これが日常なのです。
だらだらとした男男交際の日常生活。 短編小説です。他のサイトでも公開していました。
「好きだ」
「……あぁ」
「愛してる」
「…………わかったよ」
「お前に言ってんだぞ?」
背中越しに囁かれる甘い声。
たとえ同じ男でも腰砕けになるであろうその美声の持ち主は、これまた期待を裏切らない美青年だ。
恋人である青年から告げられる言葉は、とても嬉しくはある。だが、素直に喜ぶ事が出来ない。
何故なら――。
ここは真昼間の高校であり、それも数学の授業中であるからだ。
勿論自習などではなく、今もとうとうと教師が公式の説明をしている。いちゃつく時間ではない。
しかも恋人である背後の青年はもとより、自分も『男』なのだ。
同性同士というあまり公に出来ない秘密の関係と点においても、今は愛を語らう時間ではない事は一目瞭然である。
「冷たいな。『オレも!』とか言ってくれてもよくない?」
「……」
「ねぇってば」
「――うるさいっ、いい加減にしろ!!」
我慢出来ずに怒気もあらわに小声で返す。
照れがあるため頬が紅く染まってしまってはいるが、背後にいる青年には見られる心配はない。
恋人の言葉なのだ。本音では嬉しくないはずがない。
それでも精一杯不機嫌そうな態度をとっていると、
「お前らいちゃつくなら休み時間にしろー」
教師からかかる声。
隠しきれない、2人の関係――。