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感情喪失  作者: 娑紅羅月
2/17

夢ノ中


お気に入りをして下さる人数に驚きを隠せませんでした。本当に有難うございます‼


今回は、過去の話です。

一応これからに繋がるのでさらっとでも読んでいただけると嬉しいです


これからは、5日以内に一度更新のペースで書きます、(早め心がけます)


 





土砂降りの雨が降っていた。

莉彩はさしていた傘を握る手が震えていることに気づく。

彼が他の人と抱き合っているシーン。一瞬莉沙は固まる。


―――なんだこれ?


今日は雨のためか普段よりも人が少ないせいか、莉彩が傘をガサリと落としたのにも誰も気がつかなかった。



雨よりも生暖かい【何か】が頬を伝う。

莉彩にはこみ上げてくるものを止める方法はわからず、ただ呆然とその場に立ち尽くしていた。




どれ位経っただろうか。

髪の毛や服がずぶぬれになっている。


莉彩は傘を拾うのも忘れて、その場から逃げた。


電車に乗りながら、唇を強く噛み、さすがに人前では泣く事を抑えたが、家に帰った瞬間、我慢してきたものが溢れる。

「......っうぁぁ」

玄関に、服や髪から落ちる水と混じって涙が床に落ちた。

莉彩は、服を着替え髪を乾かして、そのままベッドへ向かって寝てしまった。




目を覚ますと、時刻は午前4時4分。

体のだるさを押さえてベッドから降りると、一瞬立ちくらみが起こりベットに座り込んだ。

「・・・・っ」

色々と込み上げてくるものもあったが、我慢しなければ昨夜の二の舞になりそうなので、何とか堪える。



ある程度落ち着くと莉彩はベッドから降りた。

出勤時刻は9時、時間的にかなり余裕があるためお風呂に入ることにした。


普段は面倒なのでシャワーのみで済ませてしまうが、時間もあるし疲れもあったので湯船につかると、大きくため息をついた。

湯船に浸かったまま、体操座りをする。

“自分がもっと素敵な女性だったなら”



莉彩は思う、自分は、彼の玩具にすぎない、と。

彼の事が好き、何故この人を好きになったかはわからないが、利用させても構わない、少しでも近くにいたい。

と思う裏腹、傷つきたくないから別れたい・・・・・と。


だがどう考えても、彼に別れを告げる勇気が莉彩にはなかった。

自分の伝えたい思いすら言えない、ただ寄り添って笑うだけ。

そんなことに何の意味があるのだろうか。

莉彩は思わず自分に笑う。


だが今は、それでもいいから彼と一緒に居たいと、

(なら私は、貴方の隣で、笑い続ける・・・・・この思いが続くまでずっと、何があっても絶対に泣かない)

莉彩は心の中で決意する。

彼の前で涙を見せれば、負けのような気がしたから。



風呂を上がり、仕事に行く準備を終えた莉彩は、化粧をした時には気づかなかった事に気づく。

化粧自体に時間をかけることはない為、その時は気づかなかったのだろう、化粧用の鏡では顔全体は見えず比較もできないのだ。

気づいた理由は髪の手入れをした時だった。

莉彩はほぼ毎日髪型を少し低めのポニーテールにしている。

個人の好みで高すぎるのも低すぎるのも嫌だったからその間をとったのだ。

鏡で高さを確認した時に気づいたのだ。

観察力は良い方だ、少し見慣れたものなら少し違いがあればわかる、まぁ、目元が腫れていると言っても、本の僅かだ、他人が気づくとは思わないので特に対処はしなかった。



仕事場につくと、一番乗りで、雑誌を読んでいる友人の友里に会う。

彼女はいつも、出勤時刻のギリギリに来ていたので、一番最初に来ていたことと、髪を短く切ったことに少々驚くが、すぐに思考を切り替えて、彼女に挨拶をする。

「おはよ、髪切ったんだね」

「おはよ、まぁ、気分転換にバッサリ切っただけだよ・・・・・あ、ちょっとこの人超イケメンじゃない?!」

そう言ってすごい勢いで雑誌を見せてくる。

友里は正直面食いだ、以前莉彩が、「前も同じこと言ってなかった?」と聞いたところ、「イケメンなら何でもオッケー!」と、返されたので間違いなかった。


「え、うん、そうだね」

「反応薄ーい」

何かあるたびに同じことを聞かれたら同類以外はほぼ間違いなく同じようなあしらい方になるだろう。

そもそも莉彩は、芸能人やモデルなどにはほとんど興味がなかったのだ。


「莉彩っていつもこの時間に来てるの?」

莉彩が自分の席に着き、パソコンを開き電源を入れたところで再び友里が話しかけてくる。

時計を見れば時刻は7時28分。

「そうだよ」

莉彩は軽く返事をした。


普段は7時30分着を目指して出勤しているが、今日は早起きだったこともあり、いつもより早い。

家にいてもすることがない訳ではなく、気分が沈んでいく一方だったので、気分転換もかねて早く家を出てきたのだ。

「そんなに早く来て何してるの?意味ないじゃん」

早く来てるじゃないか、と思わず突っ込みそうになるが、何か言われるのも癪だったため、言わなかった。

「残業したくないから、スムーズに仕事が進むように下準備」

莉彩が行う仕事、医療事務のカルテ業務はパソコンを主に使って仕事をする。

一通り使いこなせるようにはなったが、仕事量の多さに残業者も少なくはない。

特に患者のリスト消去等は厄介なのだ。

ちなみに友里は残業者の一人である。

「ふーん、マメだねぇ」

隅の方のソファーに寝転がりながら、彼女はそう言った。



「おっはよー!・・・・ってあれ?友里ちゃんが居る!珍しいね。しかも髪切ったんだ」

次に美香が出勤してくる。

やはり思うことは同じなようで、友里がこの時間にここにいることを疑問に思っていたのだ。髪型どうこうの前に。

彼女は早く来ていつもコーヒーを入れて飲んでいる。

以前何故毎日飲むか聞いたときに、「金欠だから」と述べていた。


彼女は仕事の準備などしなくても、残業になることはほとんどなかった。



出勤時刻の30分前になると、ほとんど人も集まり、皆仕事を始めていった。




昼食の時間になると、ほとんどの人が席を立つ。

莉彩も区切りのいいところで、動きを止めたところ、後ろから友里に話しかけられた。

「莉彩、今日外でご飯食べない?」




外のベンチに2人で腰を掛ける。

「昨日あたし別れたんだよねー」

「えっ」

友里が話しかけてきた内容に驚き、気の抜けた声が出た。

彼女は1年前から付き合っていたのだ。

彼氏は、顔もスタイルを良いらしく、友里の好みドストライクだったらしい。

負けず友里もスタイルも顔もいいので、お似合いだったのだろう。

だからこそ、気になった。

「どうして別れたの」


「他に好きな子ができたんだって、だからあたしとはもう付き合えないってさ。最後に思いっきりビンタしたから結構スッキリした」

苦笑しなからユリは語る。

「そうなんだ・・・・」

莉沙は気まずそうな顔をした。

そして同時に思う。だから髪を切ったのか、と。


「ま、あたしは良いの!あんた、彼氏と何かあった?目元腫れてるよ」

「へっ?!嘘っ?!そんなに分かる?」

先程よりさらに高い声が出る。

友里は、莉彩と反対で観察力がなかった。

だから彼女にバレたと言うことは他の人にもバレていても全然おかしくない。

「いや、他の人は気づいてないと思うけど・・・・ってか8年もの付き合いなんだから気づいて当然でしょう」

彼女は当然のように告げた。

莉彩は顔を引きつらせながら笑う。

聞かないで欲しい、という願いが届いたのか、友里は口を開く

「まぁ、無理には聞かないよ、でも一人で抱え込んでないで誰かに発散してもいいからね。もちろん、あたし歓迎」

ニコリと笑う友里につられて、莉彩も「ありがとう」と言って笑ったのだった。













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