訪問者
4月20。身長諸々設定をアドバイスにより変更。アドバイス感謝です。
―――――コンコンコン
ドアのノック音で莉彩は目を覚ます。
入室許可をしようと思った瞬間に、勝手に扉が開いたので訪問者に予想がついた。
莉彩はベッドから起き上がり訪問者を確認したところ、やはり予想通り。
莉彩が寝ているベッドを見つめ、口を開く
「暇そうだな」
普通、最初に挨拶をすることが常識だが、この男には常識はないんだろうな、と莉彩は思い返事をする
「そうですね、貴方も暇そうで・・・・・ついに仕事減りました?」
返した返事が、棒読みになるが両者は気にしなかった。
莉彩は縛っていた髪がほどけかけていたので、ゴムを外し、縛りなおす。
優真はフッ。と鼻で笑う
「いや、むしろ前よりも忙しいくらいだ、今はドラマ撮影が終わって2時間くらい休みをもらってる」
彼は得意げに言った。
彼、山内優真は芸能人、俳優を仕事としている。
もちろん芸能人、ということでスタイルも顔も文句なしに良い。
それだけではなく演技力もずば抜けて良かったのだ、その実力はオーディションで、即受かれる位素晴らしいのものだった。
そしてドラマの主演や、映画に出たこともあり、莉沙も少し見たことがあった。
ちなみに年齢は23歳、莉彩の2歳年上だ。
「そうですか・・・・・・で、その休み時間にどうしてここへ来たんですか」
忙しいと言うくらいならここに来なければいい、と莉沙は思ったのだ。
すると彼は、スッ。と莉沙に袋を差し出した。
何が入っているのか警戒して、袋を受け取らずにいたら、優真がすかさず説明してくれる
「もうすぐ退院するとは思うが・・・・・常識だろ、見舞いだ」
「はぁ、有難うございます」
莉彩は袋を受け取った。
常識があるなら先に挨拶をしてはいることもして欲しいものだ。
彼は椅子に腰を掛けた。
まだ帰るつもりはないようだ。
「で、いつ頃退院するんだ?」
30秒程沈黙が続いた後、優真がそう聞いてきた。
莉彩は、縛り直した髪型を確認していて返事が遅れる。
髪型へのこだわりは日課だったため欠かせなかったのだ。
「明日か明後日だと思います」
莉彩は答えた。
それを聞いて彼は少し驚いた表情になった。
「・・・・・思ったより早いな。怪我はそんなに軽いのか」
思ったよりはとはどれ位を想像しているかは置いておき、今の莉沙を見れば大抵予想がつくだろう。
莉彩は頷いた。
「退院したらすぐ仕事通いか?」
「他にする事と言えば散歩または寝ること位ですし、むしろ今すぐ仕事させて欲しいくらいです」
莉沙は淡々と言う。
彼はそれを聞くと少し笑い、こう言った
「たくさん寝れば身長伸びるかもしれないな」
と。
以前の莉沙にとっての地雷だ。
今までいろんな人に身長が低いから「高校生?」とか最悪の場合「中学生?」とまで言われた時はついにキレた、そしてこう言ったのだった。
「未成年者ではありません!成人してます!!」と、心底大きな声で。
21歳の平均身長は158センチメートル、体重は49キロ。
一方、莉彩の身長は147センチメートル、体重が42キロ。
平均値よりも下であり、その上童顔っぽいというオマケ付だ。
そのせいで、小学校4年生のころから皆に「小さいね」と下級生扱い。
背の順は勿論不動の一番前。
最近は、かなり遅れての成長期か、3か月で3センチメートルも伸びて、以前ガッツポーズをしていた。
それでも、仕事仲間からは上から目線での「可愛い」だった。
要するに、莉彩は子供として見られることがあったのだ。
莉彩は口を開く
「そんなので身長が伸びていれば誰も苦労しないと思いますが?」
よく寝ること、そもそも莉彩は中学校3年生まで寝る時刻は9時より前だった。
しかしよく寝ても伸びないものは伸びない、という結論が出た。
彼の方を見つめてながら莉彩は思う。
(相変わらず、身長高いな)
優真の身長は180センチメートル。
莉彩との身長差はおよそ30センチメートルもある。
「そうだな」
と返事が返ってきた。
さらに彼は続けて話し出す
「親に連絡はしないのか?・・・・・確か今はニューヨークにいなかったか?」
覚えていたのか、と莉彩は一瞬思ったが、すぐに返事をした。
「大事には至らなかったし、あまり迷惑をかけたくないもので」
莉彩の両親は2人でニューヨークで仕事をしている。
本来は莉彩も行く予定だったが、直前にインフルエンザにかかってしまい、しばらく寝込んでしまったので断念したのだった。
「じゃあ、仕事仲間とかには何と言って説明するつもりだ」
「仕事場はここなので、このことはみんな知ってると思いますよ」
先程から質問攻めにされる。
(以前から彼はこんなによく喋る人種だったか・・・?)
莉彩は心の中で呟いたのだった。
「違う、こ・れ、の事だよ」
彼は胸をトントン。と叩いた。
それを見て莉彩は彼の言いたいことが理解できた。
一応莉彩は頭の回転は良いのだ。
莉彩は質問に答える
「直接言うのもアレなので、特定の人にメールで伝えておこうと思っています」
特定の人とは、友里と美香の事だ。
そもそも、それ以外の人とは連絡以外でメールをしたことがなかったのだ。
莉彩に返事に、彼は少し驚いた。
「隠すって、選択肢はないのか」
ため息交じりにそう言ってきた、莉彩にはなぜ隠す必要があるのか理解できなかった。
優真はスッ。と立ち上がり莉彩がいるベットに寄って、ベッドに腰を掛けた。
ミシッ。っと言う音が室内に響く。
「やっぱり前よりこっちの方が話しやすいな」
「は?」
彼が唐突に変なことを言ったので、莉彩は思わず聞き返してしまった。
ホストみたいなことを言われたので、莉彩はもしかしたら別人じゃないかと思っていた。
「別に変な意味じゃない」
とさらに付け足してきた、誰もそんなことは言ってないのに、だ。
今日の彼はどうかしてる。
「疲れてるんですか?」
と莉彩は彼に顔を近づけてそう聞いた。
換気のため開けておいた窓から入ってくる風でカーテンが揺れる音が少しの間続くと、優真は「そうかもな」と言い、ベッドから立ち上がり、ドアに向かって歩いて行った。
「せっかく俺が持ってきたんだから、中身位見ておけよ?」
と言い残し、部屋から出て行ったのだった。
優真が出て行って約5分、莉彩は彼にもらった物を開封しようとそれを手に取った。
案外大きいものだ・・・と思いながら莉彩は袋を開封する。
入っていたものを見た莉彩は一瞬固まった。
「・・・・これは」