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ロイの冒険記  作者: DAT
7/16

学校(実技)

「おいお前ら遅いぞ!早くしろ!」


バースが俺達の方に手を振っている。どんだけ実技が楽しみなんだ。まあ僕も座学より実技のほうが楽しいけどさ。

実技でパラモスの本を持っているのはおかしいので、近くの椅子に置いておく。


「よし!揃ってるな。今日は魔法の発動方法を教えるぞ!」

「んだよ親父かよ。」


バースはおもむろに残念がった。この学校では先生を村の大人たちが分担して担当している。今回は村の護衛官をしているゴートが来た。そう、ゴートはバースの父親なのだ。


「てか魔法ならマテラ先生が適任だろ?元魔法師じゃんか。」


「本来ならそうだがな、あいつは婚活パーティーがあるとかで、昼から街に行ってて無理なんだとさ。」


「(婚活してるんだ、マテラ先生……)」

魔力探知や読心術がなくても分かる。他の二人も同じように思っただろう。


「まあ、あいつには劣るだろうが、俺も魔法の発動ぐらいならできるからな!タンクも魔法使うんだぞ?」


「盾の魔法じゃなくて剣の魔法がいい!」


「盾もいいもんだぞ?まあ魔法の発動条件はさほど変わらないから、学んでおいて損はないだろう。」


バースはご機嫌斜めなまま静かになった。


「さっきも言ったが、どんな武器を使用するにしても魔法が必要不可欠だ。盾なら身体強化とかターゲットチェンジとかな。

体内の魔力を体や武器に纏わせたり、一点に集めて放ったりして使うんだ。そこの武器を使ってやってみろ。」


そこには剣や盾、杖などが置かれていた。年季が入っており、あくまで練習用という感じだ。

バースは剣、キアナは杖を手に持った。


僕はどうしようか。武器の中をよーく見ていると箱の奥にキラリと光る小さな剣がある。短剣だ。あまり使われていないのか、他の武器より綺麗だ。


「ロイは短剣か!まぁ……戦闘中は身動きがとりやすくなるし、いいんじゃないか?」


パッと決めた2人に比べて迷っていたからか、ゴートが声をかけてくれた。

言葉が詰まっているのが少し気になるが、持ちたい武器とかはまだ決めてないし、一旦これでいいか。


「よし、武器を持ったな!じゃああの的にめがけて、魔力を飛ばすんだ。えっと…武器の先に集めるように意識しろ!」


……はは。薄々思っていたが、ゴートは教えるのが下手らしい。

でも僕は魔力を以前感じ取っている。パラモスのおかげだ。短剣の先を的の方に向け、全身の魔力を感じ取る。

……剣の先まで魔力が通っているのがわかる。自分の体から武器に魔力が流れるなんて不思議な感覚だ。よし、このまま魔力を剣の先に溜めて……


「はっ!」


白い球が短剣の先から的に向かって飛んでいった。

よし!

……っと思ったが、急に方向がずれ、的とは違う方向に飛んでいってしまった。


バシュッ!


隣の的から音が聞こえた。キアナの的だ。黄色い球が的にぶつかった。


「キアナはさすがだな!もう正確に魔力を飛ばせるのか!将来有望だな!はっはっは!

ロイもなかなかだな、魔力を感じられるだけでも上出来だ!」


まだまだ弱いけど、褒められたのは嬉しい。なんだかむず痒い。


フンヌゥゥゥゥゥ!!!


力む声が聞こえる。バースの方だ。まだ魔力を感じ取れないのか、剣を思いっきり掴んでいる。


すると、ゴートはバースの肩にそっと手を置いた。するとバースはハッとした顔をした。どうやら魔力の流れを掴んだらしい。


バキィ!!


すぐにバースの剣先から赤い球が飛んでいき、的を吹き飛ばした。感覚をつかんでからの成長が早い。


「なかなかやるな!それになかなかの威力だ。鍛えれば俺以上になるんじゃないか?」


バースは鼻高々で嬉しそうだ。

キアナもバースもすごいな、僕なんて……


落ち込んでいると、ゴートが僕の肩を叩きながら、


「ロイはその魔力とまだ打ち解けていないだけだから安心しろ?本来魔力には特性があって色がついている。キアナが黄色でバースが赤のようにな。だがロイの魔力は白、」


ここでゴートは少し下を向いて頭をかいた。そしてまた顔を上げ、


「……お前の父さんと同じだ。」


えっ、そうなんだ。魔力を感じたのはつい最近だったし、父さんの魔力が白なのは初めて知った。

のちに聞いた話だが、ゴートが黒蛇亭で飲んでいると、母さんが開けた封筒から、オレンジ色の紙が出てきたところを見てしまったらしい。あの日の閉店を促したのもゴートだという。だからゴートは父さんの行方不明を知っていた。


「白い魔力は何にでも染まる。得意不得意がないんだ。だが、いかんせん扱いが難しいらしい。俺もアルベルトと出会うまで白い魔力のこと知らなかったからなぁ。あまり詳しいことは教えられん。申し訳ない。」


どうやら白い魔力というのは世間一般的なものではないらしい。パラモスが綺麗な魔力を持っていると言ったのはこのことなのかなと、ふと思った。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


ゴーン………ゴーン………

夕方の空に終礼の鐘が鳴り響いた。


白い魔力……他との違いがわからない。なんとなく赤は炎属性、黄色は光属性の魔法だというのは分かる。じゃあ白は……


「困り事か?」


迷っている僕にパラモスが話しかけてきた。何かニヤニヤしているように感じる。白の魔力について悩んでいることが筒抜けのようで、なんだろう癪に触る。


「分かってるんだろう。白の魔力について知ってるなら教えてくれよ。」


「……まあ俺もそこまで知ってるわけじゃねーんだけどな。白の魔力は魔力消費の効率がいいんだ。本来十必要な魔力が一で済んだりな。だが扱いが難しい。赤の魔力なら出そうと思えばすぐ炎を出せるが、白の場合一度魔力を赤にしてから炎を発動しなきゃならない。色持ちに比べて発動スピードも威力もどうしても負けちまうのさ。」


なるほど……魔法の発動が遅いのは、戦闘では命取りになる。一度色を変えてしまえば、それ以降は同じ属性なら他と変わらず出せるだろうが、その属性専門でやってきた人に比べると威力もやはり劣るだろう。


「……まあ白のまま使うことをおすすめするぜ。」

「どうゆうこと?」

「言葉通り、白のまま使うのさ。あの練習場で放ったみたいにな。まだ魔力に慣れていないだけで、慣れれば白でも十分戦える。属性に縛られない分応用も効くしな!」


たしかに、属性にとらわれるよりも、属性の有利不利関係なく白で鍛えた方がいいのか。無理に威力を落としてでも有利属性で戦うより、得意の白で戦う方が相手を選ばずに済む。


「そうだね!しばらくは白魔力で鍛えてみるよ!」

「おう!でもその前に、魔力操作を完璧にするぞ?手始めに家までダッシュだ!!」


……土台づくりというのは、何事も大変なのか……くそっ!

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