183,奇跡に近い幸せとバレる覚悟でしてもいいと言う彼とこれからもずっと
「どう……ですかね。特に変わったことはないかなあ」
「実はヘンな癖があったとか、これだけはやめてほしいっていうこととかは?」
「いや……特には」
「何も不満はないの?」
「は、はい」
「つまり、相変わらずラブラブってこと? て言うか、むしろさらにラブラブ度がアップしたとか」
「あ……」
図星だ。エアコンが効いているはずなのに、顔が熱くなる。
「当然よね。わざわざ聞かなくても、二人の様子を見ていればわかるけどさ」
ニヤニヤしている真子さんに、今度は僕が質問する。
「真子さんと健壱さんはどうなんですか? ラブラブですか?」
僕と違って、真子さんは平然とした顔で答える。
「まあね。一緒に旅行に来ているくらいだし、ホントは一緒に泊まるつもりだったし」
「あの、立ち入ったことを聞いてもいいですか?」
「何? 別にいいよ」
「お二人も、将来的には結婚とか、考えていたりするんですか?」
僕は当然イエスと返ってくると思っていたのだけれど、答えは意外なものだった。
「うーん、確かに今はラブラブだけど、正直、そこまではまだ考えていない。彼もそうなんじゃないかな。
そもそも私は、そんなに結婚願望が強いほうじゃないし、いろいろやってみたいこともあるし。もしも30歳くらいになってもまだ付き合っていて、お互いにそうしたいと思ったらするかもね。
でも、それまで付き合っているかどうかはわからないよね。私も彼も、ほかに好きな人ができるかもしれないし」
「……そうなんですか」
僕はゲイだし、彼と出会ったときは、まだ10代だったし、自分と結婚というものとを結びつけて考えたことはなかった。
でも、会った瞬間から、というかSNSで画像を見たときから大好きで、実際に会ってみても、恋人同士になってからも大好きで、ずっと一緒にいられたらと思っていた。
その夢が叶って、今は彼と一緒に暮らしながらカフェをやっていて、それは結婚しているのと同じようなことなのだろう。そして僕は、今も彼のことが大好きで、この先も一生一緒にいたいと思っている。
ただし、たまたま運よくそうなっただけで、これは奇跡に近いことなのかもしれない。つまり僕は、とてもラッキーなのだ。
やがて、彼が髪をタオルで拭きながらバスルームから出てき来た。
「次どうぞ」
「真子さん、先に入ってください」
僕の言葉に、真子さんが言った。
「私は準備したりお布団敷いたりするから、晴臣くん先に入って」
「じゃあそうします」
僕の次に真子さんがバスルームに行き、僕と彼はベッドルームに引き上げた。
ベッドで横になりながら、彼が言った。
「真子たちは、明日は食べ歩きや買い物をした後、午後の新幹線で帰るそうだよ」
「じゃあ、朝部屋を出るときにお別れ?」
「そういうことになるね」
「なんだかあっという間だね」
「そうだな。でも、一泊だけでよかった」
「え?」
彼が、僕の耳に顔を近づけてささやいた。
「真子が何日も泊まったら、その間、僕たちできないだろ? ……セッ、クス」
「セ……!」
それはそうだけれど。さらに彼はささやく。
「それとも、真子に気づかれないように、こっそりする?」
「ま、まさかそんなっ」
そんなこと、できるわけがない。もしも万が一気づかれたら、恥ずかしすぎて、今後一切真子さんと顔を合わせられなくなってしまいそうだ。
僕があわあわしていると、彼が笑い声を上げた。
「冗談だよ。そんなにびっくりしないで。
僕だってそこまでスケベじゃないし、そんなにがっつかなくたって、この先いくらでもできるんだから」
「もう、からかわないでよ」
「ごめんごめん。君がかわいくて、つい」
「あ……」
「まあ、君がどうしてもしたいって言うなら、バレるの覚悟でしてもいいけど」
僕は怒って見せる。
「そんなこと、言うわけないでしょ」
「そうか、残念」
「もう……」
彼はときどき、僕をからかうけれど、それは決していやな感じではなく、愛情ゆえなのだとわかる。僕も、すねたり怒ったりして見せるけれど、本当に怒っているわけじゃない。
こういうの、人から見たら、ただイチャイチャしているだけなのかなあ、なんて思う。多分、いや確実にそうだろう。
これからも、ずっとイチャイチャしたり、その先の事までしたり(もちろん二人っきりのときに)したいな。愛するパーフェクト・オブ・パーフェクトな王子様と。




