表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
76/183

76,久しぶりの電話と変顔の応酬とモデルのような彼

 ただし、彼は友達じゃなくて恋人だけれど、もちろん、それは内緒だ。

 

―― じゃあ、足が治って仁さんに会えるようになったら、そう言うことにする。


―― うん、それでいいよ。会える日を楽しみにしてる。



 捻挫と打撲だから、意外とそんなにかからずに出かけられるようになるかもしれない。うれしいけれど、いろいろ考えると、ちょっと不安だ。

 

 

 

 実際、1週間もしないうちに、足のケガはずいぶんよくなり、僕は二階の自分の部屋に移った。まだ痛みはあるし、上り下りは一段一段ゆっくりだけれど、多少の運動も兼ねて。

 

 

 夜、メッセージとともに、彼から自撮りが届いた。

 

―― 遅くなってごめーん。



 思いっきり変顔をしているのだけれど、それがとてもかわいい。噴き出しながら返信する。

 

―― こんなかわいい変顔初めて見た。ところで、今から電話してもいい?


―― えっ、それってもしかして?



 電話をかけると、出てすぐに彼が言った。

 

「今二階にいるの?」


「そう。今夜から自分の部屋で寝るんだ」


「階段は大丈夫?」


「まだちょっと痛いけど、ゆっくりならなんとか」


「無理しないでよ」


「大丈夫だよ。ソファは寝にくいし、ずっと下にいたら足の筋肉が弱っちゃいそうだから」


「なるほどね」


 それから彼は、感慨深げに言った。

 

「話すの、久しぶりだね」


「うん。仁さんの声が聞けてうれしい」


「僕もだよ。会えるまで、あともう少しだね」


「もう二、三日したら、運動がてら、近所を散歩しようかと思っているんだ」


「あっ、じゃあ、週末に近くまで会いに行くよ」


「え?」


「遠出はまだ無理だろ? だから、晴臣くんの家の近くまで行く」


「あ……」


「ダメ?」


「ダメじゃない。会えるのはまだまだ先だと思っていたから、うれしくて……」


「僕もうれしいよ。一緒にお茶でも飲もう」


「うん」


 うれしい。実家に帰って来たときは、もう当分会えないのだと思ってずいぶん落ち込んだけれど、あともう少し、ほんの数日後には会えるのだ。

 

 にやけていると、彼が言った。

 

「あのさ、晴臣くんの自撮りも送ってほしいな」


「変顔? あんまり自信ないけど」

 

「いいね、キス顔でもいいけど」


「えっ、ちょっと待ってね」


 キス顔は恥ずかしいので、唇を突き出した変顔をして、ギプスの手で投げキッスをするポーズを撮って送った。彼が笑い声を上げる。

 

「いいね、めっちゃいい」


 今さらながら、恥ずかしくなって、ちょっと後悔する。これなら普通のキス顔のほうがマシだったかも……。

 

 ひとしきり笑ってから、彼が言った。

 

「腕、早く治るといいね」


「うん」




  その日は朝からいい天気だった。もしも雨だったら、母に出かけることを止められるだろうと思っていたので、少しほっとした。


休日なので、父はまだ寝ていて、母と二人の朝食だ。僕は、内心ドキドキしながら、さり気なさをよそおって切り出した。


「あのさ、今日はいい天気だし、リハビリも兼ねて久しぶりに出かけようかと思って」


「あら、そうなの?」


 母は味噌汁の中のジャガイモを拾って口に入れる。予想に反して反応は薄い。

 

「駅前の本屋に行ったりしたいから、もしかしたら、カフェで休んでから帰ってくるかも」


「そう。あまり無理しちゃダメよ」


「わかった」


 ふー……。「お母さんも一緒に行く」なんて言われたらシャレにならないと思っていたのだけれど、母もそこまで暇ではないらしい。

 

 

 

 線路沿いの公園のベンチに座って待っていると、約束の時間通りに彼が現れた。僕は思わず立ち上がる。

 

 久しぶりに見る彼は、白と黒のブロックチェックのシャツをさわやかに着こなしていて、まるでモデルのようだ。僕に気づいて、ちょっと手を上げると、長い足で、あっという間にそばまでやって来た。

 

「お待たせ」


「あ……」


 感激で、すぐには言葉が出ない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ