表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
182/183

182,彼の気持ちと真子さんを泊めることと実質的な結婚

「そ、それは……」


「真子の気持ちもわからなくなはいよ。僕たちだって、二人っきりで部屋でいろんなことをしたし、旅行にも行ったし」


「あ……うん」


「だけど僕は、10代の頃から叔母さん夫婦にはとてもお世話になっていて、その立場で、騙すようなことはできない。しかも真子は、両親にとても大切にされているんだ」


「そうだよね、一人娘だもんね」


「だから、今からもう一部屋取るのは無理だとしても、まあ、晴臣くんと相談してからとは言ったんだけど、どちらか一人だけでもここに泊まるとか……」


「僕ならかまわないよ」


「ああ、ありがとう。とにかく僕は、叔母さんに嘘はつけないし、聞いてしまった以上、二人が一緒に泊まることも容認できないって言ったんだ。


 それで、どうするか健壱くんと話し合って決めてほしいって伝えた。真子なら、ちゃんと考えてくれると信じているけど……」

 

「うん。きっと大丈夫だよ」


「ここに二人はさすがに無理だよな。布団を敷くスペースもないし……あっ!」


 彼が突然大きな声を上げた。


「え?」


「もしも泊めることになったら、布団を買わなくちゃいけないね。それに、その後、その布団はどこにしまえばいいんだ?」


「あ……」


 確かに、ただでさえ少ない収納スペースに布団をしまう余裕はないか……。

 

 

 

 その日、真子さんと健壱さんがニュアージュにやって来た。席に着くなり、健壱さんが言った。

 

「この度は、ご迷惑をおかけしてすいません」


 彼がにこやかに答える。

 

「僕のほうこそ、めんどくさいことを言ってごめんよ」


「いえ、お兄さんの立場だったら当然だと思います」


「バカなことを言ってごめんね。今夜はお世話になります」


 そう言って、真子さんが深々と頭を下げた。結局、健壱さんだけがホテルに泊まり、真子さんは僕たちの部屋に泊まることになったのだ。

 

「晴臣くんもごめんね」


 真子さんは、僕にも頭を下げた。

 

「そんな、僕は全然」


 むしろ、久しぶりに真子さんと話せるのはうれしい。もっとも真子さんは、僕なんかと話すより、ずっと健壱さんと一緒に過ごしたいだろうけれど。

 

 

 食事をした後、二人は観光をするために出かけて行った。空き巣犯がまだ捕まっていないこともあり、真子さんは、ニュアージュの閉店時間に再びここに来て、三人でマンションに帰ることになっている。

 

 

 

「おじゃまします。わあ……素敵な部屋だね」


 真子さんは、上がり框にバッグを置きながら、僕たちの部屋を見回す。彼が言う。

 

「もう少し広ければ、健壱くんにも泊ってもらえたんだけどね」


「ううん、私だけでも泊めてもらえて感謝してます」


 彼は笑いながら言う。

 

「さあ、遠慮せずに上がって」


「はあい」


「何か飲む?」


「ううん、寝かせてもらえるだけで十分。あと、シャワーを使わせてもらえれば」


「布団は、ちょっと窮屈だけど、このテーブルの横辺りに敷いてもらおうと思うんだ。ちょっとテーブルを脇に寄せたほうがいいかな」


「十分十分、全然大丈夫だよ」


 布団は、先日二人で近くのホームセンターに行って買ってきたのだ。

 

 

 彼が先にバスルームに行ったので、結局、真子さんと僕は、順番を待ちながら冷たいお茶を飲むことにした。グラスをもてあそびながら、真子さんがいたずらっぽく言う。

 

「なんだか新婚家庭におじゃましちゃったみたいで気が引けるけど」


「そ……そんなこと、全然気にしないでください」


 そんなふうに言われると、かえって恥ずかしい。真子さんがふふふと笑う。

 

「でもさ、二人は実質、結婚したっていうことなんでしょう?」


「えっ、あっ。そう、なんですかね」


「そうでしょう。一緒に暮らして、一緒にカフェをやって、ご家族も公認なんだもの」


「……ですよね」


 もちろん、僕はそのように思っているし、彼も同じだと思うけれど、わざわざ口にするのはとても照れくさい。

 

「仁兄ちゃんはどう?」


「はい?」


「一緒に暮らしてみて、前と変わったことはある?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ