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ロイの冒険記  作者: DAT
14/16

初めの一歩

「おーい!早く行くぞ!」

村の入り口でバースとキアナがこっちに手を振っている。その周りにはゴートやマテラ先生がいる。他の村人たちも僕たちを見送ろうとしてくれており、集まっていた。


「せっかくの旅路だ、危険もあるだろう。選別だ。」

ゴートが僕たち三人にそれぞれの武器を見繕ってくれた。バースは剣、キアナは杖、そして僕は短剣だ。


「選別って言っても、村にある使い回しの武器だ。目的地に着くまでのつなぎだと思ってくれ。」

使い回しとは言っているが、どれもかなり綺麗でしっかりと手入れがされている。出発日に渡すと事前に言われていたが、手入れをするためだったのかと思うとすごく嬉しい。



アイル村と街の間には整備された通りがあるが、近くにはナガロスの森がある。森の外に出てくる魔物も一定数いるため、しっかりとした武器があるのは心強い。



「とうとう旅立つのね…」


母さんが心配そうな顔をしている。母さんのその表情を見ると、旅立つことの実感が湧いてくる。


「体には、気をつけるのよ。」

「うん。」


最後まで身体のことを労ってくれる母の愛を再確認できて嬉しかった。


「きっとあなたなら大丈夫。だってあの人の息子だもの。…あとは、胸を張って行きなさい!」

「うん!!それじゃ…… 行ってきます!!」


僕らは元気よく旅立った。パラモスと父さんの手帳を入れたリュックを背負って。胸元の指輪も朝日を浴びてキラキラと輝いている。

父さんの指輪はまだ僕の指には大きすぎるため、紐を通して首飾りにしているのだ。


僕たちの姿が見えなくなるまで、村の人達は手を振ってくれていた。






移動中……


「そういえばバース、なんで街じゃなくて王都の冒険者なの?」


アイル村がアルカディアの最北端にあり、そこから南に向かって西にレイエムの街が、東にナガロスの森がある。そしてさらに奥に王都があるため、バースは一度街を通ることになる。


「まあダンジョンの入り口が多いっていうのも理由の一つなんだが、一番はやっぱ『竜の方舟』がいることだな!早く会いてーぜ!」


「『竜の方舟』?」


「なんだ知らねーのか?あの有名なSランク冒険者チームだぞ!そんなのも知らないでよく冒険者やろうとか思ったなロイは。」


「べ、別に知らなくてもなれるし!」


「冒険者志望じゃない私でも知ってるよ?」


「くっ……」


「だははははは!幸先わりーなロイ!」


そんな感じでレイエムに向かって歩いていた。すると、ナガロスの森の方から何やら声が聞こえてくる。これは……子供の声?


「……ぅぁぁぁぁああああああ!!!!」


大声と共に二人の子供が森から飛び出してきた。半泣きで死に物狂いで街に向かって走っていく。

僕たち三人がキョトンとしていると、森の中から3匹のゴブリンが子供の後を追いかけて出てきた。

逃げる二人が後ろを振り返ったその時、足元の石に一人がつまずいてしまった。もう一人が気づいて立ち止まり、転んだ子を抱き抱えている。


「………、ってやばいじゃん!キアナ!」

「う、うん!光壁ホーリーバリア!!」


僕の掛け声でキアナがゴブリン達の目の前にバリアを出し、ゴブリン達はぶつかって倒れた。


「ロイ!一匹頼んだ!」

「うん!白魔弾ショット!!」


僕の魔弾は一番奥にいたゴブリンにあたり、吹き飛んだ。


「ぉおおおらああああ!!」


雄叫びとともに手前のゴブリン二匹をバースは斜めに一刀両断した。


「……ざっとこんなもんか、初陣にしてはまあまあだな。」


血がついた剣を振り払い、ゴブリンの死体の前で誇らしげにしている。


「ところで…」


僕たちは子供の方に目をやる。よく見ると、顔立ちがとても良く似ている。双子か?

片方は赤髪で、転んだ子を抱き抱えながらこっちを睨みつけている。え、なんで睨まれてるの?

もう片方は青髪で、涙を流しながらビクビクしている。膝は擦りむいて出血していた。


光癒ヒール!」


キアナがそっと近づき、青髪の子の擦り傷を回復させた。青髪の子は、急に痛みが引いたようで驚いた表情をしている。近くにいた赤髪の子も同じく驚いている。



その時、赤髪の子のポケットから何かがはみ出ているのに気がついた。僕の目線から察せられたのか、赤髪の子が一瞬ギョッとした顔をして、すぐにポケットにしまい直した。

しかしそれはこちらも逃さない。


「今隠したもの、見せてもらってもいいかな?」


僕は彼らの視線に合わせるために膝を落として、なるべく優しく聞いてみた。


「うるせぇバーカ!!」


うん、どうやら間違えたようだ。ついでにこの子の教育も間違っている。親の顔が見てみたい。


「いいから出せや!」


バースが痺れを切らして赤髪の子を持ち上げた。するとポケットから白い花が出てきた。そしてもう一つ、丸い玉のようなものも落ちた。魔力探知があるから分かる。この玉から魔力を感じる。……いやな魔力だ。


「これは……ヒスイ花ね。数が少ないわけじゃないけど、森の奥とかにしか生息していないの。市場ではそこそこの値がつく花よ。」


キアナが驚いた表情で話してくれた。ヒスイ花は白い花びらに真ん中が青い色をしているのが特徴だ。湿気が多く、日当たりが良いという一見矛盾な環境でしか咲かない花なのだという。


「でもそっちの玉のようなものは……、分からない。」


「これは僕らのだ!渡さない!!」


そりゃそうだよなと思っていると、青髪の子が、落ちたヒスイ花に被さるようにして飛びついた。二人してかなり必死な様子が伺える。


「ねぇ、どうしてこの花と玉を持ってるのか、教えてくれる?」 

キアナが青髪の子に優しく話しかけた。


「やだ!教えるもんか!」

「そう、せっかく傷を治したのに、お姉さん悲しいなー……」


二人はそれを聞いて言葉が詰まってタジタジになっていた。ほんとは優しい子なんだな。前言撤回だ。


「別に取ったりしないからさ、ただ気になるだけ、ね?」


二人は互いの顔を見合わせて、うなずいた後僕たちの前にヒスイ花を出してくれた。


「そういえば、まだ名前いってなかったね。俺はカイ(赤髪)、こっちはレン(青髪)。

…この花は、薬の材料として必要だから取ってきたんだ。……ごめんなさい。冒険者だから奪われると思って……。」


冒険者は命を賭けて素材を集める仕事のため、荒くれ者や極悪人も一定数存在する。この子たちが警戒するのも頷ける。


「そうなんだ。でも、君たち二人で森に入ったの?しかも丸腰で……さすがに危険すぎない?」

「それは……。」


聞かれたくないことを聞かれたのか、二人とも目線を逸らして言葉を濁している。

しかしカイが再び顔を上げ、話してくれた。



どうやら、彼らはレイエムの中にある小さな家で生活しているようで、看病をしているマーケルという兄がいるらしい。

マーケルは最近まで冒険者として活躍していたが、蛇の魔物の毒をもらってしまい、現在は薬を飲んで凌いでいる。


しかしそこに目をつけたのがレアスという、バルセナ商会の支店長である。毎月、薬を法外な値段で取引しているという。

最近まではマーケルが冒険者時代に貯めたお金を切り崩してなんとか薬代と生活費を工面していたが、とうとう底をつきかけてきた。


そこで二人はマーケルが噛まれたとされる蛇の情報を冒険者ギルドで集め、その解毒剤としてヒスイ花が必要だということを知った。

商会で売られているのをみたことがあるけど、子供二人じゃどうすることもできない値段だった。


そこでその花の群生地を調べたところ、ナガロスの森の奥にあることが分かり、意を決して取りに行ったのだとか。


「それで、本当に取ってこれたと……」

「いや、全然ダメだった。魔物怖いし、戦えないから森の入り口近くまでしか近寄れなかった。」

「えっ、じゃあこのヒスイ花は……?」


ここまで話してくれたカイもここで言葉が詰まった。すると代わりにレンが答えてくれた。


「……たまたま死んだ冒険者を見つけたんだ。」

「おいおいそれって……」


バースが驚いている。そう、死体漁りだ。ダンジョン内であれば問題ないのだが、地上での死体漁りは禁止されている。理由は明白で、ダンジョンと違い、死体や遺品を遺族に届けることが可能だからだ。


「お願いだ!このことは黙っててくれないか!兄ちゃんを助けたいんだ!」


これは難しい判断だ。本来ならば衛兵に突き出すべきなのだろうが、理由が理由だ。衛兵に突き出すと心苦しい……、でも……


「ぃようし分かった!ガキども!まずその兄ちゃんのところに連れてってくれ!判断はその後だ!」


バーズが重い腰を上げるような形で言った。こういう責任が伴う判断ができない自分が情けなく感じたが、とりあえず今はバースに感謝しよう。

もし捕まることになったら、僕も捕まることを覚悟して。

キアナは……、ああ、目がクルクルしている。考えすぎて頭がパンクしたようだ。今は何も話しかけないでおこう。




「(おい)」

突然脳内に喋りかけてきた。パラモスだ。


「(あのガキが持ってた玉、ありゃ、ちぃとめんどくさい代物だぞ。)」

「(どうゆうこと?)」

「(魔玉っていってな、自然に生まれるのはごく稀なもんなんだ。それこそ人工的に作られたっていった方がまだ信じられる。)」

「(そうなの?)」

「(ああ、今回の件、なんか匂うぜ。)」


そういわれればそうだ。僕も魔力探知でみたから分かる。普通の魔物から取れるようなものではないオーラを感じるのだ。


「(……それと、匂うのはずっとリュックの中に籠ってるからじゃない?)」

「(ああそうか、だからやたら変な匂いが……ってそういう匂うじゃねーよ!)」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「報告。逃した冒険者を発見しました。」

「ご苦労。で、回収できたか?」

「それが、何者かに盗まれたようです。」

「なに?」


暗い部屋の中で会話をしている二人組がいる。


「面倒な…、今すぐ探し出せ!」

「ぎょいん」


変な返事と共に一人が姿を消した。


「まったく、なぜこうもうまくいかん……。まあいい。計画の実行までもう少しだ。それまでに…。」

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