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敗北の旅  作者: 壇狩坊
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第三章 四幕 真相2 

久しぶりの投稿です

 少し、新しい単語が出すぎたというか、もう既にパンクしそうだった脳内ハードディスクがとうとう破裂しそうだったので、一先ず満場一致となったブレークファーストをとる。

「ふぅ・・」

 茶汲み口の前にてその場で入れた茶をすずり、食堂を見渡す。

「あ・・もう一一時だったんだ・・」

 丁度その時更に長針が震え、十一時一分を示す。

 意識していなかったわけではなかったが、実際こうして直に時間が過ぎていたことを実感させられると妙な気分になる。

「なぁアマタ」

 背後の声に振り返ると、和也が立っていた。

「空太さん達、介助とか、しなくていいのか?」

 達、というのはきっと里見母、黒木父を含めてのことだろう。

「どうだろう・・でもこうして話してくれてる以上・・いいんじゃないのかな」

「そうか・・なに、ならいいさ」

 そう言って二人揃って席へと戻る。


 さぁ再開しよう、そんな雰囲気を漂わせ、皆の面持ちが戻ったところだった。

「ああぁっ!」

 がっ、と机の側面に両太ももをぶつけながら勢い良く立ち上がったのは自分の父親だった。

「ど、どうしたの父さん・・」

「もう十一時過ぎてんじゃねぇか!仕事に戻んなきゃいけねぇ」

 それに乗じてか空気を読んでか、里見母と黒木父もさり気なく、それでも焦った表情を隠せないままに身支度を始める。

「あぁいいっすよ、ソラさん。俺が色々説明しとくんで」

「よ、よろしく!」

 そういった時にはもう声が響くのみで姿は見えなくなっていた。

「案の定だったな・・」

「だね・・」

 呆れ半分、といった具合に苦笑する。

「それじゃあ・・話の続きを、しようか」

「確か、光の血者、というところでしたよね」

「・・んま、その呼称はソラさんが格好いいから、とか勝手につけたなだけどな・・。あ、ちなみに俺は土を操ることができるから『地の血者』だぜ」

 その適当なネーミングは確かにあの空太らしいといえば空太らしいのかもしれないが、正直なところ必要性を感じない。

「地を操る・・というのは、俺達が昨日見たアレですね」

「そうだな。同様、光の血者は光を読むことが出来る」

 操作する、と読むでは違うではないか、と和也アマタ里見と三方皆が思ったことだったが、何となく口に出す気がしなかったのはある種の共感覚というものだろう。

「光ファイバーとか電波とか、俺はよく知らねぇけど、とにかくそーゆーのを追跡すると世界中どこのサーバーにだって潜り込めるわけさ」

 実際に会ってみたいものだが、今はそういう空気ではなさそうだ。

「それよりもまずこの力の手に入れた方法・・だよな」

「はい・・」

 神妙な表情で頷き、答えを待つ和也。

「もしかして、私たちも使えたりするのかな・・だって、同じメルトブラッドがからだに入っているわけだし」

「そうだ。えっと・・里見、だっけか。イイ勘してるじゃねぇか」

 あ、どうも・・と里見がペコリと頭を下げる。

「ブラッドショック、改めて説明させてもらうが、体内に血液中に混在していたメルトブラッドが時間によって成長をし、それを制御しきれず暴走してしまうことだ」

 それは認識通りというか、共通認識として正しいようだ。

「そしてそれを常人の体でそのまま発現し、耐えようとしたら・・ほとんどの人間はブラッドショックに陥る」

「ほ、ほとんどですか・・」

 一体どれだけの計算違いを政府はやらかしたのかが直に分かる内容だ。

「ギリギリでそれらの苦痛を耐えぬく・・ソラさんは体中をそのメルトブラッドで埋め尽くされるとか言って『オールブラッド』と言ってたな。ま、関係のない話だ」

「オールブラッド・・」

 だが数年前は政府はそれが可能だと信じ切っていたのだ。安易に笑うことも出来ない。

「ソラさん言うに、オールブラッドになった奴は比類なき地球史上最強の存在になるって言ってたぜ。なんか、ロマンある話だよな」

「だとして・・朱雀さんはどのようにして今の状態に?」

 和也はそんな朱雀の余談に時間を割いている時間がないと察し、催促をする。

「政府が画策したのはあくまでも国の兵器。つまり戦える人材だ。だとして、俺達第二期被験体十四人が考える、政府に相対できる力はどのようにして手にするか、という討論をしたわけだったが、そこでソラさんはその政府に対する力を政府が用意したそのメルトブラッド因子を利用して仕返してやろうという結論に至った」

 つまり政府は今、自らが作った兵器にて自らを攻められようとしているということだろう。

「どういう偶然なのかは分からねぇが、ソラさんは世界で名立たる名医師だったみてぇでな。俺達から血液を採取して約二週間ほどでその時の、自分がいつブラッドショックに陥るかわからない、という大いなる不安を吹き飛ばす打開策を導き出した」

 そういえばここ何年かは顔を合わせていなかったが、もしかしたらこういった込み入った事情が関係していたのかもしれない、とアマタは一人思う。

「それが『メルトファイア』。体の中のメルトブラッドという異分子のみをほとんど消滅させる、という革命的な薬物を創りだしたんだ」

「そ、そんな簡単にできるものなのかな・・」

 と、そう思った時、あの空太の顔が思い浮かぶ。

「俺は天才だからな!」

 もしこの場にいるとしたらグッドサインをしながらそう口にするはずだ、と心のなかで想い何となく呆れてしまう。

「まー二週間ずっと、飲まず食わず眠らず諦めずだった・・とか呪文のように言ってたからな・・終わった、と思ったら「後は自分たちでやっといてくれ」とか言ってソラさんその場でごろ寝しだすもんでよ。机の上に丁度十四個分の錠剤が置いてあったんだ」

 つまり、

「それを飲んだら、もう安全、というわけですか・・!?」

「それだけじゃあ無いぜ。忘れたか、俺の能力を」

「あ・・!」

 そう言っていたのだ。異分子のみをほとんど消滅させる、と。つまり、

「わずかに残ったメルトブラッドは、自分の力として残った、というわけですか・・!」

 和也の瞳が輝き、まるで自分は力を得たかのように両手をニギニギとする。

「あれ・・ちょっと待ってくれませんか」

「?どうした、アマタ」

 何かが引っかかるような・・。・・そう、

「その薬が今ここにいる高校一年生に投薬してもう安全だということを伝えたら、政府の殲滅活動は終わるんじゃないのかな」

「あ・・そうじゃん!そしたらアタシ達、安全じゃん!」

 その里見の笑顔は即座に消し去られることになる。

「駄目だ。残念ながら、メルトファイアで体を浄化したとしても、一つ、小さなデメリットだけは残る」

「小さなデメリット、って・・?」

 里見がおかしなものを見るように首を捻る。

「それは元々大学研究当初から分かっていた欠点だった。それを知っている理由は、俺が直接研究員に対して聞いたからなんだ。

「どうしてそんなに強くなれるのか」・・とな」

 確かにメルトブラッド、ブラッドクオリアと聞いては来て、何となくスルーしてきたが、その原理は理解していない、というかしようとしていなかった。

 そこで朱雀はパンッと手を鳴らし、

「さて、ここで理科の授業だ」

「・・はい?」

 突然の温度差にあっけらかんといった感じに。

「人は酸素を吸って、何を一番吐き出す?」

 それは義務教育を受けている人間ならば誰でも答えられるであろう、というアマタの軽い見解があった。

 回答には和也が指差された。

「えっと・・二酸化炭素ですよね」

「んーま、半分正解なんだが、問題の意図としては不正解だな」

 それを聞き、里見が手を挙げる。

「和也違うよ。確かに肺の中で酸素と二酸化炭素は交換する形にはなるけど、それでも一番吐き出される空気は元と同じ窒素なんだよ」

 アマタ自身としても答えは二酸化炭素だろうと踏んでいたので、回答に選ばれなくてよかった、と一人ホッとする。

「・・ま、そういうこった。ついでに里見よ、二番目がなにか分かるか?」

 それこそは二酸化炭素だろう、と思っていると、

「酸素・・ですよね」

 あっさりと里見が答える。

「え、ど、どうして」

 自分が里見よりも学力が劣っていることくらいは推測していたが、それでも自分の頭中に浮かんだ回答は絶対に正解だという自信があった。

「人間の肺って、そこまで二酸化炭素を溜めちゃってるわけじゃないし、人自体そこまでの酸素を求めてないの。だからね、吸った空気の中の酸素の一部を体に取り込んで、そんなに多くない二酸化炭素を吐き出してるんだよ。だからそこで起きる酸素と二酸化炭素の変換効率ってそこまで高くないわけ。

 まぁ、全部授業で習ったことなんだけど・・」

 そのジト目はつまりアマタを馬鹿にしている要素が満々に含まれているのだろうが、アマタはそれとの視線がぶつからないようそっぽを向いた。

「ま、そういうこった。それで話を戻すが、このメルトブラッドの効果・効能を引き出すために必要なのは、その常人の何十倍にもなる酸素、というわけさ」

「変換効率が上がるってこと・・?」

 事前知識のないアマタと和也は沈黙を保ち、里見が応答する。

「あぁ。それも、変換効率九九.九%だ」

「え!?」

 里見が驚くが、後方二人は内容を理解できずに首を捻る。

「なぁ深夏、説明してくれよ」

「え、えっとね・・」

 しばらくあたふたとし、深呼吸をすると、

「とにかくそのブラッドクオリア化して安全になり、身体は強くなったとする。だけど、大々的なこの地球環境に対して悪質である二酸化炭素を、常人の何十倍も吐き出すことになるってこと・・かな」

「なるほど・・それって、能力を発現させてない時もなのか?」

 その問の答えはさすがにわからず、朱雀が答える。

「そうだ。常時酸素を大量に吸い込み、二酸化炭素を大量に吐き出すことになる」

「・・つまり、その大量に取り込んだ酸素こそが、本当の身体を強化する根源というわけですか・・」

「いや、ソラさん曰くそれだけじゃあ、ない。って言ってたからこれもほんの一部の事実なだけだと思うぜ」

 何となく、納得にいったような、それでも腑に落ちない部分もあるというか。有耶無耶な状態のまま会話は続く。

「だけど・・その程度じゃないですか」

 和也は不意に呟く。

「その程度・・だな」

「それって・・国が俺達を、狙う理由になりうるんですか?」

 地球規模で考えてみれば七十億の人口に対し、今年の高校一年生七十万。更にここにいる者しか残っていないとして・・。

「救助した人の数って、分かります?」

「ん?確か・・数えた所で三千弱くらいってソラさん言ってたな」

 だとすると三千人が常人の何十倍もの有害物質を吐き出すとして。

 あれ・・。

「全然、問題なんか、無くないですか?」

 日本のたった三千人が、有害物質を吐き出すくらいでは。

「もしかして・・」

 そう感慨深く呟いたのは里見だ。

「国の・・私たちを狙える、二つ目の理由・・?」

「あ・・」

 そこまで言われ、アマタもようやく気づく。

「そういうことだ。国がたとえメルトファイアの効能でブラッドショックに陥る不安が拭えた所でもう一つの攻撃理由があることであいつらは攻撃を続けることが出来る」

 何より、一度向けたその矛先を収める、というのは人間誰しも難しいことで、学校の教師なんかが顕著な例だ。理由がある以上、彼らは攻撃をやめないだろう。

「なんとか戦いを、止めることは出来ないのかな・・」

 里見は不安げに小さく呟く。

「国側としては攻撃する理由、場、力などすべてが整っている。そして、お前らみたいな逃走した奴らを更にしらみつぶしにするアフターケアだって整っていた」

 それはたしかに身を持って体感したことであり、眼前の死さえも経験してしまった。

「そういえばお前ら、一体どうやって校舎から逃げ出したんだ?」

 単純な疑問だろう。故に回答までのラグは短くとも内容は濃くなる。


「マジかよ・・!」

 三人は昨日の全てを朱雀へと話し、彼は此方の気持ちを汲み取って悔しげな表情を浮かべていた。

「お前らにそれは、過酷すぎるだろ・・」

 怒れないはずだ。だって、自分だってその体験を、身をもってしたはずなのだから。

「あぁ・・くそ」

 雑念を振り切るように頭を二度振る。

「とりあえず、この場所は国政府にはバレてないことになってる・・。だが、それも時間の問題だ。これだけ多くの人間が地上から消失しているんだ。国だって馬鹿じゃないからな。いつかはここを嗅ぎつけてなにかしらの形でコンタクトを取ってくるはずだ」

「だったら、俺達これからどうすればいいんですか」

 和也は強い眼差しで朱雀へと問う。

「前提として・・まず下手に政府に対して手は出せない。だからと言って下手側にまわるのはもっと駄目だ。とにかく刺激を与えず、そして、こっちの「防衛力」としての兵力が在ることを証明する必要があるだろう」

「防衛力・・?」

 深夏が不思議そうに呟く。

「俺達二期被験体で十四人、そしてここにはメルトブラッドを体内に宿した高一共が三千人居る。だから、それをすべて兵力とする」

「僕ら自身が・・」

「戦士になるってこと・・?」

 急に話が自分らへ持ち込まれ、三人は背中に虫唾を感じずにはいられなかった。

(父さんが言ってたことってこのことだったんだ・・)

 和也の問。安寧と安全の明確な違い。それらはこの一つの事実に込められていると思ってもいいだろう。

「高一共が皆眼を覚ましたらソラさん自ら全員に話すと思うけどな」

「みんなそんなの、受け入れれるかな・・」

 和也は首を振る。

「さぁな・・。だけどその場合、戦士になる人間は取って、後は切り捨てるなんて、残酷な形をとることだって、あり得ないことじゃあないだろうな・・」

「そんな・・」

 戦士としての資質なんて、今このゆとり世代と呼ばれた僕達の中に在ることなんてあるのか?

 だがそれ以上に、アマタは一つ思うことがある。

「みんな・・戦うとは思う」

「アマタ・・?」

 アマタの呟きに和也が反応を示す。

「だけど、それは目標が同じでも、抱く決意が・・揃わないんじゃないかな」

 フッと朱雀は不敵に笑ってみせる。

「ソラさんも同じ事言ってたぜ・・やっぱ親子で似てんのな」

 それは何となく心外というか、だけれどもどこか嬉しいと思っている自分が恥ずかしいというか・・。

「目標は同じ、日本という国に対してだ。だけどな?事前にこういった襲撃が在ることを知っていた俺達やソラさん、それに多くの親御さんたちは、みんな自分の子たちを守りたい、安全に身をおきたいだけ。つまり防衛だ」

「だけど・・僕ら高校一年生は攻撃され、少なくない数の友達や同世代の人間を失った・・そうなると、やっぱりブラッドクオリアの効能を受けて、力を得る理由は・・」

 一息、

「復讐、になると思う」

「戦うためのキッカケは別にそれでもいいんだ。だけど、いざ戦うときになったら全員の意思疎通が最重要になる。

 こちらには戦う力はあるが殺意は無いことを、示すんだ」

 それは、政府が世界に対してしようと思っていた理想と同じだというのが、皮肉にも笑えてしまう話である。

「力を持つキッカケは復讐だったとしても、最終的な戦闘理由は防衛でなくてはいけない・・それは、非常に難しい話ですね」

 あぁ、と朱雀が答えると、

「キッカケがなければただ一方的にやられてしまう。だがそれ同等に警戒しなくてはいいけないのは内部反乱でもあるということを、忘れてはいけない」

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