89,お昼にご飯をみんなで作って食べることと彼が叔父さんに打ち明けたこと
朝食は、トーストとスクランブルエッグとサラダとコーヒーだ。食べながら、叔父さんが言った。
「二人は、今日の予定はあるの?」
僕と顔を見合わせてから、彼が答える。
「まだ何も決めていませんけど」
「だったら、今日のお昼ご飯をみんなで作って食べるっていうのはどう? もちろん君たちがよければだけど、ゆうべ、久しぶりにちゃんと料理したら、なんだかすごく楽しくてさ。
笹垣さんも料理が趣味だって言うから、一緒にどうかなあと思って」
彼が、僕に笑顔を向けてから答えた。
「楽しそうですね」
叔父さんが僕を見る。
「晴臣くんはどう?」
「もちろん賛成です。僕はお手伝いをがんばります」
「よし、決まり。じゃあ、後でみんなで買い出しに行こう」
昼前に、三人で近くのスーパーに行った。以前から、いつも僕が買い物をしているところだ。
僕はカートを押す役目を引き受けた。入り口の自動ドアを抜けながら、叔父さんが言う。
「晴臣くんは、何が食べたい?」
「うーん、麺類かなあ」
彼が言った。
「パスタなんかはどう?」
「うん」
「いいねえ。じゃあ、パスタは笹垣さんにお任せして、僕は海鮮かお肉で、何か一品作ろうかな」
「サラダと、簡単なデザートも作りましょうか」
「そうだね」
彼と二人きりで過ごして、二人で彼の作った料理を食べるのも楽しいけれど、そこに叔父さんが加わり、みんなでわいわいするのも、とても楽しい。真子さんと過ごしたときもそうだったけれど、きっと気の合う人同士だからこそなのだと思う。
彼のことも叔父さんのことも大好きだし、その二人が仲良くしていることがうれしい。いつもとはまた違った幸せを感じる。
彼が作ったのは、ブロッコリーとカリカリベーコンと半熟玉子の色鮮やかなパスタ、叔父さんが作ったのは、鯛のカルパッチョだ。
皿に盛りつけられたパスタを見て、叔父さんが言った。
「おいしそうだねえ。見た目もすごくきれいだ。盛りつけも素敵だし、まるでカフェで出てくる一品みたいだね」
彼と僕は、思わず顔を見合わせて笑った。そして、彼が言う。
「ねえ、言っちゃってもいいかな」
それを聞いた叔父さんが言う。
「えっ、なんだい?」
彼が話し始める。
「実は僕、カフェを開くのが夢なんです」
「そうなの? いいじゃない、君なら明日にでも開けるよ」
「今はまだ、貯金をしながら勉強中ですけど」
「へえ、そうなんだ。楽しみだね」
食事を始めながら、彼が話す。
「まだ何年も先になると思いますけど、そのときは、晴臣くんにも一緒にやってもらいたいと思っていまして」
叔父さんが、目を見開いて僕を見た。
「そこまで具体的な話になっているんだね」
「はい……」
少し照れくさくなって、僕は目を伏せる。叔父さんは、くるくるとフォークにパスタを絡めながら言う。
「目標があるのは素敵なことだと思うし、二人の将来のこともちゃんと考えているって知って、僕もうれしいよ。晴臣くんは、たった一人のかわいい甥っ子だから、幸せになってほしいしね」
「あ……」
なんだか鼻の奥がツンとしてしまう。彼が静かに言った。
「晴臣くんとの将来のこと、真剣に考えています。彼のご両親が知ったら、きっとショックを受けるんじゃないかと思いますけど、僕としては、この先もずっと、彼と一緒に生きて行きたいんです」
ああ、もうダメだ。涙がこみ上げて、パスタが喉を通らない。フォークを置いて涙をぬぐう僕を見ながら、叔父さんはほほえむ。
「まあね、息子の恋人が同性だと知れば、両親が驚くのは普通のことだと思うけど、そういう話になったときには、僕も全面的にバックアップするよ。
でも、どうなの? 今すぐ挨拶に行くって決めてるわけでもないんだろう?」
彼が答える。
「そうですね。なかなかきっかけがないということもありますけど、カフェを開く目途が立ったときには、ご両親に挨拶にうかがうつもりでいます」




