表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/13

✿ 9

「俺の〝ひめ〟に手を出すな!!」

 聞き覚えのある声に、私は目を見開く。

 眼前に迫っていた「手」はどこかへ消え去った。

「大丈夫ですか?」

 そんな言葉と共に、私はようやく魔法から完全に解放される。放心していると、心配そうに誰かが私の顔をのぞき込んだ。

 ……似ている。髪と瞳の色は違っているが、リヒトとそっくりな顔がそこに見えた。濃い灰色の髪に、空のようにキレイな水色の瞳。もしかして、彼が……?

「リヒトの弟さん? それに、ひょっとして宿屋でも助けてくれた?」

 優しく微笑み、彼がうなずく。

「はい、ハルトと申します。 お会いできて光栄です、ヒメ(・・)さん。 あなたのおかげで兄と再会することができました。 本当にありがとうございます。 ――これからは兄・リヒトと共に、あなたを守らせていただきます」

 ……ヒメ(・・)さん。どうやら、私がさらわれ、弟さん――ハルトと再会した後、色々と彼に話したらしい。

「リヒトとまた会えて良かった。 とにかく、これからよろしくね、ハルト」

 それにしても、「あなたのおかげ」なんてのは大げさじゃないだろうか。そんなことを思いながら、私は水晶の首飾り(ペンダント)を握る。すると、目の前にいるハルトと向こうで仮面の男と戦うエイトに「何か(・・)」感じるものがあった。

「色々と話をしたいところですが、とりあえず今は兄さんがこの場を切り抜けてくれるのを待ちましょう。 ヒメさんをさらったあの(オトコ)……只者ではないようです」

 そう言って、ハルトは仮面の方へと目を向けた。私も彼と同じく、リヒトを目で追う。

 リヒトは私に迫っていた「手」を〝剣〟で振り払った後、そのまま仮面の(オトコ)の方へと走っていた。普通の剣ではなく、〝剣〟を握っているところを考えると、ハルトの言う通り、(オトコ)から邪悪なモノを感じた。

 それに、あの「手」……アレ(・・)は確実に「()」を狙っていた。これまで「私」というものにそれほどの「価値」があると考えたことはなかった。もし……ハルトが助けてくれず、リヒトが来てくれていなかったら、今頃私はあの「手」――【敵】の手に落ちていただろう。――「私」がどうなっていたかも検討がつかない。想像するだけで怖い……。

 恐怖に震えながら、私はリヒトの後ろ姿を見つめた。

 (オトコ)に斬りかかっていたハルトが、リヒトの方へと顔を向ける。

「お、やっとお嬢さんの騎士(・・)が来たみたいだ」

「ありがとう、ヒメを助けてくれて。 俺はリヒト、そっちは?」

「エイト。 ちょっとアイツ倒せそうになかったから後は頼むよ」

 リヒトとエイトがそんな会話を交わし、(オトコ)と対峙する。エイトは短剣を向けたまま後ろへと下がり、リヒトが〝剣〟を構えたまま、前に出る。

「……よお。 お前、ヒメをさらってどうするつもりだったんだ?」

 (オトコ)は答えない。リヒトの〝剣〟を見て、どうやら声も出なくなっているようだった。

 そんな(オトコ)を、リヒトはすごい形相で(にら)んでいるようだった。ここからはよく見えないが、ものすごい迫力だったに違いない。

「その娘――シェリーモルドの姫には価値があるのです! あの国には神とも通ずる『()』があると言われる『()』が地下に眠っている。 ――その『()』を存分に発揮できると言われているのがそこにいる姫なのです!」

 (オトコ)から聞かされた事実に、私は息を呑んだ。神と通ずる……? そんな(こと)、一度も父は言っていなかった。

 けれど……心当りがないとも言い切れない。確かに、首飾り(ペンダント)を渡されたあの時、「()」には人ならざる〝もの〟の守護があると私は感じた。もしかして、それが「神と通ずる」ということなのだろうか?

「我が主人は……その姫と『()』を手に入れ、この世の全てを支配(・・)し、【我々(・・)】の地を築き上げようとしているのです!」

 (オトコ)が続けて口にした言葉に、私は小さく息を呑み、思わず身震いする。

 手に入れる? 支配(・・)? じゃあもし、リヒト達が助けに来てくれなかったら、私は今頃どうなっていたか分からないってこと?

 ――それほどまでに、「私」には価値があるってこと?

「大丈夫ですよ、ヒメさん。 僕達があなたを必ず守りますから」

 いつの間にか私より前に出ていたハルトがすぐさま、私にそう言い聞かせた。

「オルフィーメリア姫! いずれ、私――いえ、我が主人がお迎えにあがります!」

 少しほっとしたのもつかの間、(オトコ)が私にも聞こえるように、高らかに宣言した。

 けれど、リヒトが黙ってはいなかった。〝剣〟を(オトコ)に突きつけて凄んだ。

「そうはさせねぇ。 いいか、言っておく。 もう二度と俺の〝ひめ〟に手を出すな」

 ……え? 思わず、私はリヒトの方へ振り向く。そういえば、さっきも……。

 そんなことを考えていると、リヒトが前へ踏み出し、(オトコ)に斬りかかろうとした。

 けれど、(オトコ)は素早く身をかわし、魔法でどこかへと消えてしまった。

 追うつもりはないのか、リヒトはすぐに私のところに駆け付けた。

「ヒメ! 約束、守れなくてごめん。 怖かったよな、大丈夫か?」

「う……うん」

 何事もなかったかのように、リヒトが私に問い掛ける。私は何とか彼にうなずきながら、どぎまぎする。

 名前を呼ばれてはっとした。そ、そういえば、「ひめ」の意味合いも何か違う気がする……!? どうしよう、絶対顔が赤くなってるよ!

 私が無事で安心したのか、ハルトとエイトと話し合いを始めたリヒトを目で追いながら、私は心の中で彼に問い掛ける。

 ねぇ、リヒト、「俺の(・・)ひめ(・・)〟に手を出すな」ってどういう意味〜!?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ