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ロイの冒険記  作者: DAT
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冒険者ギルド

第十一話 冒険者ギルド


………切り替えなきゃ!この世界を旅する第一歩だ!それがこんなしけた顔しててどうする!

そう自分に言い聞かせて、冒険者ギルドの門を潜った。


中には武装した大男や怖そうな人たちがガヤガヤと騒いでいる。

左手には、天井まである大きな掲示板があり、その前でミッションを吟味している冒険者の姿もある。てか、あれ上の方のやつどうやって取るんだ?

そんな新しい光景に少しビビりつつも、目の前の受付っぽい場所に向かって歩いた。


「あらボクいらっしゃい。見ない顔ね、どうしたの?」

受付嬢のお姉さんが対応してくれた。てか近くに来て思うけど、受付台が高い!僕の頭一個分がようやく見えるほどだ。


「冒険者登録をしたくて……。」

さっきまでの威勢は、受付までの道で消え失せた。なんか怖い!


「あらー新米になりにきたのね!最近冒険者志望の人少なくなってるから助かるわー!」


 そういうと、冒険者についていろいろ教えてくれた。ランクがGからSまであること、ミッション失敗時には違約金がかかるなどだ。ちなみにGは新米で、15歳の成人を境に一人前となりランクが上がっていく。だから僕も15歳まではGだ。


 そしてここで新しく知ったこともある。

 まずダンジョンについてだ。ダンジョンは地下にあり、ホールと呼ばれる異空間の穴から入っていく。ホールには二つの種類があって、常に同じ場所で開き続けるエターナルホール、たまに突如現れ、しばらくしたら消えてしまうストレンジホールだ。

 この街にはエターナルホールが一つあり、王都には三つあるという。おかげで冒険者が王都に流れてしまうらしい。

 そしてダンジョンは、五つの大陸を全て覆う、一枚岩の大きな空間で形成されている。つまりどこの穴から入っても、探せばエターナルホールに辿り着けるのだ。運が良ければだが。


 次は魔物についてだ。魔物は未確認のものを除き、それぞれ強さ別でランク付けがされている。例えばゴブリンがF、ウルフがEなどだ。

 また、ダンジョンにも地上と同じ魔物が出るが、強さが一ランク上がるらしい。ダンジョンは魔素が多く、魔物たちも強化されるのだ。


 最後は冒険者ギルドについて。なんと、冒険者ギルドは五つの大陸全てに設置されているらしい。ダンジョン内では他の種族と出会うことも珍しくなく、他の大陸に行ったときに困らないよう大昔に協定が結ばれたんだとか。当時の人たちはすごいや。




「おい坊主、ルーキーか?うちの荷物持ち、どうよ?」


 受付嬢から説明を受けていると、スキンヘッドでガタイの大きい大男に声をかけられた。そっちの方が坊主じゃないか、と思ったが、流石に怖くて言えない。

 受付嬢が耳打ちで教えてくれたが、Gランクのうちは、他のパーティに入って荷物持ちをして経験を積み、成人したときに旅立つかパーティに残るか選択するのが文化なのだとか。


「俺はこの街で二十年冒険者をやってるベテランのゴルドさぁ!俺の魔具、ブラッドウルフの剣なら切れねーものはないぜ?!」


そういうと、鞘から剣を抜き、僕に見せてきた。……普通の剣だ。手入れはされてるが特別すごいわけではなさそう。


「トーム!」


ゴルドは唱えると、急に剣から黒く熱いオーラが出てきた。びっくりしている僕を見て、ゴルドはニヤニヤしている。


「こうやって、魔物の(ソウル)を武器に宿すことができるんだ。ちなみにこれはブラックウルフの黒燃弾だな。その魔物の技を出すことができる。……まあ、魔力消費が激しいからあんまり使わねーんだけどな!はっはっは!」


ブラックウルフはDランクの魔物、倒せないこともないが、ソウルを武器に宿すには、相手を完封して従わせなければならない。つまりゴルドはDランクの魔物に圧勝できる実力者だ。

この人の元なら成長できるだろう。だけど……


「……ごめんなさい!他を考えさせてください!!」


 僕は思いっきり頭を下げた。僕は世界を見てまわりたい。でもゴルドはここに二十年いるという。僕の理想ではなかったのだ。


場の空気が一瞬凍る。そりゃそうだ。ベテランのメンツを、公共の場で潰したのだ。

「そうか…」と呟きおじさんの足が近づいてくるのがわかる。


グッと肩を掴まれた。ダメだ!………あれ?


「そりゃそうだ!いろんな冒険者いるんだから、他もいっぱい考えろ!!

おいお前ら!この街のルーキーだ!可愛がってやれよ!!」


周りからウェーイ!!と歓声が上がる。


もう何が何だか分からない。僕がこんがらがっていると、後ろの受付嬢が話しかけてきた。


「うちはいつもこんな感じだから、緊張しないで頑張ってね!応援してますよ!」

「おいおいマーサちゃん、俺にもそーやって可愛く受付してくれよー。」

「うるさい。黙って魔物でも狩ってきなさい。最近増えてきて困ってるんですから。」

「手厳しーぜ!!」


周りからは笑い声が絶えない。暖かい。正直もっとギスギスした雰囲気だと思っていたから、これは嬉しい誤算だ。



「おやおや、今日は一段と賑やかですねぇ。」

場が賑やかなことを聞きつけて、奥の部屋から白鬚を生やしたダンディなおじさんが出てきた。スタイリッシュで片眼鏡をつけており、黒い杖をトントン叩きながらこちらに歩いてくる。


「ちっ、あんたか。」

ゴルドはそういうと、さっきとは裏腹に少し怒った表情をしてギルドを出ていった。周りのガヤもボリュームが下がった。


え、このおじさん、嫌われてるの?


そう思っていると、僕の方に気づいて、こちらに近づいてきた。


「この子、今日からGランクで入ってくれるロイくんです!真面目そうでいいですよねー!」


先ほどのゴルドの態度とは一変、マーサさんはこのおじさんと親しげに話している。よく見ると、他の受付嬢も先ほどより明るい表情をしている感じがする。


なんだ?この違和感。


「これはこれは。嬉しいですねぇ。私はクレバス。このギルドの長を務めさせていただいております。ぜひ、一緒にこのレイエムの街を盛り上げていきましょう。」


そういうと、僕に手を差し伸べてきた。少し不思議な感じがしたが、あまり深く考えず、僕はそのまま握手をした。


ズズッ


握手をした途端、僕はクレバスから奇妙な魔力を感じ取った。以前感じたことのある、不思議な魔力だ。……そうだ、思い出した。


(魔玉)


僕とパラモスは同時に心の中でつぶやいた。カイが持っていた魔玉の魔力を、クレバスからも感じる。


「あ、僕はこの後宿探しがあるので……失礼します!」


そう言い、その場を後にした。あまり長居したくない、そう感じたからだ。



「……ふむ。」

僕の後ろ姿を見つめ、白い髭を触りながら、クレバスはつぶやく。

そして、ミッション掲示板の前にいる、黒いフードを被った者に目配せを送ると、察したのかそのままギルドから出ていった。

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