✿ 11
「ねぇ、どうして、みんな、すぐに私の力になってくれるの?」
色々と話をする前に、私はリヒト・ハルト・エイトにそんな質問を投げ掛ける。
すると、三人は顔を見合わせ、少し困った表情を浮かべた。……どう答えればいいか、考えているらしい。
「エイトなんて、真夜中だったのに私を助けてくれたじゃない? どうして……?」
そう尋ねたように、エイトに至っては「長い付き合い」になるとまるで理解していたかのような口ぶりだった。
「んー……。 元々俺は特に理由もなく旅をしていたんだけどね? あの時、何となーく真夜中に目が覚めて、『直感』のようなものに衝き動かされたんだ。 ――誰かが俺を呼んでる、助けに行かなきゃってそんな『思い』に駆られたんだ。 それで、ヒメさんのことを一目見た瞬間すぐに理解できたんだ。 ――あぁ……俺はこのひとを守らなきゃいけないんだ、今までこのひとと出逢うために旅をしてきたんだって」
……さっき自己紹介した時に呼び名は教えた覚えはないのに、エイトにもちゃっかり「ヒメ」呼びされている。リヒト以来定着しつつある呼び名に苦笑いをこぼしながら、私は物思いにふける。
それにしても、私に出逢った瞬間「直感」するだなんて。だけど、ちょっと分かる気もする。リヒトと手を繋いだ時、私も少なからず「衝撃」を受けた覚えがある。皆もそれと同じようなものを感じているのかもしれない。
「そうですね……言葉にするならば『宿命』といったところでしょうか。 ヒメさんと出逢った瞬間、僕達はその『宿命』に気付かされるのです。 まぁ、僕の場合、ここに来た理由はそれだけじゃないのですが……」
そこにハルトが加わり、意外なことを口にした。まさか、ふとした疑問から話し合いへ繋がるとは。私はじっとハルトを見つめて、先を促す。
「――魔力が強いからでしょうか、僕はヒメさんと出逢う前から、自分には『宿命』があることに気付いていたのです。 兄さんから聞いたとは思いますが、僕達双子が生き別れたことを知っていますよね?」
すぐさま、私はうなずいてみせる。リヒトが持っている〝剣〟が狙われたせいで、双子は離ればなれになってしまったのだ。
「僕の方は危うく他国に売られ、奴隷にされるところでしたが、あまり体力がない僕は使い物にならないと捨てられました。 そんな僕を魔法使いの師匠が助けてくれて、魔法のことを教えながらまるで自分の子供のように育ててくれました。 そうしているうちに僕は魔法に覚醒して、自分の『宿命』があることを知りました。 そして、魔法……というよりも双子のカンと言ったところでしょうか、兄さんが生きていることも何となく感じていました」
辛い過去をなんてことないように話すハルトに何と声を掛ければいいのか分からず、私はただ彼に目を向けることしかできずにいた。
すると、すぐに気付いたハルトが私に「大丈夫」と言うかのように、にっこりと微笑んでみせた。
「――色々ありましたが、今はこうして無事に兄さんとヒメさんに逢えたから良いんです。 それで話を戻しますが、僕は『宿命』とカンに導かれるようにして、師匠の元から旅立ちました。 その途中、僕は怪しい男を見たのです」
――それが、私を襲って来た男ってことか。
私が目配せすると、ハルトはうなずいてみせた。
「何か嫌な予感がして、僕はその男のことを調べることにしました。 そしたら、人気のない場所で、男が【誰か】と連絡を取り合っているのを耳にしていたのです。 ――その【誰か】が男にヒメさんを捕らえるよう、命令しているようでした」
――そして、その【誰か】があの男が言っていた「主人」とやらか。……で、神と通ずる「力」を持っているシェリーモルドの水晶と、それを使うことができる「姫」――私を、その「主人」とやらが狙っているというワケか。
つまりは……。神と通ずる「力」を持つ「宝」を使うことができる「姫」のことを救世主と呼ぶんだろうか?
少しずつ分かってきたけれど、確信は持てない事実に、私は首をひねるしかない。
だけど、私はまだ「覚醒」していない。やっと水晶の〈声〉がきこえるようになったくらいで、ましてや神様となんて通じることなんてできてもいない。――本当にその救世主かどうかも分からないのに。
「確か……『この世の全てを支配し、【我々】の地を築き上げる』――でしたっけ? とにかく、その【誰か】はヒメさんのことを手に入れたいと思っているようです」
「だけど、ヒメを手に入れてどうする気だ?」
「分かりません。 でも、『全てを支配する』と言ってるくらいですから、その【誰か】はどのみちヒメさんを意のままにしようとしているのかもしれません」
リヒトとハルトがそんな会話を交わし、導き出された【敵】の狙いに、その場にいた全員が顔を強張らせる。
……そういえば、宿屋で男が私を見て、「育っていないからやりがいがある」と話していた。私が「覚醒」していなくても、リヒトの言う通り、【敵】は私を意のままにして、無理にでも「覚醒」をさせて利用するつもりだったのかもしれない。
思わず、私はひっと息を呑む。……怖い。この旅はそんなに危険なものだったなんて。――私に、それほどの「価値」があっただなんて。
「そんなことさせねぇよ! ヒメのことは俺――俺達が守ればいい。 もし向こうから出てきたとしても、ヒメのことは全力で守り抜いてみせればいい! ――だから、ヒメ、安心しろ」
そう言って、リヒトが立ち上がると、私の方へと手を差し出してみせた。
……ほんとに不思議。あんなに怖くて仕方なかったのに、リヒトがそう言ってくれるだけで安心できる。
私は彼のその手を取る。……うん、リヒトの言う通り、きっとみんなが守ってくれる。なら、私は父様が言う正しい使い方ができるように、水晶と向き合っていかなくちゃ。――そして、私もみんなのことを守れるようにならなくちゃ。
「そうですね。 とりあえず協力してヒメさんを守れるように、残りの騎士を探しましょう」
ハルトも同意するように、力強くうなずいてみせる。もちろん、エイトもうなずいていたが、彼の提案に「あの〜……」と声を上げながら、意外なことを口にした。
「俺、ひょっとすると……その残りの騎士に心当たりある……かも」
その言葉に、私・リヒト・ハルトの三人は顔を見合わせる。
……えっ? えぇ〜!?




