第5話 妹覚醒
夜。
医療テントの外は、
静かだった。
遠くで、
砲声が、
断続的に響く。
あみは、
椅子に座り、
俯いていた。
手は、
固く握られている。
「……私、
何もできなかった」
あの時。
兄は、
血まみれで
運ばれてきた。
自分は、
叫ぶことしか
できなかった。
「このままじゃ、
意味がない」
亮は、
ベッドの上。
天井を見つめる。
あみの背中が、
小さく見える。
「……無理するな」
あみは、
振り向かない。
「無理しないと、
追いつけない」
沈黙。
あみは、
立ち上がる。
「訓練場、
借ります」
簡易訓練エリア。
夜でも、
照明がついている。
あみは、
短剣を握る。
振る。
空振り。
また振る。
腕が、
痛い。
足が、
重い。
「……弱い」
分かっている。
だから。
振る。
振る。
振る。
数時間後。
息が、
荒い。
膝をつく。
「……くそ」
涙が、
落ちる。
「強くなりたい……」
その瞬間。
胸が、
熱くなる。
視界が、
白く染まる。
身体の奥から、
何かが
溢れ出す。
【スキル発現】
【同調強化】
【対象と魔力を同期させ、
一時的に能力を増幅】
文字が、
脳裏に浮かぶ。
「……え?」
あみは、
立ち上がる。
身体が、
軽い。
遠く。
医療テント。
亮が、
身を起こす。
「……何だ?」
身体の奥が、
熱い。
魔力が、
増えている。
あみは、
走る。
医療テントへ。
「お兄ちゃん!」
「触ってみて」
手を、
握る。
瞬間。
光。
亮の身体から、
魔力が
溢れる。
「……何だ、
これ」
剣が、
震える。
空気が、
歪む。
あみは、
笑う。
「私、
強化できるみたい」
「お兄ちゃんを」
亮は、
言葉を失う。
「……危険だ」
「分かってる」
「でも」
あみは、
真っ直ぐ見る。
「一緒に、
戦える」
亮は、
目を閉じる。
そして、
頷いた。
「……無茶は、
するな」
「約束」
二人の間に、
新しい
力が生まれた。




