらしい・・・逃げる気なんてさらさらないがな。

それまでしていた音が一切消え、冷たい銃口が突きつけられた。

「蛇の道は蛇・・殺りな・・」

「潔い子は嫌いじゃないよ。最後にいい事教えてあげるよ・・次の玩具は君の友達・・ブルーイナフの13番目してあげる」

「て・てめー俺の仲間にこれ以上手ぇだしたら・・」

倒れたのか最初からこうだったのか分からないが言葉を遮られた。乾いた炸裂音・・銃のスライド&薬莢の跳ねる音・・甘い香りと硝煙・・血の匂いが混ざり合う・・

思い出したぜ・・この香り・・蛇の道は蛇・・か。スネークと名乗った時からこうなることは覚悟の上だった。クソ・・俺は昔からあまいんだよ。大切なものを捨てない限り、俺はセカンドのまま・・ファーストに言われた言葉。ここが俺の限界かもな・・だけど、もしも願いが叶うなら、ブルーイナフの頃に戻りてーな・・楽しかったあの頃に。

ダン、ダン、ダン、ダン、・・

「くぅ・・だけどな・・清春・・まだ・・てめーはこっちに来んじゃねーぞ・・」

「しぶといねー」

ダン、、、カラン・・・


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