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ロイの冒険記  作者: DAT
11/16

パルテナの書

母さんも落ち着き、部屋には僕一人だけになった。天井を眺めながら、ふと思い出す。


 父さんが行方不明になったって知った日も、こうして天井眺めてたっけ。

そしたら夢の中で変な声に導かれて、パラモスと出会った。

こいつと毎日特訓したんだよなぁ。魔力の使い方も教えてくれた。ビビりな僕でも、父さんみたいに冒険に出れるように、ビシバシしごかれたっけ。はは、まだ一週間ぐらいしかたってないのに、なんか懐かしく感じるな。


目に涙が浮かんでくる。


でも、どうしてパラモスは、僕を守ってくれたんだろう。思えば、僕は全然パラモスのこと知らなかったなぁ。


……『パルテナの書』か。


この言葉、どっかで聞いたんだよなぁ。フェンリル……神域戦争……本!書庫!そうだ!父さんの書庫で見かけたんだ!まだ読んでない本。でも、そんな題名の本があったはずだ!


僕はベットから飛び上がり、急いで父さんの部屋に向かった。


壁一面にある本棚。綺麗なものからボロボロのものまで、僕のために冒険の度にお土産として持って帰ってきてくれた本たちだ。


えっと確かこの辺に……あった!パルテナの書!

ボロボロな赤い表紙に、読みづらいがパルテナの書と書いてある。本の中は……ダメだ。文字が擦れていたり、ページが破れていたりで、まともに読めない。

どうして父さんはこんな本を……まあ考えてもしょうがない。


所々読める単語は拾えた。


『十三の神』


『聖霊族』


『戒め』


『封印』


この四つだ。やはり単語だけではよく分からない。だけど、聖霊族なら分かる。この世界のあちらこちらに存在し、姿を見せる相手を選ぶ種族だという。もし出会うことができたら、詳しい話を聞いてみたい。


……出会う……か…。冒険……。


ふと窓の外を見る。この世界はどれくらい広いのだろうか。何があるのだろうか。この手帳のような景色はどんな場所にあるのだろうか。この村にいるだけでは分からない。でも……。



だめだ。部屋にこもってると考え事で頭が痛くなってくる。外の空気でも吸ってこよう。


もう外はすっかり暗い。でも今夜は満月みたいだ。月明かりで普段よりは幾分か明るい。


トボトボ歩いていると、学校の前までついてしまった。月夜の少し冷めた空気が心地よく、気づいたらこんなとこまで。


シュッ シュッ シュッ


どこからか、何かが擦れるような音が聞こえてくる。こんな夜にどこから?

不思議に思いながら音のする方に行ってみると、学校の裏庭に誰かがいる。あれは……バースか?


近づいてみると、やっぱりバースだ。どうやら学校の備品の剣を使って素振りをしているようだ。

僕が近づくと、ふと気づいたのか、バースもこちらを振り返った。顔には包帯がしっかりと巻かれており、その包帯がびしょびしょになるほど汗をかいている。


「……体調はもういいのか?」

「うん」


あんなことがあった後だ。普段通りの会話がしづらい。

するとバースは備品の箱を漁り、木製の短剣を僕に投げてきた。


「取れよ。」


そういうと、素振りしていた鉄製の剣をしまい、バースも木製の剣を手に取った。


「もう大丈夫なんだろ?俺の憂さ晴らしに付き合えよ。」


僕は素直に落ちた短剣を拾い、お互い武器を持って対峙した。

静かに会話するよりも、こっちの方がいいと、僕もなんとなく、そう感じたんだ。


夜風が吹き木々が揺れ、近くに生えていた果物が地面に落ちた。

その瞬間を合図にしたかのように、互いに距離を詰めた。


バースが振り下ろした剣を、短剣で受け止める。

バースの剣には赤魔力が巡っており、かなり強いパワーだ。負けじと僕も短剣に白魔力を通して応戦する。

そこから互いに打ち合った。両者譲らず、力を出し惜しみせずぶつかり合った。


「気に食わねぇ。」

バースが強く歯を食い縛りながらつぶやいた。


「お前もキアナも本職は魔法師だ。親父はタンクだ。だからお前らの前に立って戦わなくちゃいけないのは俺なんだ!」

剣先を僕に向けた。剣の持ち手を強く握りすぎているのか、プルプル震えている。


「なのに……なのに……なんで俺はお前らに守られてんだ!!」

目元から涙がこぼれ落ちている。普段強気で傲慢な態度をとっているバースが泣いている。初めて見た。


「俺は!周りの人守るために剣持ってんだ!悪い奴倒せば大切なもん守れるから剣持ってんだ!なのに……一矢報いることもできずにやられちまった……。仕舞いには守りてーもんに守られた……!こんなの……こんなの望んでねぇ!!!!」


剣に赤魔力を集中させている。その剣を思いっきり振りかざした。

僕は短剣で、体を横にずらしながら攻撃をいなし、右手拳で思いっきりバースの頬をぶん殴った。


「勝手に守ってんじゃねーー!!!」

僕は叫んだ。静寂な夜に僕の声が響き渡る。


「魔法師だから?タンクだから守る?ふざけるな!!僕はお守りしてもらうために森に入ったんじゃない!!戦うために入ったんだ!成長するために入ったんだ!僕を……仲間をなめるな!!!」


「うるせぇよ……!俺は俺のなりたい剣士になるんだ!!外野は黙ってろ!!」


「じゃあその外野に勝ってみろよ……!その剣で!!!」






どれぐらい時間がたっただろうか。空が明るくなっている。気づいたら地面に仰向けで横たわっていた。

横を見るとバースがいびきをかきながら寝ている。


村の方から僕たちの名前を呼ぶ声がうっすらと聞こえてきた。そういえば何も言わずに家を出たんだっけ……。

昨日の今日でまた母さんに心配かけてしまった。早く行かないと……あれ、体が動かない。筋肉痛がひどいや。


誰か…見つけてくれぇ〜〜。

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