退院
今回はかなり飛ばして話を進めてしまいました。
なかなか思い通りのテンポで話が進めていけないのですが、ちょくちょく改稿をしていき、改善していきたいと思います。
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増えているたびに、よし!頑張ろう、と思わせていただいております。
「明日にはもう退院して大丈夫です」
「分かりました」
医師の検査で莉彩は明日退院できることになった。
カルテ業務員は、医師とは特に接点がないので、会話も必要以外はほとんどなかった。
「打撲程度で後はほとんど無傷で・・・・・当たり所が良くてよかったです」
「私もそう思いました」
莉彩が目覚めてすぐ思ってことをやはり医師も思っていたようだ、交通事故で打撲で済むようなことはめったにないだろう。
本当によかった、と莉彩は思う。
そして退院の予定時を午前10時にした。
「では」
そう言って医師は病室から出て行った。
「やっとか・・・・・・」
ようやく退院できる、と莉彩は呟いた。
窓から殺風景の広がる景色を見て、風に当たりながら、莉彩は携帯を手にして、友里と美香に「明日退院できる」といった内容のメールを打った。
メールが送信された後、新着メールが来ていたことに気が付いた、送り主は、優真だった。
昨日の返信だろう、と莉彩はメールを開封した。
『構わない
それより、退院日はどうなった』
やはり昨日の返事のようだ。
返信に、もう一度お礼と、退院日を書いて送る。
『有難う御座います
退院は、明日できるそうなので、午前10時位に』
両者とも非常に愛想のないメール内容だ、今時の人とはかなり言い難い。
莉彩にとっては、どうでもいいことだが。
送信完了と画面に出たことを確認し、莉彩は携帯を机に置き、ベッドに座った―――直後、携帯にメールが届く、送り主は美香だった。メールの内容を確認する
『わかった、でも案外早いのね
退院したら、3人で作戦練るわよ!!』
という内容を見て、3人のもう一人は友里だと悟る、しかも半強制口調なので参加しなければいけないだろう。
美香は面倒見も良く、人懐っこい、非常に良い性格だ、だから知り合いがかなり多いのだ。
出会ったのは2年前、それでもかなり親密になっている、仕事で上手くやっていけるのも彼女のおかげだろう。
「了解です」とメールを返信した。
友里からのメールが来たのはそれからおよそ10分後だった。
『あ、そうなの?早いもんだねー、良かったじゃん
体は頑丈なんだ、背は小さいのにぃ~(笑)』
さらっと嫌味を言われたが、やっぱりみんな入院期間が短って思うのか、と別の事を心の中で思っていたのだった。
返信が終わると、窓の外に見える飛行機雲をぼーっと眺めていた、今日はいい天気だ、と莉彩は久しぶりに天気のことを考えていたのだった。
昼食を終えると、やることがなく暇だったため優真に貰った本を手にして、読み始めた。
本を読むことは、小さいころから好きだった、入り込んでしまえば、周りの声が聞こえない時もあった、それでよく母親に怒られていたのだ。
だがその甲斐あってか、莉彩は特に漢字が得意だった、漢字検定を、準1級まで所持しているのだ。
気が付いたら、午後5時30分を過ぎていた。
3度目を読み直し終わると、時間の流れを忘れていた莉彩は本を置いた。
そして目を閉じて本の内容を考えていた、振り返り、というやつだろう。
最後に、主人公は、呪縛から抜け出せることができたのか、これが最大の迷宮だろう、バットエンドかハッピーエンド・・・・・これを考えるのは読者だろう。
(私だったならば――――――)
「・・・・・・・・・・」
莉彩はポツリと呟いたのだった。
次の朝、病室を出る準備を整え終わった莉彩は、またしても窓から外を眺めていた、何かを眺めるといった決まったものではなく、景色全体をぼんやりと眺めていたのだった。
病室から出ると、受付を通って、病院を出る。
時刻は9時58分、ほぼ予定時刻だ。
今日はタクシーでも呼んで家に帰ろうと思いながら、駐車場を歩いていたとき、目の前に人影が現れた―――
莉彩は、その人の名前を呼んだ。
「・・・・優真さん」