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―転生の果てⅣ―  作者: MOON RAKER 503


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第6話 転生したら磁界だった

この物語を手に取ってくださり、ありがとうございます。

ほんのひとときでも、あなたの心に何かが残れば幸いです。

どうぞ、ゆっくりと物語の世界へ。


我は、見えない力になった。


……


引き寄せ、遠ざける。


……


繋ぎ、離す。


……


我は、磁界。


……


目に見えず、触れることもできない。


……


でも、確かに在る。


……


すべてを貫く、力の線。


……


N極からS極へ。


……


閉じた輪を描く、無限の線。


……


それが、我。


……


〈眠りの女〉の周りに、我は満ちている。


……


いや、周りだけではない。


……


彼女の中にも。


……


血液の中の鉄。


ヘモグロビンに含まれる、微量の金属。


……


細胞の電流。


ナトリウムとカリウムの流れ。


……


神経の信号。


電位差が生み出す、情報の伝達。


……


それら全てが、我と関わっている。


……


磁場の中に。


……


電磁気の網の中に。


……


世界は、電気と磁気で満ちている。


……


見えないが、確かに。


……


我は、その一部であり、全体でもある。


……


彼女が、スマートフォンを手に取る。


……


我は、その中を流れる。


……


電流として。


……


回路を巡り、データを運ぶ。


……


0と1。


……


デジタルの言葉。


……


それを可能にしているのが、我。


……


磁気。


電気。


……


それらは、同じものの別の顔。


……


我は、その両方。


……


画面が光る。


……


その光も、我が作っている。


……


電子が動き、光子が放たれる。


……


すべては、力の相互作用。


……


我は、その力。


……


彼女が、イヤホンをつける。


……


音楽が流れる。


……


その音も、我が運んでいる。


……


スピーカーの中で、磁石が振動する。


……


その振動が、空気を震わせる。


……


音になる。


……


我は、その根源。


……


見えない指揮者。


……


彼女の心臓が、鼓動する。


……


我は、その電気信号を感じる。


……


ドクン、ドクン、ドクン。


……


規則正しいリズム。


……


一分間に、約60回。


……


それは、電気の波。


……


洞房結節から始まる、微弱な電流。


……


心臓の筋肉を動かす、命令。


……


我は、その波を知っている。


……


感じている。


……


心電図に現れる、あのパターン。


……


P波、QRS波、T波。


……


電気が伝わる道筋。


……


生命とは、電気現象でもあるのだ。


……


神経を駆け巡る信号。


一秒間に100メートルを超える速度。


……


筋肉を動かす電流。


収縮と弛緩を制御する力。


……


思考を生み出す放電。


脳内の無数のニューロンが発火する。


……


すべてが、電磁気の世界。


……


我の世界。


……


彼女が考えるたび、我は動く。


……


彼女が動くたび、我は流れる。


……


彼女が生きているということは、我が在るということ。


……


街の中を歩く。


……


我は、そこら中に満ちている。


……


電線の中。


……


電流が流れ、磁場が生まれる。


……


その磁場が、我。


……


街灯。


信号機。


ビルの照明。


……


すべてが、我によって動いている。


……


電車が通る。


……


その電車も、我が動かしている。


……


モーターの中で、磁石が回転する。


……


引き合い、反発し、回り続ける。


……


それが、動力。


……


我は、その力の源。


……


彼女が、改札を通る。


……


ICカードが、センサーに触れる。


……


その瞬間、我が働く。


……


電磁波が飛び交う。


……


13.56メガヘルツの周波数。


……


NFCと呼ばれる、近距離通信。


……


情報が読み取られ、記録される。


……


残高。


履歴。


ID。


……


一瞬の出来事。


……


0.1秒にも満たない時間。


……


でも、その中に我がいる。


……


目に見えない通信。


……


磁気と電波の会話。


……


カードのコイルとリーダーのコイル。


……


それらが共鳴し、データが移動する。


……


それを可能にしているのが、我。


……


電磁誘導。


……


磁場が電流を生み、電流が磁場を生む。


……


相互作用。


……


それが、我の本質。


……


地球そのものが、磁場を持っている。


……


北極と南極。


……


巨大な磁石。


……


その磁場の中に、すべてが在る。


……


我も、その一部。


……


いや、我こそが、それ。


……


彼女が持つコンパス。


……


スマートフォンの中の、小さなセンサー。


……


それが示す方角。


……


北。


……


それを教えているのが、我。


……


地球の磁場。


……


見えないが、確かに在る導き。


……


渡り鳥も、それを感じる。


回遊魚も、それを知る。


……


生き物は、我を感じることができる。


……


意識せずとも。


……


本能として。


……


彼女の中にも、その感覚が眠っている。


……


かすかに。


……


でも、確かに。


……


我は、彼女を引いている。


……


いや、すべてを引いている。


……


引力。


……


それも、我の一面。


……


重力とは違う、もう一つの力。


……


磁力。


……


N極とS極。


……


引き合うものと、反発するもの。


……


その境界が、我。


……


彼女が、誰かとすれ違う。


……


その瞬間、磁場が揺れる。


……


二つの生命。


……


それぞれが持つ、微弱な磁場。


……


それらが干渉し合う。


……


ほんの一瞬。


……


でも、確かに。


……


我は、その干渉を感じる。


……


人は、互いに影響し合っている。


……


目に見えないレベルで。


……


磁場として。


……


電場として。


……


それが、関係というものの、物理的な側面。


……


彼女が、立ち止まる。


……


スマートフォンを見つめる。


……


メッセージが届いたのだろう。


……


その通信も、我が運んだ。


……


電波として。


……


基地局から、彼女の端末へ。


……


光速で。


……


一瞬で。


……


我は、距離を無視する。


……


遠くても、近くても。


……


波は伝わる。


……


それが、電磁波。


……


それが、我。


……


夜になる。


……


街の光が、増える。


……


ネオンサイン。


街灯。


窓の明かり。


……


すべてが、電気。


……


すべてが、我。


……


夜の街は、我で満ちている。


……


輝きとして。


……


温もりとして。


……


見えない力として。


……


彼女が、部屋に戻る。


……


スイッチを押す。


……


照明が点く。


……


その瞬間、我が走る。


……


回路を通って。


……


電子が動き、光子が放たれる。


……


部屋が、明るくなる。


……


我が、それを可能にした。


……


彼女が、充電器に端末を繋ぐ。


……


我は、流れ込む。


……


コンセントから、バッテリーへ。


……


化学反応を起こし、エネルギーを蓄える。


……


それが、充電。


……


我の仕事。


……


彼女が、眠る。


……


でも、我は眠らない。


……


部屋の中を、流れ続ける。


……


冷蔵庫のモーター。


時計の回路。


Wi-Fiルーターの信号。


……


すべてが、動き続けている。


……


我も、動き続けている。


……


止まることなく。


……


それが、磁界。


……


それが、我。


……


彼女の心臓も、まだ動いている。


……


眠りの中でも、鼓動は続く。


……


その鼓動を支える、電気信号。


……


我は、それを見守る。


……


いや、我がそれを支えている。


……


生命の、最も基本的な部分で。


……


朝が来る。


……


太陽が昇る。


……


その太陽からも、磁場が放たれる。


……


太陽風。


……


プラズマの流れ。


……


それが地球の磁場にぶつかる。


……


オーロラが生まれる。


……


磁場同士の相互作用。


……


宇宙は、磁場で満ちている。


……


星々が作る、巨大な磁場。


……


銀河を貫く、磁力線。


……


ブラックホールの周りに渦巻く、強烈な磁場。


……


それらが、互いに影響し合っている。


……


距離を超えて。


……


時間を超えて。


……


我は、その一部。


……


地球の磁場であり、生命の磁場であり、宇宙の磁場。


……


ミクロからマクロまで。


……


原子のスピンから、銀河の渦まで。


……


すべてが、繋がっている。


……


見えない線で。


……


力の線で。


……


それが、我。


……


磁界として。


……


永遠に流れる、力として。


……


引き寄せ、繋ぎ、動かす。


……


それが、我の役割。


……


見えないが、不可欠な存在として。


……


我は、在り続ける。


……


すべてを貫いて。


……


宇宙の始まりから、終わりまで。


……


磁場は、消えない。


……


形を変え、強さを変えるだけ。


……


それは、魂に似ていた。


……


……


……


(了)

ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます。

あなたの時間を少しでも楽しませることができたなら、それが何よりの喜びです。

また次の物語で、お会いできる日を願っています。


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