表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
174/183

174,サンドイッチとカフェオレとショッキングな話

 彼は、もしも話している途中で辛くなったら、そう言って中断してもかまわないと言った。どうやら彼は、陸斗くんの話が島永くんに関することだと思っているらしい。

 

 そうかもしれないし、彼が僕を気遣ってくれているのもわかる。でも、たとえどんな内容でも、ちゃんと受け止めるべきなのではないかと思う。

 

 僕はただ、僕と二人で話したいと言った陸斗くんの気持ちに報いたいのだ。

 

 

 

 公園に入って行くと、先に来ていた陸斗くんが、ベンチから立ち上がってぺこりと頭を下げた。僕はちょっと手を振ってから、近くまで行く。

 

 緊張の面持ちの陸斗くんに、二つの包みのうちの一つを差し出した。

 

「これ、仁さんが作ったサンドイッチなんだけど、よかったらどうぞ」


「あっ、ありがとうございます」


「僕、お昼がまだだから、食べながらでいい?」


「もちろんです。あっ、飲み物買って来ますけど、何がいいですか?」


 そう言って、陸斗くんが入り口脇の自販機を指す。

 

「悪いね。カフェオレってあったかな」


「はい、あります」


「じゃあそれを」


 言い終わらないうちに、陸斗くんは走って行った。

 

 

 お腹がペコペコの僕は、とりあえず食事に専念する。ハムとレタスのサンドイッチも、玉子のも、ほんのり甘いクリームチーズとハチミツのも、全部おいしい。

 

 仁さんってやっぱり天才だな。そう思いながらペットボトルのカフェオレを飲んでいると、横で陸斗くんが言った。

 

「あの……」


「うん?」


 見ると、陸斗くんは手に持ったサンドイッチを食べずにじっと見つめている。

 

「実はですね、僕、島永くんとお別れしました」


「えっ……」


 ケンカではなく、お別れ? 話の内容に関する予想の中の一つには一応入っていたものの、実際にそう言われると、やはりショックだ。

 

「この前、二人でニュアージュに行った後、ちょっとモメまして」


「ケンカしたの?」


「ケンカというか、あの後島永くん、ずっと日下部さんの話ばかりするもんですから、僕がちょっとスネたわけです」


「そっ、それは……」


「いえ、別に日下部さんを責めてるわけじゃありません。でも、一応僕たち付き合っているわけですし、僕の前でほかの人のことをベタぼめするのは無神経なんじゃないかと」


「ベ、ベタぼめ……」


「そりゃあ日下部さんはかわいいですけど、そんなに何度も言わなくても……」


「い、いや、かわいくなんか」


 陸斗くんは、サンドイッチを見つめたまま淡々と話す。


「そうしたら彼、僕のことをめんどくさいって」


「え……それはひどいよ」


 陸斗くんがちらりと僕を見た。

 

「ですよね。なんでも言い合えるのが恋人同士だと思っていたのに」


「そうだよ」


 鼻息も荒く言うと、陸斗くんは体ごとこちらに向いた。

 

「日下部さんと笹垣さんは、なんでも言い合えるんですか?」


「あっ……まあ、そうかな」


「はあ、いいですねえ」


「たまには、ちょっと(彼が)言い過ぎて、(彼が)落ち込んだりすることもあるけど。それに、僕は過去の恋愛のことなんかは、あんまり聞きたくないかな」


「やっぱりそうですか」


 やっぱり、とは?

 

「僕、お付き合いしたのが初めてだったから、そういうの、よくわかっていなくて。島永くんが、それなら俺も言ってやるって……」


 しばし黙った後、陸斗くんは再び話し始めた。

 

「彼、ちゃんと付き合ったのは僕が初めてだって言っていたから、言葉通りに受け取っていたんですけど、そうじゃなかったみたいで」


「えっ?」


「彼が言ったのは、ステディな関係になったのは僕が初めてっていう意味で、それまではネットで相手を探して、いろんな人と遊んでいたみたいで。そんなにめんどくさいことを言われるなら、前のほうがよかったって」


「そんな……」


「僕、ショックでつい、そんなの不潔だって言っちゃったんです。そうしたら、じゃあ別れようって」


「あ……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ