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敗北の旅  作者: 壇狩坊
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第五章 三幕 長期戦故に

そんな危険を犯しながらも、それらをカバーし合うチームワークを見せ続ける時間が、更に一時間が過ぎる。

 ここまでは順調に内部へと兵士を潜り込ませないよう皆が奮闘を続けてきたが、戦争というものは長期戦となれば必ずモノを言うのが物量というものだ。

 更に、人間という生き物は激しい動きを繰り返す者の方がしていないものに比べて疲労が貯まる。

 全身を使って戦う高校一年生。

 そして、陣形を保ちつつ、銃を放つ政府軍。

 だとしたら、長期戦における優劣は明白だ。こちらは既に女性を含めた後攻部隊一五〇〇人を投入済みである。そして、時間がくれば短時間の休憩をした前半のメンバーが戻る。

 そして、相手の際限はまだ見えない。

 皆の表情は少しずつ曇りを見せつつあった。

(ちょっとマズイのかも・・)

 元々、そう短時間で終えることのできる戦いではないことくらいは皆誰しも想定済みだった。だが、想定なんてものはそれこそ机上の空論でしかない。好きな人と暮らす時間と、沸騰したヤカンに手を触れる時間の感じ方が大きく違うのと同じように、常に戦い続ける高校一年生は思った以上の疲弊を感じてしまうことになる。

「和也!」

「どうした!」

 二人は一時間前と同じ姿勢を保ちつつ、和也が返事をする。

「二人は大丈夫!?」

「あぁ・・まだいけるぞ・・」

「わ、私も・・」

 と、何とも期待するには値しない返事であった。

「うーん・・」

 アマタは考える。この状況に対する上手い打開策はないか。何か、戦意を上げるきっかけはないか、と。

「・・ないな」

 そもそも、と考える。自分自身、人に対して影響を与えられる人間でもないし、立場にもいない。もしも、この状況を変えられる人がいるとするなら。

「父さん・・」

 くらいの影響力、統率力のある人間による決断、行動だろう。

再度双眼鏡の向こうを覗く。

 校庭上にて切磋琢磨に周りへと指示を続ける空太には決して余裕なんてものはなく、大きな決断をする余地なんてものはそうそう見られない。

(変わらない・・かな)

 きっとこのような拮抗した戦況が、終わりまで続くのだろう。

 次は上空を見上げる。

 遥か高い場所にて攻撃ヘリが一機、音を立てながら飛行している。どうやら撃った弾丸が地上まで届かないことを理解したのか、その攻撃は今のところ止まっている。

 この和也の功績は非常に大きいだろう。今の状況に上からの攻撃を加えられたらさすがのブラッドクオリア勢と言えど勝利は至難のものと言わざるをえない。

「上空からの攻撃は大丈夫、と・・」

 だとすると、だ。やはりこの戦況はハッキリ言ってマズイ。戦っている高校生も、逆に殺さずに戦闘不能に陥らせるほうが難しいようで、今の表情は固い。

「くそ・・」

 ギュッ、と拳を握る。

 自分にも戦うことが出来たら、こんな気持ちになることはなかったのかもしれない。

 勿論戦っている皆のほうが疲労がたまっているいは違いがないが、体裁的なものが保ちづらい。

 だが、自分が選んでしまった道だ。これだけは絶対に悔やんでなんかはいけない。

 そう思っていると、戦況に一つの変化が生まれた。

「ん・・・?」

 政府軍が、撤退していく?

「アマタ!」

「いや・・ちょっとおかしくないかな」

 確かに撤退を開始して、戦いの音はついに零となった。だが、その表情を見る限り敵の戦意の失墜は見られない。

「攻撃の方法を変えるのかな」

「方法?なんだ、まだ終わらないのか・・」

 と、和也はうなだれる。

「じゃあこれ以上の何かで攻め入ってくるのか?」

「分からないけど・・ほら上のヘリは帰ってないだろう?ってことはやっぱりまだ続くんだよ」

 と、思っているとどこからか追加の攻撃ヘリがこちらの上空へと二機近づき、上空にて一機目同様旋回を始めた。

「どういうことだろう・・」

「俺の防護膜で、攻撃は通らないってことくらい分かるはずなんだけどな・・」

「和也はまだいけるの?」

 さすがにもう既に一時間と半分が過ぎている以上、攻撃を防ぎ続けた和也の疲労はピークに達しているはずだ。

「里見も・・大丈夫?」

「うーん・・」

 どうやら振るわない様子だ。

「深夏、あれ持ってきてくれよ」

「ん?あぁ分かった!」

 と、里見は一度和也と同じ姿勢から体を崩し、持参していたカバンの元へとパタパタと小走りする。

 そしてそこから弁当箱のようなものを持ちだした。

「・・何それ」

 思わずアマタは呟く。

「いやウチら疲れるし・・ねぇ」

「うん」

 と里見は和也の同意を得る。

「うーん・・」

 だからと言って、このような状況下にてのうのうと風呂敷広げてピクニック、というわけにもいかないだろう、とアマタは思う。

 里見が箱を開き、中からなんだか生々しいものが箸でつつまれる。

「・・レバー?」

「うん。私たちって、血の力を使うわけじゃん?だからさ、その名の通り血自体を使うわけでさ、だから鉄分が多く含まれてるこーゆーレバーみたいなのが効率的なの」

「へぇ・・」

 そんな瞬間的に体が吸収して効果をなせるようなものなのかな、と一抹の疑問を抱くが、大した疑問でもないので聞いたりしない。

 里見はニッコリ満面の笑みを浮かべて、

「はい和也、アーン♪」

「あーん」

 何見せてくれてんだよ・・とアマタは目を逸らす。

 これ下の人達に見られたら軽く怒られるんじゃないか、という不安にかられるが、まぁ大丈夫だろう。

 それらを数分で平らげると、再び防護膜を二人で張り出す。

「ぷっふー・・これでもう核攻撃だって大丈夫だぜ」

「いや、それはさすがに・・」

 無理じゃないのかな、とアマタは苦笑する。

「けど・・さすがに不穏だな」

「何が?」

「いやだからさ、今更攻撃ヘリを追加した所で無駄なんてことはわかってるはずだろ?それでも追加してくるってのは・・」

「私たちの・・いや、むしろ目的は攻撃じゃないとか?」

 里見が和也に問う。

「まー考えられなくもない、か」

「後は・・どこかしらで、私たちの防護膜を無視することが出来る秘策がある、とか?」

「・・それがあったら、たしかに絶望的だな」

 確かに笑えない話ではある。

 こちらの戦力はハッキリ言ってもう万全とはいえない。こちらに新たな戦略なんてものもないし、敵が妙策にて攻撃をしてきた所で対処しきれるかどうかさえわからない。

 敵がこの拮抗状態を打開してくるというのならば。

(ただ、耐えるしか無い)

 勝機は、見いだせるだろうか。

 敵方は訓練された国の兵士。

 こちらはこの半年間で生成した彼らに比べたらまだまだひよっ子のような軍団だ。

 こことしての能力ならば決して負けないであろう。だが、それが軍、群としてという話となれば話は違う。

「本気でヤバイな」

 和也も、今の状態の危機を感じ取っているようだ。

 ここからは本当に耐久戦となるだろう。

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