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そこはとても綺麗な場所だった。
「オルフィー。 大きくなったら、お前がこの国と『宝』を守っていくんだよ」
物心がついて間もない私は言われるがまま、王である父にうなずいてみせた。
本当は何も理解できてなかったが、目の前に在る、桜色の美しい光を放つ水晶をじっと見つめる。
……私が、守る?
「だけど、間違ってはいけないよ。 ――本当の『宝』はこの水晶じゃない。 もちろんこの水晶も宝のひとつではあるけれど、そうじゃないんだよ。 ――この水晶はお前に『力』になってくれるんだ。 でも、決してその使い方を誤ってはいけない。 正しい使い方で、この国を平和に導いていく。 ーーそれがいずれ『救世主』と呼ばれるお前の役割だ」
……救世主。もちろん、私にはその言葉の意味は分からなかった。
けれど、自分には国を守る役割があるだけは、その時、身と心に深く、深く刻まれることになったのだった。