目覚めて、出会う。
始めまして。
初めて小説を書かせてもらいます。
話の進め方とか全く分からず、誤字脱字もあると思います。
ストーリーも、いまいちかもしてないですが、お付き合いいただけると嬉しいです
少し前を歩く彼に話しかける
「どうしたんですか?優真さん?」
彼は少し間を置き、口を開く。
「いや、何でもない」
「本当ですか?疲れてませんか?」
莉彩は悪戯っぽく微笑んだ。
初対面の人から見れば、ただの真面目そうな人だ、外で彼はそれを演じているだけだが
彼は無表情と言えば無表情だが、莉彩は少し一緒にいるだけで少しの違い、に気付いていたのだ。
いつもより機嫌が悪そうだった、大方仕事でうまくいかなかったのだろう、と莉彩は思った。
「無理しちゃダメですよー?」
という他愛もない話をしながら2人はレストランに入った。
食事を終え、彼は忙しいようなのでその場で別れた。
莉彩は、自宅へ戻るため電車へ向かっていたところだった。
この辺は人通りがものすごく多い、とまでは言わないが、多少は通行人がいる。
20時46分
この時刻は仕事帰りで通行人が特に多い時刻。
人々が流れていく刹那、一瞬見えた人影に莉彩は立ち止まった。
―――またか。
彼、優真が他の女と抱き合っている姿が視界に入る、女の方の顔は見えないが、彼はしっかりと目に映る、これで何度目だ?と思ったが、回数も回数なのでもはや覚えてすらなかった。
込み上げてくるものをぐっと我慢して、莉彩は歩き始めた。
電車を降りて、自宅まであと十数分程度だった、信号機が青になり、莉彩は歩き始めた。
下を向いていた莉彩は、聞こえてきた叫びに思わず振り向いた。
「危ない!!」
―――と、言われた瞬間に莉彩は驚き、強く目を閉じた。
目覚める。一瞬自分の置かれている立場が分からなくなるが、今いる場所・・・・・白い部屋、自分の寝ていた白い寝具、すなわち病院、今ここにいる自分をすぐに理解した。
交通事故にあったのだ。勿論莉彩が信号無視をしたというわけではない。車の方が信号無視をしていたのだ、間違いないが、残念なことに犯人は、見ていなかった。
そして車にぶつかる寸前に莉彩が思ったことは、自分の視界がスローモーション状態だった、何とも不思議な感覚だったとともに、体に激痛が走った、と言う所までは覚えていたが、そこで莉彩の意識が飛んでしまったのである。
目が覚めたまま、莉彩はずっと上を向いたまま、自分に何が起こったのか考えていた、上を向いたままなのは、交通事故での怪我のせいで体が上手く動かないからである。
上を向いたまま、莉彩は疑問に思った。
体は悲鳴を上げ、無論自身も痛いと感じている。
だが、それ以外に莉彩が思うことはなかった――――いや、思えなかったと言った方が正しいのだろう。
よく言われる記憶喪失、ではない。一瞬その可能性も考えたのだが、莉彩は自分の個人情報、友好関係もしっかり覚えている、その人たちに以前どんな感情を抱いていたかも。
―――では今は?
莉彩は自分自身でもどうなっているのかよく分からなかった。
悲しい、嬉しい、楽しい、悔しい、苦しい・・・今まで起きた出来事の何を思い出しても何も感じなかった・・・・・そう、莉彩が愛していた男が・・・・・――目の前にいる男が2股をかけていたことを思い出しても、だ。
以前はどれほど苦しんでいたか、悔しかったのだろうか。
今の莉彩はそれさえどうでもよく感じた。
むしろ、自分に等構わず向こうの女の方に行けばいいのに、とでさえ虚ろに思っていたのだ。
「今の気分は如何だ?」
どうやら彼は莉彩が目覚めていることに気が付いた様子だ。
話しかけてきた彼は、いかにもいい気味、と言わんばかりに聞いてくる。
彼は、以前もこのように莉彩には冷たかった。
そして莉彩は、問われたことには答えることができない。
―――どう思っているか?
莉彩は重い口を開く
「どうも思ってないけど」
彼は眉を顰めた。
これはもちろん事実。莉彩にとっては真剣以外の何物でもなかった・・・だが、本人以外は別なわけだ。
他人からしてみれば、交通事故にあったのだ、苦しい、怖い、悲しいと、負の感情が出てきて当然だと思うはずなのだ。
だが、今の莉彩には感情がない、勿論本人が望んだわけではない・・・・・だが、以前のまま、彼に裏切られ続けること苦しい、という感情はいつまでもあっただろう。
「そんなわけないだろう」
そう、彼がこう思うことも自然なことだろう。今まで自分にあれだけ甘えて来た形だけの彼女が、自分に対してとても素っ気なく、いかにも無関心にそう答えたのだから。
だが、感情のない今の莉彩には、結論しか出てこない、言い訳とかそんな感情、無いのだから。
「本当に、何とも思わないんです、もし一言言うならば、体が重いです」
勿論、感情はなくとも、神経はあるのだ、痛みは感じる。
さらに、彼は不思議な顔をする。
反対に莉彩はそんな彼をまっすぐな目で見つめていた。
今の彼女の眼を見て、「お前は嘘をついている」と誰が言えたのだろうか。
彼は一瞬口を開こうとしたが、すぐ開きかけた口を固く閉じた。
「ま、良かったじゃないですか、鬱陶しい女が消えて、晴れて貴方自由の身、もう隠さなくてもいいんじゃないですか?他の人とも付き合っていたとを、勿論私にバレていることなんて分かっていたでしょうけど・・・・それに、貴方の事などどうでもいいんです、まぁ、他の誰でもその気持ちは一緒ですが・・・・簡単に言えば、心が空っぽになった感じがするんです」
莉彩は当然のように告げた。
今の莉彩は相手がどう思うかも考えないから以前言えなかった事 を彼に言って嫌われようと・・・・・勿論、どう思われてもなんとも思わないからだ。
莉彩は彼がとっととここを出て行くと思っていた・・・・だが一向にその気配は感じられない、それどころか、軽く笑みを漏らしている。
恐らく莉彩の変わりように対して笑っているのだ、彼はそういう人物だっただろう。莉彩の以前の雰囲気と言えば、コロコロ表情が変わるが、大半は笑顔、といった感じだったのだ、本人からしてみれば無理やり笑っている時が多かった訳なのだが、今彼の前にいるのは、天と地の差、無表情と言っても過言ではない表情をしている女、むしろ別人、と言った方がしっくりとくるだろう。
彼が口を開いた。
「前はあんなに俺にぞっこんだったのにな、これはまさに・・・豹変だな、此処まで変り果てるとは、やっぱり交通事故のせいか、成程・・・・・・で?前から俺には興味がなかったのか?」
彼は楽しそうに告げた。
それ、自分で言うか普通、と思う事を彼はあっさりと告げる、そして莉彩の寝ているベットに腰を掛ける。
ミシッ・・・・っとベットが軽く軋んだ。
最後の言葉、この問いに答えるなら答えは、NOだ、前は彼のことを思っていたのだろうから。
だがまず、感情がないなら莉彩は何でも話してくれる、と思っているところから彼は間違っているのだ・・・・・莉彩は、彼に、以前の自分の心を晒すつもりはなかったのだ。
だから莉彩は「さぁね」と曖昧に告げる。そもそも、話す義理もないというかのように。
再び彼が口を開く。
「そうか・・・では、質問を変えようか」
彼は軽く横にずれ、そして軽く起き上がっていた莉彩に覆いかぶさってくる―――いや正確に言えば、押し倒されたのだ。
莉彩は倒された衝撃での体の痛みで、眉を顰めるが、彼はそんなこと等気にしないようだ。
一度口角を上げ、再度莉彩に話しかける。
「今の気分は如何だ?」
「は?」
前の自分だったら、と言う事か?と莉彩は一度考えたが、だったら【今の】、とは聞かないはずだ、と理解した。
彼は今、自分がどう思っているかを聞いてきたのだ。
理解はできたが、頭の中に思い浮かぶことなど、只一つ【男に押し倒された】のみだと思ったが、次の瞬間、頭の中には【面倒】と浮かび上がってきた。
「別に、体が痛いんで、さっさと退いて下さい、邪魔です、お帰りはすぐ後ろの扉からですよ?大丈夫ですか?ちゃんと見てくださいね?」
莉彩は彼を見つめて答える。
彼の足が当たって自分の足が痛むのを我慢して、莉彩はそう答えた。
彼は、数泊置いた後に、体をどける―――最も、莉彩にとってはもっと早く離れてほしかったのだが。
「また明日来る」
―とだけ告げ、彼は扉から出て行ったのである。
彼は明日も来ると言う事か・・・・・・・・?
莉彩は彼が去って行ったあと、そんなことをぼんやりと考えていた。
彼が出て行った後に、莉彩は届いた夜食に軽く手を付けた後、薬を飲む。
検診に来た医師によると、骨折などの重傷はなく、打撲だけの為、三日程度で退院ができるそうだ。
莉彩は、自分の体はつくづく頑丈だなぁと思った・・・勿論、打ち所も良かったんだろうけど。
そんなことを思いながら、莉彩は眠りについたのだった―――
朝目が覚めれば、すでに時刻は午前8時、朝食を終えて、再び薬を飲む。
退院は2日後、体の痛みも昨日に比べれば随分マシで、立ち上がることも簡単にできた。
病院で入院中、何もない殺風景な景色が見える窓・・・・何もすることがない莉彩は、ベットに潜り込んだ。
―――どれ位そのままだっただろうか。
しばらくして、莉彩が軽く眠りについた頃、不意に扉がノックされる。
「どうぞ」
莉彩が軽く返事をする。
莉彩は入室してきた人物に見覚えがあったのだ。
「美香さん」
莉彩はポツリとつぶやき、ゆっくりベッドから降りた。
入室してきた人物・・・美香とは同じ仕事仲間なのだ。
彼女がここにいることもおかしくないと言えばおかしくない、が。
莉彩と美香の仕事は医療事務だ。その中でも専門はカルテ業務・・・・此処に来るとしたら基本看護師だろう、何故彼女がここにいるのか、莉彩には理解ができなかったのだ。
「何で此処にいるん・・ブッッ!?「あー!もうっこんなに怪我してっ、あたし達の天使・・・・・・いいえ!可愛い癒しキャラがこんなに怪我して!莉彩をこんなに怪我させた奴にゃぁ、地獄を見せたらぁぁぁ!」
思いっきり莉彩に抱きついてくる、いきなり来た体の痛みに莉彩は思わず奇声を発してしまった。
美香の勢いに押され、莉彩は「え、あ、え」とだけしか声を発せなかった。
何とも思わなくてもこの勢いには勝てない、勝てる人がいるというならぜひ伝授していただきたいものだ。
「とにかく!!早く仕事に戻ってくること!いいね?」
「はい」
莉彩は即答した。
まぁ、そもそも今すぐにでも仕事をさせて頂きたいのだが、無理そうなのでそれは諦めた。
莉彩が頷くと、美香も納得したようにうなずいて、部屋を後にした。
―――体なんだったんだ
莉彩は再びベッドに潜り込み、目を閉じ、そして眠りについた。
感情がない、という設定ですが一応、常識的なことを思う程度なことは出来る、という設定でお願いします。