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✿ 7

 ――震える。心が、身体が、感覚が、震える。

 「何か(・・)」に導かれるようにして、とある一人の青年が走っていた。

 元々、丈夫で強い()とは違って、彼はそれほど身体を動かしたりするのが得意ではなかった。けれど、そのおかげで「あの場」から(のが)れ、こうして外に出ることができた。この幸運を無駄にしないためにも、今はとにかく走り続けなければいけない。

 ――急げ、急げ。この先に、会いたい人()がいる。


    ✿


 それから、街に着いた私たちは旅の支度を色々と済ませることにした。

 ひとまず、私が連れていた馬とリヒトの馬二頭で馬車を作ることにした。

 馬車はなかなかの優れもので、中には簡易の二段寝台(ベッド)二つが備えられていた。まだ見ぬ騎士(仲間)達もこれで安心だ。

 代金は……私が持って来た分とリヒトが稼いだらしいお金で何とか工面した。まだまだ先も長そうなので、ある程度の余裕も残しておいた。

「大丈夫? 重くない?」

 馬車を引かせるのが初めてだったので、私は心配になって愛馬に声を掛ける。すると、鼻を擦り寄せて来たので、私は撫でてやる。どうやら、(主人)の役に立てて嬉しいらしい。

「君もありがとうね」

 そう言ってリヒトの馬に声を掛けると、頭を撫でさせてくれた。たっぷり撫でて、()のことも(ねぎら)う。

 他にも色々と準備をしていると、すっかり日が暮れてしまったので、その日だけは宿屋に泊まることにした。

 そして、宿屋ではこれからどこへ行くのかも話し合った。特に行くあてもないので、ひとまずリヒトが弟さんを探していない場所(ところ)に行くことを決め、私たちは眠りについた。



 真夜中。

 ……何か物音がする。目を開けようとしたが、できなかった。――魔法か何かで縛られている。

「ほう……まだ育って(・・・)いませんか。 都合が良い、あの方(・・・)もその方がやりがいがあるというもの」

 何者(ナニモノ)かが耳元でつぶやき、私を抱きかかえる。

 ……だめ、離して! 動こうとしても動けない。頼みの首飾り(ペンダント)に手を伸ばすこともできない。私はカレのされるがままになる。

 助けを求めることもできない。リヒトも縛られているんだろうか。動く様子がない。誰かっ……!!

「彼女に触るな!!」

 ふと、どこからかそんな声が聞こえた。

 一瞬身体が軽くなり、身動きが取れるようになり、私は逃げるよりも先に、声の主に懇願(こんがん)した。

「お願い……彼を解放して……!」

 ――きっと魔法を解いたのはその見知らぬ誰かだろうと思い、そう声を掛ける。

 すぐさま彼はリヒトを解放したようだが、何者(ナニモノ)かが再び魔法を掛け私を(とら)えると、外套(マント)の中に(いだ)き、その場を離れた。

 私はどうすることもできないまま、リヒトが助けに来てくれることを願うしかできなかった。

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