第五章 六幕 堕落
「ねぇ、和也」
校庭の端、和也と里見は声を潜め、話す。
「どうした・・?」
「月島くんの様子・・おかしくない?」
里見が向けた指の先へと視線を移す。
「・・まさかっ」
「うん・・きっと」
二人は目立たぬようその場を去り、アマタの元へと小さく駆ける。
「せめて、加担していた親御さんだけでも!」
空太は強く抗っていた。
「反逆の加担者は死罪・・国命なのですよ」
雨脚が、更に強くなる。
「えぇ。それだけ上の人間も貴方達を脅威としてお認めになられている。・・それは誉れに思われてかまさない」
「・・」
「ですが、規律は規律。犬は犬。規律を守るべく、私たち政府の犬は従順に従わねば、上の矛先は足元へと、私たちへと向けられてしまうのです」
彼は肩を竦める。
「本当に・・申し訳ない」
胸元から、黒光りした一丁の拳銃を取り出した。
「ヤメロ・・」
アマタは口から漏れた声に気付かない。
「父サンヲ・・殺スナ・・!」
体からは熱が、口元からは汚濁したヨダレが、目は赤く。
拳銃を取り出した途端、静まっていた周囲からどよめきが生まれた。
「俺なら・・殺されたって構わないっ!だから」
「一つ、思っていた事があります」
「え?」
彼は、呆けた顔をした空太へと銃口を向け、
「見苦しい」
パァン!
視界の先、撃鉄が下がり銃口からは鉛と共に高熱が放たれる。
空太であったその体は大きく仰け反り、地へと仰向けに倒れる。
頭部から流れだしたその血と脳漿は泥と混ざり、混濁したそれらの色は周囲へと滲むように広がっていく。
周囲は悲鳴を上げた。
だが、一番は、
「アアアアアアアアァァァァァァァッッッ!!」
既に駆け出していた、アマタの姿だった。
「遅かった・・!」
「月島くん!」
和也の視線の先には、頭部へと銃弾が被弾し、即死したその場へとケモノの如き姿へと変貌させつつ駆けてゆくアマタの姿があった。
「アマタ、ダメだ!」
和也の声は、全く届いている様子を見せない。
「和也、アレって・・!」
「あぁ・・!」
それは、確かに目の前で二度も見たことのあるもの。
「ブラッドショックに、アマタが堕ちた・・!」




