食事 1
※需要なミスを本日3月28日をもちまして改善させて頂きました。
気か付いた方がいらっしゃいましたら広い心で流していただけると非常にありがたいです。
後半1000文字弱は美香視点です。
「・・・・優真さん」
優真は莉彩の事を見下ろしていた、身長差のためしょうがないことなのだが。
しばらく2人は見詰め合っていたが、いきなり彼は莉彩の手を取り、歩き出した。
莉彩は頭の上にクエスチョンマークを浮かべながら歩き出す。
(手、繋いだこと、あったっけ?)
おそらく初めて彼と手を繋いだのだ。首を傾げながら思う、引っ張らなくても別に逃げないし、口で言ったら自分で歩くのに、と。
他の通行人にちらちらと見られていたが、優真の事に気が付いた者はいなかった。
今日は、メガネと帽子を着用していた、おそらくだれに聞いても間違いなく似合っているといえるだろう。
しばらく無言で歩いていると、前触れもなく優真が口を開いた
「手、すごい乾燥してるな」
「今、ハンドクリーム切らしているので」
「俺の貸そうか?」
「結構です、貴方の物を使う気にはなれません」
「ひどい言われようだ」
優真は少し笑みを浮かべてそう言ったが、本当にひどいとは微塵も思っていそうにない、むしろ楽しんでいるように見えた、そんな彼に莉彩は、「そもそもハンドクリーム使うんですね、意外です」と、告げると、彼はふっ、と鼻で笑い、「この季節は特に乾燥するからな」と言った内容で返してきた。
立ち止まることなく、莉彩の手を引っ張って歩いていく優真に、莉彩はどこに行くのか疑問になり、足を止めて彼の手を引っ張った。
「どうした?」
いきなり立ち止まったことに不思議に思った優真は、首をかしげて莉彩の方を振り向いた。
彼はさっきから迷わず歩いていることから、おそらく行き先は決めているだろう、と思った。
「どこに行くんですか」
と、聞いた。
そういうと彼は、忘れてたといわんばかりに「ああ」といった。
「朝食、まだだろ?」
「はい?」
思わず聞き返してしまった。
問われた意味にすぐ気が付いた莉彩は、すぐ質問に答える
「まだです」
家に帰ってから、昼食兼朝食を取ろうと考えていたのだった。
ちなみに朝、寝坊した時などには、仕事場で、少し多めに食事をとって、一日2食しかとらない、ということも数多くあった、その度に、美香や友里から「体に悪い!!」と叱られていたのだった。
それ位莉彩にとって、残業だけは御免被りたいものだったのだ。
優真は莉彩の手を引っ張って再び歩き始めた。
「だからちょうどいい、俺もだから」
引っ張られて転ぶわけにもいかなかったので、莉彩も引っ張られながら歩き始めた。
何がちょうどいいのか、言葉足らずだが、莉彩は予想を口にする
「どこかで朝食をとろう、って解釈でいいですか」
「ああ」
優真は頷いた。
足取りからして行先はおそらくいつもと同じところだろう、彼と食事するときはほとんどあの場所だったので、莉彩は心の中で確信したのだった。
その場所に着くと、やはり予想的中、いつものファミレスだった。
どこかの豪華レストラン、などではなく、ごく一般的なファミレスなのだ。
そして席に着くと、2人は別々にメニューを手に取り、無言で料理を選択する。
「決まりました?」
「ああ」
2人ともが料理を選択し終わると、店員を呼び注文をした、呼んだ店員がギャルっぽく、優真しか見ていなかったので莉彩は「優真さん、まとめて注文お願いします」と言って窓ガラスから外を眺めていた。
一方彼は、面倒くさそうな素振りなど一切見せず、完璧なる紳士を演じて注文をしていた・・・・そして店員の頬が赤くなっていたのは言うまでもないようだった。
しばらく沈黙が続いていたが、優真が突然口を開いた
「大丈夫か?」
「は?」
いきなりそんなことを聞かれた、莉彩はけがなど一切していなかったので、当然何の事を気にしているのか疑問に思ってしまう。
「指」
優真は肘を机につきながらもう片方の手で莉彩の指―――小指を指差すと、莉彩は彼の言いたいことを察した。
莉彩の小指は外側に向かって真ん中あたりから曲がっているのだ。
「これは生まれつきです」
「生まれつき?そんなこともあるのか」
彼はさらに莉彩の小指を凝視した。
「最も、私自身が小指が曲がっていることに気が付いたのも、中学生の時でしたが」
莉彩は懐かしいと思いながら、手を掲げそう言った。
(初めて気が付いたときは、骨折したかと思ったけ)
心の中で昔の自分を思い出していた。
「生まれつきなら、俺もあるんだよな、ここ、触ってみろ」
そういって出してきた肘を触った。
「変な凹凸がありますね」
肘近くの手首よりに、たんこぶのようなものがあったのだ。
「そうだ、俺の場合は一昨年になって初めて気が付いたがな」
優真は手を戻しながらそう言った。
「気が付くの遅すぎですね」
「お互い様だろ」
莉彩の言葉に優真は突っ込んでくる、彼に比べれば視差は気づくのは早かったが、一般的には気が付くのは遅いだろうと思った。
「・・・・・・ま、そうですけど」
莉彩がそう答えると、優真はぽかんと口を開けたまま莉彩を見ていた。
「「お待たせいたしました」」
先ほどのギャル店員が、2人がかりで料理を持ってきた、明らかに1人で運べる量だが、おそらく彼目当てだろう、と莉彩は思ったのだった。
対して彼は、何故か固まったまま莉彩を見ていた。
「どうも」
優真が一向に動く気配が見えなかった莉彩は、諦めて彼の代わりに店員を下げさせた。
去っていく彼女らは、「あの子、妹かな?」「そうでしょ」と会話をしていたのを、莉彩は聞かないふりをしていたのだった。
莉彩はお盆にある料理を、自分の前と優真の前に置き「食べますか」と言って料理に手を付けた。
――――――――――
病室から出ると、安堵のため息を漏らした。
美香にとって莉彩は、妹のような存在だった。実際妹もいたが、小さい頃に、交通事故で亡くなっている。
非常に2人は仲が良かったのだ。そして、その妹は非常に明るくて、優しかった。その頃の美香とは大反対だったのだ。
妹が亡くなると、美香は一つ心で決意をしたのだった。
仕事歴5年目、莉彩が入ってきたときに、一瞬妹が戻ってきたかと思った位似ていたのだった。
美香はそんな莉彩からのメール内容を読み、開いた口が一瞬閉じなくなった。
(感情が消えたですって?!)
記憶喪失、なら理解できないわけではない、だが感情とはどういう意味だと、思考回路が回らなくなってしまう。
誰かに相談しようと思ったが、莉彩は広範囲で人と付き合いをするようなキャラではなかった。妹とはひとつ違う部分だ
美香は彼女と特に仲の良かった友里に声をかけた。
「友里ちゃん、莉彩からメール来てる?」
仕事中なため小声で話しかけた。
美香の言葉を聞くなり、友里もはっ、とした顔つきになる、やはり来ているようなので、続けて話をする
「今日仕事が終わってから会いに行こうと思ってるんだけど、友里ちゃんはどうする?」
「行きたい気持ちはやまやまなんですが・・・・・・今日も残業でー」
そういって彼女は笑っていた。
そういえば彼女は残業率ナンバーワンだっけ・・・・?と内心美香は思い出し、心の中で苦笑した。
友里が残業していない日を見てみたいものだ。
「あたしも今日仕事急いで片づけるから、手伝ってあげるわ」
ため息交じりでそういった。
すると友里はうつむきがちな顔をあげて、目を輝かせた。
「本当ですか?助かります!」
彼女はすごく嬉しそうな顔をしてそういった。
(仕事するか)
友里に軽く挨拶をして、美香は仕事に戻った。
仕事を終えて、2人で病室へ向かうと、以前病室を訪れた時には気付かなかったが、莉彩がほぼ無表情といった顔をしていたのだった。
こんなことが起きるなんて、何か精神的にあったに違いない―――そう革新した美香は、絶対彼女を元に戻す!という目標を立てたのだった。
初めて別視点入れました!
優真視点もいつかは入れたいのですが、大きなネタバレ入ってしまうので、もし希望の声などがありましたら、半ば頃に入れようかと思っております。