新参
ゾディアックボートに乗る4人の武装した集団がある小さな島に向けて巡航していた。
武装は非常に充実しており、フラググレネードやフラッシュバン、タクティカルベストに加えボディアーマー、顔を隠すためのバラクラバの装着などまるで特殊部隊である。
ボートは高速で移動しており、ボートの淵にそって大きく白波が立っている。
その集団のリーダーらしきスキンヘッドの男が伏せた状態で大声で話す、
「上陸まであと30秒だ!島のライフラインは完全に寸断されており島で起きているバイオハザードの進行を止めることはもはや不可能。俺達がやるべきことはさっき話したとおりだ。まずは浄水場1階を制圧することから始める。上陸に備えろ。」
男がそう言った数秒後にボートは砂浜に上陸。
全員がボートから降り、砂浜を駆けて行きすぐそばにある浄水場へ向かった。
「死体が大勢あると思うが大半は感染者だ。いつ俺達を襲うか分からん。油断はするな。」
リーダーがそう言う。
武装集団は浄水場正面入り口にC4を設置する。
男の副官らしき男がそれを起爆。大きな爆発音と共に集団は浄水場へと侵入した。
施設内は案の定、死体だらけであり生きている人間など1人もいなかった。
壁にべとりと染みついた血液や苦悶の表情を浮かべて仰向けで息絶えている死体。
しかし彼らにとってそれは単なるオブジェでしかないようで、気にせずに施設内部へと進んでいく。
2班に分かれて一階のクリアリングを行う。
「会議室クリア(異常なし)」
「制御室クリア。」
どこの部屋も死体だらけではあるが特別異常はなかった。それに関連して生存者も全くいなかった。
リーダーは副官と共に制御室のクリアリングを行った後に、慣れた手つきで制御パネルをいじっていた。
続々とモニターに映っている、監視カメラの映像や施設の情報などを出していく。
彼の素早い指の動きが止まったと同時に最上部のメインモニターに「汚染レベル6」と表示される。
「かなりマズいことになってるな・・・。」
リーダーがそう言いため息をついた時、無線が入る。
「こちらB班。死体がうめき出している。なんか不吉な予感がするぞ。」
リーダーはこのような事態は予測していたし、慣れている
「いますぐその場から離れろ。二階からも来るかもしれん。
ロビーで合流しよう。」
「了解。」
リーダーは副官を連れてロビーへと向かう。
向かっている途中で副官がリーダーに話しかける
「やはり汚染レベルは高いようですね。」
「これまでにないバイオハザードだ。きっと合衆国とSSCはブラックアウトを発令するだろう。」
副官はしばし黙る、
「最悪のシナリオですね・・・」
ロビーへと繋がる長い廊下を歩いている途中。副官がつまずく。
彼は壁に倒れ掛かっていた「死体であったはずのもの」
つまり感染者に脚を掴まれていたのだ。
「くそっ!予想以上に―」
副官はナイフで感染者の喉笛を切り裂こうとしたが、リーダーはホルスターにしまっておいたM1911を即座に引っ張り出し、彼を掴んでいる感染者の髪の毛を思い切り引っ張って顔を天井に向けさせて脳幹部分を.45ACP弾で貫いた。
感染者は撃たれた部分から大量に血を出し沈黙。
リーダーは倒れている副官に手を差し伸べる、
「抗体は打ってある。血液に触れても安全だ。ま、その抗体もSSCから貰ったものだ。どれくらい信用性があるかはわからん。もしかしたらこいつらみたくなっちまうのかもな。」
副官は彼の手を掴みスッと立ち上がる。
体に付着した感染者の血液をできるだけ除去するように軽く払う。
「いえ、それよりマガジンに血糊がつくと給弾不良の基になります。それが一番心配ですよ。いざという時に弾がでないじゃ話になりません。任務遂行の妨げになります。」
リーダーはその言葉を聞き鼻で笑う、
「『ただ任務のみを優先する』お前はその言葉を擬人化したような奴だ。」
「褒め言葉と受け取っておきます。」
副官はそう言った直後何かを思い出したかのように続けた、
「そういえば上陸前に飛行機がこの島に墜落しましたが防空システムは生きているんでしょうか?」
「さあな。恐らくあいつらの仕業だろう。落された飛行機に乗っていた奴は誰かは知らんがセスナがここの空域を飛ぶとは思えん。きっと噂の工作員だ。そいつには充分気をつけた方がいい。かなり『ヤバい』らしいぞ。」
「物騒な世の中です。」
それを聞いてリーダーは呆れた口調で言う、
「似たもの同士だろうに。」
再び無線が入る、
「銃声が聞こえましたが大丈夫ですか?
こちらでも何体か倒しました。ここはあまり持ちそうにないです。早く撤収しましょう。ではロビーで。」
二人は駆け足でロビーへ向かうことにした。
そして彼らがさっきまでいた制御室は既に感染者で埋め尽くされていた。
ロビーへと集合した4人。
「港に向かう。あそこに停泊しているタンカーには今回の任務で一番重要なものが入っている。それを入手しなければいけない。
時間はあまりない。奴らに奪われる前に行くぞ。」
リーダーはそう言って残りの3人を引き連れて浄水場からも見える港へと向かっていった。
ラザラスは1時間も歩かない内に森から出ることができた。ラザラスの持っていた地図は、ここにさまざまな施設が建てられる以前のものであり地図としての信頼性は薄かった。当然、それを分かっていたラザラスはそんな地図などアテにしてなかった。
己の勘だけが頼りであった。
ラザラスが森を出てまず初めに見えたのは巨大なタンカーの陰と、そのすぐ横にある、コンテナをタンカーに積む為にあるクレーンが複数だった。
それを見るからにここは港なのだろうと察するラザラス。
単眼鏡を出しタンカーの他にも何かないか、と目で探る。
あった。しかしこれはタンカーではない。船首には対空機関砲、巨大な操舵室。操舵室側面から後方にかけて4つ。奥手側にもあるものを含めて8つのミサイル発射ポッド。大きさや武装の規模からしてイージス艦ではないが、これは恐らくソ連海軍が使用していたスラヴァ級ミサイル巡洋艦だろう。
なぜこんなものが?と思ったがラザラスはそれよりも、島の防御システムはまだ生きている?あの巡洋艦から発射されたミサイルで撃墜されたのか?それ以前になぜ巡洋艦がある?ということが気になってしょうがなかった。
まずは調べるために、港に動物が侵入するのを防ぐためのフェンスを乗り越えて港の敷地内に入ることにした。
人の気配は全く感じられない。警備兵も死んだと思われるが警戒しているに越したことはない。銃を構えつつ駆け足で埠頭まで行く。
港らしくあちこちに大型のプロパンガスタンクと石油タンクが設置してある。恐らく、プロパンは街のライフラインとして機能していたもので石油は言うまでもないだろう。現代において乗り物を動かすためには石油が必要だ。ガソリンや重油、軽油など様々である。
タンカーまでの距離は1.5kmといったところだろうか。慎重に進んでいこう。
ラザラスは前方に限らず、側面、後方にも銃口を向けて周囲を警戒する。
彼の持つM4カスタムにはサプレッサーが装着してあり、これは、島に潜入し研究所を捜査するという特性上特殊な条件下での戦闘が強いられる可能性があるためなるべく銃声を抑え敵との交戦をなるべく控え迅速に目的を遂行したいというのと、サプレッサーを装着することにより銃全体の重量が増え、重心も前方に移動することで反動を抑え連射時にも正確に狙いを定めることができるという2つの意味がある。
銃声の大きさと撃った際に射手に来る反動は決して戦場では軽視できるものではなく、なるべくなら無い方がいい。
戦術的にあえて大きな音を鳴らすこともあるが基本的には銃声は小さい方がいいのだ。
ラザラスはデューイの友人、デイル・ポロックに訓練を受けた時を思い出しながらただただ歩み進んでいく。
デイルは元アメリカ海兵隊の准尉で現在は退職しているが、現役時代の腕は相当なもので、湾岸戦争時に名誉勲章を授与されているほどである。なぜ彼が授与されることになったのか、デイルは詳しくは話さなかった。戦士とはそういうものなのだろう。
多くは語らない。語りたがるのは戦場にいた経験が浅かったやつか戦場に言っていない奴の2種類だけだ。少なくともラザラスはそう思っている。
警戒はいかなる時でも怠るな、敵地潜入の最中は確実に殺れないなら殺すな、敵のスコープの中心にいつでも自分が入っていると思え。
その教えは今こうして役に立っている。過去の作戦でもだ。破片で負傷したことはあっても敵の弾で負傷したことは一度もない。
ただ多くのベテラン兵士は忘れがちだ。その経験が自信となり、自身が過信となり死を招くということを。
タンカーまで1kmを切った。中を調べる必要がある。もしかしたらSSCの新たな兵器が密輸されていた可能性も高い。それとも輸出の準備をしていたのか。
まあそんなのはどうでもいい。奴らを潰す証拠さえ持ち帰れれば。
現在所持している「SSCの生体実験及び生体兵器の製造過程」の証拠は既にほとんどが有力な証拠として法廷にも持ち込めるものではあるがまだ足りないものがある。それさえあれば・・・
ラザラスは焦る気持ちを抑え、タンカーへ―
乾いた短い音が連続で数回聞こえた。銃声だ。
それはタンカーの方から聞こえたものだった。
ラザラスは生存者がいるのかもしれないという希望に賭けてタンカーに向けて歩む速度を速める。徐々にそれはスピードアップしていき、走るまでは行かなかったものの最終的には駆け足になっていた。
タンカーまでの距離400メートル。
いた、船首甲板に人影。
ラザラスはタンカーに向けて一直線に走っていく。
しかし後方で大きな振動と共に重く響く爆発音が聞こえた。
何事かと思いラザラスは後ろを振り向く。
港にあった石油タンクが炎上していた。
原因は分からないがそれよりも生存者がいるならば事故の被害者としてかなり有力な証拠の一つとなりうる。そう考えたラザラスは後方で起きている火災など気にも留めずにタンカー内部へと侵入。
とはいかなかった。
彼がタンカーに侵入しようとした時、突如上方から2.5mくらいはあるであろう巨人が現れた。
その巨人は人ではないということはすぐに理解できた。いや、正確には「人であった」というべきか。
露出した脳。そこに繋がる眼球。胴体は完全に機械化されており足の筋肉は異常なほどに肥大化。腕の筋肉も同じく。それがもとは人であったかという確証はない。しかし0からすべて人工で作られてはいないという確証はラザラスにはあった。
SSCの新商品か。どの程度か試してみよう。
異様なその「巨人」を目の前にして、彼は怯むどころか戦う意思を露わにするかのように銃口を巨人の頭へと向けた。
巨人はそれに反応して俊敏な動きで飛びかかってくる。
ラザラスを巨大な手で掴もうとしたがラザラスはそれをスラっと避け手の側面に、ラザラスから見れば巨人の手の甲側に立ち、ナイフを取り出して逆手で持ち巨人の人差し指と中指の間を切り裂く。
巨人の血液が勢いよく噴出しラザラスに飛び散る。それが目にかからぬようにラザラスは左腕で顔を覆うようにする。巨人の咆哮が港内を埋め尽くす。
巨人は切り裂かれた手を、ラザラスを払いのけるように素早く横に動かしたがラザラスは巨人の指の間を縫って避ける。
避けた先には巨人の足が。
すかさずナイフを突き刺すラザラス。一瞬だけ巨人はバランスを崩したがすぐに立ち直した。効き目がない。
その場から逃げようとしたラザラスであったが巨人は指の間を切り裂かれた怒りを発散するように彼を蹴り飛ばした。
ラザラスは数m蹴り飛ばされた上に腹部を強打し、血を吐く。その怯んだ隙を見て巨人はラザラスを握りつぶすべく再び彼のもとへ飛びかかる。
だが巨人の背後からロケット弾と思しき物体が向かってくる。それは見事に巨人の背面に直撃した。
しかし身体がバラバラに散るということはなく、背中を大きく抉り、背骨が露出するだけであった。
ラザラスは傷を負った体でありながらも立ちあがり、何が起きたのか把握できないまま後ろから銃を突き付けられた。
「両手を上げろ。何者だ。」
ラザラスは指示に従い、その声に込められている冷徹な感情を薄々と感じつつ応答、
「こんな場所で身分や名前なんて意味がないだろう。」
銃を突き付けた人物は、ふむ、と納得して続けた、
「一般市民ではないようだな。その武装の充実さもさることながらさっきのSBWとの戦い様。明らかに訓練され洗練されたものだ。
仮に俺達と敵対するような組織の人間であれば始末しないとマズイことになる。
答えろ。お前は何者だ。」
ラザラスはその言葉を聞き、銃を突き付けている相手はなんらかの組織、謂わば特殊部隊の人間だと即座に判断した。
仮にSSCの私有する緊急派遣部隊「SPED」の連中だったら分が悪すぎる。相手は絶対に1人じゃない。ここは腹をくくるしかないだろう、
「あんたらの敵さ。」
「敵・・・?最近噂になっているSSCへの妨害工作を行っている無謀な奴か?」
どうやら自分の行ったことは相当広まっているらしい、そう感じながらもラザラスは応え続ける、
「御名答。
殺したきゃ殺せ。あんたらの負の歴史はそうやって積み重ねてきたんだろう?
都合の悪い人物は社会的どころかこの世から消し去る。
それとも生体実験の材料にするために生け捕りにするか?
それもいいな―」
ラザラスは高笑いした後にこう続けた、
「だけどな、俺を運び込んだ研究所は後悔することになるぞ?
少なくとも施設としての機能は失われる。そのついでにあんたらの罪の証拠を持ち帰り放題持ち帰ってやる。俺にとってあんたらの研究所はバイキングだ。元以上食って裁判で清算してやる。」
沈黙が続く。何分続くのか。それは両者どちらかが口を開くまでは分からない。
最初に口を開いたのは銃を突き付けた相手だった。
「全くの同意見だ。」
そう言ってラザラスの頭から銃口をそらす。
ラザラスはこいつは一体誰なんだ、と思いながらゆっくりと後ろを振り向く。
スキンヘッドでバラクラバを付けた男がそこには立っており、装備はSAS(special aer sarvise:英国特殊部隊)の室内戦闘用装備に準じているようだが、装備全体に迷彩加工が施されており恐らくA-TACSという種類の迷彩だろう。
「殺さないのか?」
ラザラスは両手を上げながら聞く。仮に両手を下ろしてしまったら撃ち殺される可能性があるからだ。
「ああ。生存者とはちょっと違うみたいだが殺す理由がない。両手は下ろしていいぞ。」
クレイはその指示を聞いて。ゆっくりと両手を下ろした。
男の後ろにも3人ほどバラクラバをつけた人間が立っていた。そのうち一人は金色の長髪で、髪を後ろで結んでいる。顔立ちや体系から見て恐らく女性だ。
「自己紹介とでもいこうか、
クレイ・ケプロン。合衆国の特殊部隊『SMU』のアルファチームの隊長だ。
大統領命令でね。生存者の救出をしに来たのさ。
聞いたことない部隊―いや、あんたみたいな奴なら俺達の存在を知っていてもおかしくはないか。」
「・・・隠蔽部隊か・・・。」
ラザラスはSMUと聞いて、2年前にデイルから聞いた噂を思い出した。
特殊工作部隊(Special Maneuvering unit)通称SMU。
米軍4軍(陸軍、海軍、空軍、海兵隊)のどこにも所属することのない部隊。デルタフォースとは違い完全に表に出てこない部隊であり、存在すら怪しまれている。
その任務内容は一説によると合衆国絡みの不祥事の隠ぺい。
CIAのファイルにも部隊の概要のみが書いてあるだけで作戦内容や創設者、訓練や選抜試験の内容も全て極秘の部隊である。
なぜここまでデイルが知っていたかというと、デイル自身、若かりし頃にこの部隊にスカウトされたことがあるからだ。
彼は主な部隊概要をその部隊の総指揮官である男に告げられ、スカウトを拒否。
しかし拒否されたことにより指揮官はデイルを厳重な監視下に置いたようで、それからはデイルの身の周りに怪しい人物が度々現れるようになったという。
部隊の情報をリークしようとして、殺された兵士も少なからずいるかもしれない、と彼は語っていた。
しかし何故そんな極秘の部隊がこの島に?生存者の救出ならSDVU(SSCウィルス対処部隊)を使えばいいだろう。それともさっき言っていたように「大統領命令」つまり合衆国の独断で派遣か?
SSCと合衆国は裏で繋がっている。その歴史は冷戦時代にまで遡り、ベトナムで大量の戦死者をだしたアメリカ政府は「戦死者の少ない戦争」を実現するために、人間の代わりに戦ってくれる化け物の開発を進めていたのだ。
その開発を担当したのがSSCだった。
もとはただの医薬品メーカーであったがミトコンドリア病のワクチンを製造するなど科学力自体は目を見張るものがあり、合衆国はそこに目を付けたのだ。薬やウィルスで生体兵器を作れないかと。
「隠蔽部隊という表現は的確だな。間違っていない。むしろ大当たりだ。」
ラザラスはクレイをまだ信用しきれていなかった。当たり前ではあるが。
「SDVUはどうした?生存者の救出なら奴らの仕事だろう。
もっとも、生還した人間は実験材料にされるんだろうが。口封じのために。」
クレイの返答は速かった。そしてラザラスの勘も当たった、
「SDVUの派遣は見送られた。あまりにここは危険すぎる。」
「SDVUの連中はSSCにとって捨て駒のような存在だから派遣を見送るなんてことはしないはずだ。それに大統領命令?一体アメリカは何を考えている?」
「そんなことまで俺達は知らない。俺達の本分はただ与えられた任務を迅速に、正確にこなす。ただそれだけだ。任務に理由などいると思うか?」
「勿論だ。それが倫理に反しているならね。」
クレイとラザラスは睨みい、先ほどまでのクレイの陽気な態度は一変した
「お前・・・もしかして自分がやっていることが正義だとでも思っているのか??」
ラザラス自身の意思に迷いはなかった、
「当たり前だ。奴らの生体実験は人道を逸れている。」
クレイは大きくため息をつく。
「お前がよくいる勘違い野郎だということはよく分かった。
1つ教えてやる、
人を殺している時点で正義なんてもんは最初から崩れ去っている。お前がやっていることと俺達がやっている、俗に謂う隠蔽工作は同じようなものだ。
悪を殺したから天国にいける?地獄には行かないとでも?
勘違いも大概にしろ。
人を殺した時点で地獄行きの切符は切られてるんだよ。それがどんな理由であろうとな。
人殺しは平等だ。善人が悪人を殺そうが悪人が善人を殺そうが天秤にかければそれは釣り合う。」
ラザラスは何も言い返せなかった。
彼の言っていることはあまりに的を射過ぎている。これが最高の戦士というものなのだろうか。ラザラスにはそれは分からない。
しかし言い返せる言葉が何も出ないということは彼の言うことに自分は納得してしまったのだろうと思った。
「ここで議論したところで状況は悪くなる一方だ。
確実に生き残りたければついてこい。そうでなければ1人でこの島を彷徨え。
どっちにするんだ?」
ラザラスは彼の言うことに結局反論できないまま、
「言うまでもない。あんたについていく。」
と言っていた。しかしこう続ける、
「だが俺はSSCという会社を潰したい。
俺の噂は聞いているんだろう?
そのためにはあと一つ証拠が必要なんだ。それを入手するの手伝ってほしい。」
クレイの横にいた副官である男がベスト腰部に装着していたポーチから1つのカプセルを出す。
「これのことか?」
それは今回の事故の原因となったとみられる「ライズウィルス」の培養液が入ったものだった。