第8話 魔王の真意
夜。
壊れた工場跡。
魔王幹部の死体は、
すでに霧となって
消えていた。
亮は、
瓦礫の上に立つ。
「……あっさりしすぎだ」
桜庭が、
隣に来る。
「違和感があるな」
その時。
空気が、
歪む。
誰もいない
空間に、
影が浮かぶ。
赤い眼。
王の気配。
「……魔王」
亮は、
剣を構える。
だが。
影は、
動かない。
「安心しろ」
「今日は、
戦いに来たのではない」
声が、
直接脳に響く。
「話をしに来た」
桜庭が、
唾を飲む。
「何の話だ」
「復讐だ」
短く答える。
亮の眉が、
動く。
「……誰への」
「勇者への」
影は、
続ける。
「貴様が、
我を殺した」
「我の世界を、
滅ぼした」
亮は、
奥歯を噛む。
「俺は、
魔王を倒した」
「世界を救うために」
影が、
笑う。
「貴様の正義だ」
「だがな」
「我には、
家族がいた」
「民がいた」
「守るべき国があった」
静寂。
亮は、
言葉を失う。
「貴様は、
英雄として
帰った」
「我は、
すべてを失った」
「だから、
貴様の世界を
壊す」
桜庭が、
言う。
「だからといって、
無関係な人間を
殺す理由にはならん」
影は、
淡々と答える。
「戦争とは、
そういうものだ」
亮は、
拳を握る。
「……俺は、
後悔している」
「だが、
やり直せない」
「それでも」
「今の世界は、
守る」
影は、
赤い眼を細める。
「ならば、
最後まで
抗え」
「そして、
絶望しろ」
影は、
消える。
沈黙。
あみが、
小さく言う。
「お兄ちゃん、
悪くない」
亮は、
首を振る。
「……分からない」
「でも」
あみは、
手を握る。
「今の人たちは、
関係ない」
亮は、
頷く。
答えは、
出ない。
それでも。
進むしかない。




