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感情喪失  作者: 娑紅羅月
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食事2






 莉彩は机の右端に置いてある箱から箸を手に取り、料理を食べ始めると、優真も続けて食べ始めた。

彼が食べ始めたのを確認した莉彩は、直接言おうと思っていたことを口にした。


「本・・・・・有難う御座いました」

「ああ、俺も一冊持っているから構わない」

あれをどうやって2冊も手に入れたんだ、と内心思いながらも「そうなんですか」と会話を流し、コップの中の水を飲んだ。


「あの本、好きだっただろう?」

「はい、あのシリーズの本は結構気に入ってました」

「俺も本はあまり読まないがあれは好きだったからな」

「そうなんですか、人気ですからね」

「ああ」

と、会話をすると、彼は何かを思い出したような表情をした。



「そういえば、あれ映画化してたの知ってるか?」

「知ってます。確か主演は高橋彰で」

「見たか?」

「いえ、もうすぐDVD出るそうなんでレンタルしようかな、と思ってます」

確か2ヶ月くらい後だったはず、と思い出した。以前映画を見に行こうかと思い友里に聞いても「興味ない」と言われてしまい、美香に聞いても「初日に行ったの、ごめんね」と謝られてしまい、どうしようかと思っている間に上映期間が終わってしまったのだった。


「そうか」

と優真は言い、何故か不思議そうな表情をした。


(なんだ?)

と莉彩は首を傾げた。

先程から、優真がちらちらと莉沙の方を見てくるのだ。前の3倍以上見ているような、と莉沙はそんなどうでもいいことを考えていた。



料理を食べ終えると、2人はデザートを注文した―――来た店員は、1番最初と同じだった。



流石に注文だけなのに数人でくるわけにはいかないと悟ったのか、それとも他の人に怒られたのかは本人達にしか分からないが、莉彩は注文を優真に全て任せて、曇りかけている空を窓からぼんやりと眺めていた。



「・・・・・・・てたな」

「えっ?」

あまりにもぼーっとしてたので、優真が話しかけてきていたのに気がつかなかった。

莉彩は彼の方へ向き、「聞いてませんでした」と謝罪した。


「そういえば今日は雨が降るって言ってたな・・・・・って言っただけだ、ちゃんと聞いてろ」

「ぼーっとしてたんで・・・・・まぁこの勢いだとあと1時間程度で降りそうですね」

と空を見ながらそう言った。


空から目線を離し優真を見ると、ばっちり2人の視線が合った。

お互い何も言わずに見つめ合っていたら、店員が来て、「お待たせしました」と言ってデザートを置いて行った。


ちなみに店員は別の人だった、やはり怒られでもしたのだろうか、最も、莉彩には興味がないことだが。


「食うか」

「はい」

と言い、ほとんど無言でデザートを食べる。


「雨降ってきたな」


彼にそう言われて外を見てみると、本当に雨が降っていた、内心傘を持っていないためどうしようか、と考えたが、彼に、送っていくとか言われかねないので「そうですね」と莉彩は答えた。

そう答えると、優真は莉彩の方をじっと見た後に、こう言った

「傘持ってないだろう」と。

「まぁ、持っていなくても駅近いですし」

そう言って、残り少しだけだったチーズケーキをフォークで刺して口に運んだ。


「送ってく」


やっぱりかと思ったが1つ疑問に思ったことを口にする。

「今日車でしたっけ?」


たしか病院からは歩いて来たはずだ。

例え車で来ていたとしても、病院へ行くならこのまま駅へ向かった方が倍近く早いのだ。

「まさか・・・・・タクシー呼べば良いだろ」

「いえ、大丈夫です。1人で帰ります」

莉莉彩は別に料金がかかるとか時間が勿体無いとかではなく、ここを出てから行きたい場所があったのだった。


優真が気にするな、と言いかけると、彼の携帯が鳴りだした。


チッ、と小さい音で舌打ちしてから電話に出た。

「はい・・・あぁ・・・・分かった、今から向かう」

出た瞬間に口調が変わったのを聞くと、おそらく同僚だろう、と思った。

「・・・そう思うなら呼ぶな」

と彼はそう言って電話を切ると、莉彩の方に向き直った。


「悪い、今から仕事」

「わかりました」

「喜んでないか?」

「知りませんよそんな事」

莉彩がそう言うと、優真は笑いながらお金を払って「じゃあな」と言い残して店から出て行った。

(お金払ってった・・・・・いつもそうだっけ?ま、どっちでもいいや)

と心の中で思いながら、莉彩も店を出たのだった。



 ザァァァァァー。っと雨が降る中、莉彩は出来るだけ隅を通り雨がかからないように歩きながら行きつけの店に着いたのだった。

店の中に入ると、カランカラン。という音がして、すぐに店の人が出てくる。

「はーい・・・・・って、りっチャンか」

「久しぶり、おじさん」

出てきたのは40代半ばのオーナーだ、初対面でもすごく話しやすい人である。


「3ヶ月ぶりだったかなぁー」

「あ、確かそうかな」

最近は、優真と仕事の時間で暇がなかったから行けなかったのである。



「新しいの入った?」

莉彩は、棚のものを見ながらオーナーに話しかけた。

「ああ、スワロの薄桃入ってるけど・・・・・そういえばまだ並べてないなー」

「あ、じゃあ4袋位もらっていい?」

「あいよ」

と言って中に入っていった。



莉彩の趣味はアクセサリー作りだ。7歳の頃、親が少しだけやっていたのをみて真似して始めたのだが、思った以上に楽しかったのだった。



莉彩は棚の上の方に置いてあるハンドクリームを取ろうとした・・・・・が届かない。

何故ここにハンドクリームが置いてあるかは謎だ、以前オーナーに聞いたら「そういえば、なんでだろう」と答えただけだった。

(台とか用意してくれないかな)


ふぅ、とため息をついていると、奥から莉彩の頼んだものを持ってきたオーナーがひょいっと棚からとってくれた。

手が届かないことを絶対からかわれると思ったのだが、何も言われなかったので莉彩は少し首を傾げたのだった。


普段莉彩の身長の事をからかうような人だったはずなのに、今日のオーナーはそれをしなかった、莉彩は何かあったのだろうか、とは思ったが聞いても自分には関係ないと、声には出さなかった。




(雨、止まないな・・・・・)

しばらく店内を回っていれば雨が止むこと思っていたが、それどころか一方に強くなっていくので、お金を払い、あきらめて家に帰ることにした。



 駅に向かって歩いていく途中、どこかで傘を買えばよかった。中で人に当たったら相手濡れるよな。と考えていたが、この時刻ならそんなに人もいないし大丈夫だろう、と考え直しそのまま駅に乗り込んだのだった。




やはり電車の中はほとんど人もおらず、莉彩がずぶぬれでも人に当たることはなかった。




電車を降りると、莉彩は小走りで家に帰ったのだった。






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