39,猫柄の小皿とプラチナのチェーン
暗くなった頃、彼の部屋の前に着くと、中から灯りが漏れている。チャイムを鳴らすと、すぐに足音が聞こえて、ドアが開いた。
「待ってたよ。入って」
優しくほほえむ彼は、僕がプレゼントした部屋着を着ている。後ろ手にドアを閉めると、彼が荷物を受け取ろうと、両手を差し出した。
僕は、ケーキの箱だけを差し出して言った。
「あの……」
「うん?」
首を傾げる彼に、僕は、もう一つの手提げを示しながら言う。
「これ、僕からのクリスマスプレゼントだよ。この前のお返しっていうか」
すると、彼が笑いながら言った。
「ああ、この前の四角錐のツリー? たしかにプレゼントするとは言ったけど、そういう意味じゃないよ」
「え?」
「とにかく入って」
うながされて、僕は部屋に上がりながら、ダッフルコートを脱いだ。
「あれは、晴臣くんが気に入っていたし、僕の部屋にツリーを飾るから、君の部屋にも飾ってほしいと思っただけで、クリスマスプレゼントってわけじゃないよ」
「あ……そうなんだ」
なんだか拍子抜けする。
「でも、すごくうれしかったし、今日まで毎日あれを眺めて幸せだったから、仁さんにも何か贈りたいと思って」
「ありがとう」
シンクの横にケーキの箱を置いて、彼が振り返る。
「クリスマスプレゼントなら、別に用意してあるよ。じゃあ、ちょっと早いけど、まずはプレゼント交換からしようか」
「え……」
僕たちは、まだ何も置かれていないテーブルに向かい合って座った。壁際のツリーから、金色の天使たちがこちらを見ている。
さっそく僕は、プレゼントの箱を差し出す。
「気に入ってもらえるといいんだけど」
「へえ、なんだろ。楽しみだな」
彼が、箱にかかったリボンに手をかける。一生懸命に選んで買ったものだけれど、なんだかドキドキしてきた。
「うわ、かわいい!」
彼が、歓声を上げて、一枚一枚手に取ってテーブルに並べる。それは、キッチン雑貨の店で見つけた5枚セットの小皿で、それぞれに違う猫の絵が描かれている。
白猫、黒猫、三毛猫、ブチ猫、トラ猫。すごくかわいいと思ったし、彼も猫が好きだと言っているし、猫を抱く彼の写真から二人の関係が始まったという意味でも、これ以外にはないと思ったのだ。
「……気に入ってくれた?」
「もちろん」
彼がにっこり笑う。
「すごく気に入ったよ。ちょっともったいない気もするけど、大切に使わせてもらうよ。
やっぱり食器は、使ってこそだもんね。どうもありがとう」
「うん」
喜んでくれて、ほっとした。よかった……。
大切そうに、再び小皿を箱に収めてから、彼が言った。
「それじゃ、今度は僕の番だよ」
そして、横の椅子から手に取ってこちらに差し出したのは、クリスマスカラーのリボンがかかった細長い小箱だ。
「ありがとう」
受け取りながら、いったい何が入っているんだろうと思っていると、彼が言った。
「プレゼントとは言いながら、実は僕とおそろいなんだけど」
「え?」
「まあ、開けてみてよ」
「あ……」
それは、小さなプレートがついた銀色のチェーンだ。彼がプレートを指差して言う。
「そこ、見てみて」
指でつまんで見てみると、正円ではなく、あえて少し歪んだような形に作られているプレートに、しゃれた字体で「H」とイニシャルが刻まれている。
じっと見つめている僕に、彼が言った。
「僕のは『J』だよ。一応プラチナ。指輪も考えたんだけど、これを見つけて、すごく気に入っちゃってさ」
いつまでも見つめていると、彼が心配そうに言った。
「晴臣くん?」
僕は、ようやく顔を上げて、彼を見る。
「すごく、うれしい」
うれしすぎて泣いてしまいそうだ。彼が、もう一つの同じ箱を出して、中のチェーンを見せてくれる。
「ほらね」
プレゼントをもらっただけでもうれしいし、それがイニシャルの入ったチェーンだということが本当にうれしい。しかも、彼とおそろいだなんて……。




