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敗北の旅  作者: 壇狩坊
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第三章 五幕 決意

 長い、それは長い説明に一段落がつき、朱雀がその場を離れていくと、三人はその場に呆け、表情を止めた。

 時計を見るとその短針は既に四を過ぎており、気付いてはいないが三人は朱雀が去った後、何時間もの間ここらで時間を食っていた。

「なぁ、アマタ・・」

 眠そうな表情で和也はアマタへと声を掛ける。

「アマタは戦うのか?」

「僕は・・」

 どうした方がいいんだろう。

 自分は、どうしたいんだろう。

「いやだ、なぁ。今は」

 戦いたくない、と。それは明確な意思表示の他ならなかった。

 和也は少々の驚きを見せていたが、同等にアマタも自分で自分に驚いていた。なんというか、自分がこんなハッキリとものを言えるものなのだなぁと。里見に聞かせたらもしかしたら少し喜ばれるかもしれない。・・なんて、戯言か。

「和也は?」

「戦う」

 ノータイムで、断言するように彼は答える。

「だって俺はさ・・」

 へへっと鼻の下を掻きながら言葉を続ける。

「復讐なんてものよりも、守るべき約束と、存在があるから」

 あぁ、そうか。

 アマタは認識する。

(和也からしたら・・復讐なんてのは、確かに二の次のなんだろう)

 失ったことによる憤怒よりも、失った後を恐れる勇気の方が強い。

 アマタはそう強く思い、里見へと目をやる。

「・・んへ?何・・?」

 どうやら船を漕いでいたようで、その眼は泳いでいる。

「里見は、戦うのかな?」

 えっと・・、としばらく言い淀むと、

「私は・・戦いたい・・かな」

「深夏・・!?」

 まるで予想していなかった回答であったかのように和也は里見を見やる。

「私だって!」

 それは強い意志の篭った叫びで。

「私だって・・力があるなら」

「深夏・・!」

 その時の表情は、焦燥にまみれ、彼らしくないと、アマタは一人思った。


「・・ふぅ」

 シャワーを浴び、柔らかいとは言いづらいベッドへと一人横たわると、短い時間眠ろうと目を閉じる。

(僕は、一体どうしたい・・?)

 きっと。アマタの感覚的予想でしか無いが、眼を覚ました高校一年生のほとんどが力を得ることに賛同し、戦いへと赴くことになるだろう。

 その時自分は何をしているのだろう。

 戦いたくない理由。それはあまりにも純粋だった。

(怖いだけ・・なんだよな)

 どう説明したら格好がつくだろうか。何と言えば納得が得られるだろうか。

 逆にもう戦いへと勤しむか?実際、こう口からは不安しか出てこなくても体を動かしてみれば意外と戦えるかもしれない。

 ・・・。

(嫌・・無理だ)

 そう思い、

「僕は絶対に戦いたくない・・!」

 確証を得るために口にする。正確に言えば死にたくないだけなのかもしれないが、そんなのは誤差の範疇だと思い過ごした。

 口にしてみたところで気づいた。今シャワーを浴びて横になったばかりだというのに、その背中からは溢れ出さんかのばかりに汗が吹いていたことを。

 気怠くなんるような気分に、布団を頭からかぶる。

「僕は、戦わない」

 もう一度そう呟き、その強い意志は最後まで変えないだろう。

 胃が握られているかの如くの気持ち悪さは、それを上回るかの如くに気持ちの悪い発想をことごとく生み出した。

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