ガールズトーク?
家に着くと、時刻はほぼ午後1時になっていた。
莉彩は溜まっていたまず郵便物に目を通し、不必要な物はゴミ箱に捨てた。
次は冷蔵庫を開き、消費期限が切れた物を処分した。事故にあった次の日に買い物に行こうと思っていたので冷蔵庫の中にはそんなに沢山物は入っていなかったが、改めて冷蔵庫をみると、期限切れの物が意外と多かったので、莉彩はこれからは気を付けないと、と心に刻んだ。
最後に洗濯物だった。取り込んだまま放置してあった物と、中干ししたままになったものをたたんで衣類ケースにしまった。
それらを終えると、時刻は午後3時をまわっていた。昼ご飯を食べる、というとかなり遅いかったので、買い置きしておいたおにぎりで軽く軽食を取ったのだった。
その時にテレビから聞こえてきた内容に莉彩は軽く耳を傾けた。
『本日A県で18歳の山田 雪音さんが交通事故で記憶喪失に!!』
『……治療法はまだ未定です。ご両親も悲しんでいるでしょうね』
『ええ』
そういった内容だった。
(こういうのって、やっぱりニュースになるんだ)
莉彩はテレビを見ながらそう思った。もし自分の事がたくさんの人にばれたりした場合、最悪こうなるのではないか、と考えたのだった。
(とりあえずばれないようにしないといけないのかな?)
と思わず自分に聞いてしまうが、答えは出てこないし考えても出てきそうになかったので、莉彩はすぐに頭の中から消去した。
「んー」
莉彩は伸びをして机の前に座り、先ほど店で買ったものを机に並べた。
そしてオーナーが新しく入荷したと言っていたスワロスキーを手にし、桃色に光っていたその光を見て思わず「綺麗だな」と呟いた。
ハンドクリームは普段持ち歩いているポーチの中に入れて、鞄の中にしまい、ビーズは専用の箱に分別して入れた。
ふぅ、と一息ついたところで、携帯にメールが届いていることに気づく。相手は―――美香だ。
『退院おめでとう!そんなに入院してたわけでもないけどね(笑)
とりあえず今週の土曜日開いてる?ガルトクと莉彩とかの話ししない?あたしの家で
とりあえず友里ちゃんはokらしいから、あとは莉彩だけなんだけどどう?』
メールを一通り読み終えると、土曜日に予定はない、ということで莉彩はすぐに返事をした。
ちなみにガルトクはガールズトークの略らしい。
『了解です、時間などの連絡お願いします』
送信が終わると、再び携帯の音がした。一瞬もう美香から返事が来たのか、と思ったが仕事中なのでその可能性は極めて少ない。
―――相手は優真だった。
『土曜あいてるか?』
メール内容は置いておき、土曜日はあいにく今さっき予定を入れたばかりなのだ、無論あいているわけがない。
莉彩は『予定入っているので』といった内容で返信すると、1分もしないうちに再びメールが届く。
『いつ、あいてる』
『わかりません』
『来週の土曜、あけとけ』
『はぁ、覚えていたら』
4回ほどやり取りを繰り返していたが、途中で返事が来なくなったので、莉彩は携帯を近くに置き台所に立った。
夕食の準備をするためだ。
莉彩は料理は意外とできる方だ。きっかけは小学校3年生の時、バレンタインデーに作ったアイスボックスクッキーが意外と評判だったからだ。
「っあ!」
ぐしょっ。という卵が床に落ちた音が虚しくも部屋に鳴った。
莉彩は素早く落ちてしまった卵を片付けて、新しいものを冷蔵庫から出そうとしたが―――どうやら先ほどおと知ら物が最後
ラスト
だったようだ。
(買いに行くか)
と莉彩は心の中で呟いて歩いて10~15分程度の場所にあるコンビニに向かった。
料理を終え、部屋の中をざっと掃除したところでふと時計を見た。時刻はすでに19時30分をまわっていた。
今日は久しぶりなのでゆっくりとお風呂に入った方がいい、そう思った莉彩はお風呂の準備をしてさっさと入ったのだった。
―――次の日、久しぶりだからゆっくりと仕事を行おうか、と考えた莉彩は仕事場へいつもよりも早く行ったが、かなり仕事が淡々と進みすることがなく、ほかの人の仕事を手伝うほどだった。
土曜日、時刻は10時02分。莉彩は美香の家の前にいた。
インターホンを押したのだが・・・・・無反応だった。
ピンポーン
再度インターホンを押す、が、無反応。
いないのかと思って、ドアを開けてみようとしたのだが―――
「莉彩ぁ、本ッ当にごめん!!」
友里が思いっきり頭を下げてくるので「あれはしょうがないでしょ」と莉彩は言った。
美香が氷を持って莉彩に手渡してきたので、莉彩は軽くお礼を言ってそれを受け取る。
先ほど、莉彩がドアを開けようとした時、美香の代わりに返事をしに来た友里がほんの少し前にドアを開き、主に頭部に扉がヒットしたのだった。
「うわっ、ちょっと莉彩腫れてるわよ?!」
美香が莉彩の頭部を見てそう言ったので、莉彩は自分が一番痛む場所にそっと手を当てた。
(本当だ)
「ま、いっか」
「良くない!良くないから!!・・・・いい?女の子の顔に傷が残るなんてありえちゃいけないのよ!わかる?!」
(あり得ると思うけど)
と、心の中で突っ込んだのだった。
―――あれからおよそ3時間。ほぼ内容はガールズトーク化していた、ーーーいや、完璧にだった。
ちなみに昼食は、ピザをとって食べた。
「ねね、莉彩」
突然友里が莉彩に話しかけてきたので、莉彩は友里に顔を向けた。
「あんた、笑う演技とかできないの?」
と、彼女にしては真剣な顔で、そう尋ねてくる。
―――笑う演技。
莉彩にできないはずがない、ここ半年以上、そうやってきたのだから。
「なんで?」
でも莉彩は友里に向かってそう聞いた、そうしなければならない理由があるのか、と思ったのだ。
「なんかさー、テレビのネタとかでたまにあるんだよねー、事故とかでの障害特集!で、その記者とかがとにかく目ざといしうるさいらしくて・・・・・、莉彩は特にまだ何も聞かれてないと思うけどさ、ほら、なんかバカにされたりとかされちゃー許せない!」
友里ははじめは言いにくそうにそう言ったが、だんだん勢いが良くなってきた。
莉彩は以前テレビで見たことを思い出し、彼女が言うことを大体理解したのだった。そして、返事をする。
「できるよ、多分」
そういうと返事を返してきたのは友里ではなく、美香だった。
先ほどまでは驚くほど静かだったので、正直存在を忘れかけていた莉彩。
「え、じゃあちょっとやってみて!」
「・・・・でさーもう、最近間食しすぎてしすぎて太っちゃったんだよねー」
「えーっ!痩せたいなら我慢してくださいよ」
あれからおよそ2時間。
はじめは問題的な雰囲気で進んでいた会話が、段々本格的な会話に戻っていった。言葉は少し辛口なときもあるが、演技的な意味で笑顔を作るのはここ半年、多かったのだ。
結局、恋愛話
ガールズトーク
らしい話ははじめくらいで、あんまり目的が達せてないような、という莉彩の呟きは誰の耳にも届かずにかき消されたのだった。
あーごめんなさい!!
物語が進まない。
ついでに次話はいきなり新キャラ視点です、男人です。
結構書きたかった部分だったので......
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