表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/12

✿ 8

 ――ドクンと心臓が激しく脈打つ。

 とてつもなく嫌な予感がして、リヒトは目を開けたが、身体を動かすことができず焦った。

 ……まずい、ヒメが危ない!! せめて手だけ動かして、〝剣〟を()ぶことができたら、こんな自分を縛る魔法なんか簡単に打ち破ることができるのに。

(くそ……! 守るって約束したのに!)

 何とかできないかとあがいていると、ふと、誰かが中に飛び込んで来るのが分かった。その誰かはリヒトではなく、彼女の魔法を解き、状況を打開しようとしていた。

(逃げろ、ヒメ!!)

 リヒトの心とは裏腹に、彼女が意外なことを口にする。

「お願い……彼を解放して……!」

 はっと息を呑み、リヒトは身構える。彼女の言葉を受け、入ってきた誰かが魔法を解き、リヒトを解放した。

 〝剣〟を喚び出しながら、リヒトは勢いよく身体を起こす。見ると、仮面を被った(オトコ)が再び魔法で彼女を(とら)え、逃げようとしていた。

「――させるかぁ!」

 リヒトが叫ぶと同時に、(オトコ)は指を鳴らし、姿を消した。

 一足遅かったか。ため息を漏らしながら、リヒトは魔法を解いたその誰かの方へと振り返った。

「助かった、ありが……――」

 言い終わるよりも早く、リヒトは衝撃を受け、目を見開いた。

 ――そこにいた人物に、(リヒト)はつと涙を流すのだった。


    ✿


 何者(ナニモノ)かは私を(いだ)いたまま、一心不乱にどこかへと向かっていた。

 魔法でどこかへ連れて来られたようだが……。何処の誰のところへ連れて行こうとしているのだろう。――私をどうしようというのだろう。

 リヒトは……来てくれるのだろうか。不安に思っていると、ふと、何者(ナニモノ)かが足を止めた。

「やぁやぁ、お(ニイ)さん。 ――こんな真夜中にそんなに急いでどこ行くの?」

 正直の方から、若い男の声が聞こえてきた。軽い口調で話しているが、彼は(オトコ)(いぶか)しんでいるようだった。

「……関係ないでしょう」

「えー? でも、キミが外套(そこ)に隠してるお嬢さんが何か困ってるみたいだからさ? ――ほっとけなかったんだよねー」

 なんと、彼は(オトコ)が私を囚えていることにも気付いているようだった。私は一縷(いちる)の望みを賭け、彼に心の中で呼び掛ける。

(お願い、助けて……!)

 すると、知ってか知らずか、彼は「うんうんうん……」とうなずきだした。

「うん、分かった! だけどごめんね、時間稼ぎしかできないけど……。 ――()のお願い、聞かせてもらうよ!!」

 彼が話し終えるのと同時に、ヒュッと風を切る音が聞こえた。

 とっさに、(オトコ)が私を投げ出し、「何か」を()けた。

 動けない私は地面に転がりながら、栗色の髪に黄緑の瞳の青年が短剣を握り、私を囚えていた仮面の(オトコ)に斬りかかっているのを目にした。

 ふと彼は私の方を見て息を呑むと、目にも止まらない速さでこちらに()け出した。

 ……すごい、まるで風みたい。気が付くと、私は彼に抱えられていた。

「何、自分助かりたいからって女の子乱暴に扱ってるのさ! ひどいな、本当に」

 (オトコ)を叱りつける彼を見つめながら、私ははっとする。この人、もしかして……。

「あなたは……」

「俺? エイト。 長い(・・)付き合いになりそうだから、教えておくよ。 ここでちょっと待ってて」

 彼――エイトは小さな声で名乗りをあげると、私をそっと横に寝かせ、再び(オトコ)へ斬りかかった。

 次々と繰り出されるエイトの斬撃に、(オトコ)は精一杯のようだった。そのうち、魔法をかけ続ける集中力が切れてきたのか、少しずつ私の魔法も解け始める。

「……クソ!」

 舌打ちをした(オトコ)がエイトの短剣を避けながら、手を大きく振りかぶる。何かの形を描いたようだった。

「逃げて!」

 ふと、エイトが私の方へ振り向いて叫ぶ。

 ……え? そう思うより早く、背後に「気配」を感じた。ナニカ(・・・)……いる。ソレ(・・)は私を支配(・・)しようと「手」を伸ばした。

 あまりの恐怖に、動かない身体がさらに(すく)む。「手」が眼前に迫り、私は絶望した。


 ――その瞬間。


 〝剣〟がひらりと舞い、【悪】を振り払う。

「俺の〝ひめ〟に手を出すな!!」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ