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メルトアーマーサークル 名呉市臨時防衛部活動日誌。  作者: ショーさん
第一話 再誕生編
4/17

第一話 ④ 私が味方じゃないって言ったらどうする?


「Installation completed

メルトアーマー、起動」


スマートフォンからアナウンスが流れ、真っ暗だった仮面が一気に色付いた。


まず驚いたのは、仮面を被っているという感覚が全くなかった事だった。


重さなどはもちろん、視界も日常で過ごしている時と何も変わらない。


視界の端の方に青色のUIが表示されていなければ自分が仮面を被っている事に全く気が付かないだろう。


「オマエ・・・ソイツハオドロイタ!」


怪物は少しずつ距離を狭めてきた、


「・・・ああ、自分でもビッグリだ」


「ソノチカラハオマエゴトキニハフツリアイダ、メルトヲカエセ」


怪物はゆっくりと近づいてきた。


俺は走ってくる怪物の胸ぐらを掴んだ。


「・・・悪いが俺もわからない事だらけなんだ、不釣り合いかどうか、試させてもらうぞ」


そう言いながら俺は怪物を思いっ切り殴った。


怪物はまるでバズーカにでも打たれたように大きく吹っ飛んでいった。


「・・・す、すげぇ・・・」


思わず呟いた。


「オマエラ...ゼッタイニユルサン!」


そう言いながら怪物は走りながら近づいてきた。


「・・・.来い!」


怪物は左右につけた鎌を次々に振りかざした。


俺はこの攻撃を避けた。


ヘッドアーマーには次の相手の攻撃予測が表示されていた。


この表示に従えば、相手の攻撃を簡単に避ける事が出来た。


そして、相手の連続攻撃にスキがある事に気がついた。


「そこか!」


再び、怪物の腹を思い切り殴った。


怪物は大きく吹っ飛んでいった。


その時、スタンバイスロットに装着してあるスマートフォンの光が点滅している事に気がついた。


タップしてみるとメルトポータルのアプリ内の


〈モデルチェンジ〉


と書かれた項目が点滅している事に気がついた。


タップしてみると、初回モデルと書かれたアイコンが表示された。


「初回モデル...?」


恐る恐るタップする。


「モデルチェンジです。スタンバイスロットにスマートフォンを再装填してください。」


と電子音声でアナウンスされた。


「再装填...こうか!」


俺はスマートフォンを一度スタンバイスロットから外し、再び装填した。


すると再びメルトアーマーが発光し、右腕の肩アーマーがガチャガチャと変形した。


そして目の前に溶けた鉄のようなものが集まり、瞬く間に黒い槍のような武器になった。


基本は黒色だが青いラインの光がはっきりと発光していた。


「reload

Installation completed

メルトアーマー、ランスモデル、起動」


俺がランスを握った瞬間スマートフォンから電子音声が鳴り響いた。


「...ランスモデル...この槍を使えって事か」


正直に言うと少し興奮していた俺はここまま槍を振り回した。


ランスは金属の質感とは裏腹にとても振り回しやすく、軽いという感覚すらあった。


ランスが軽いのでは無く、メルトアーマーの筋力サポート機能が強いというのは、後から知る事になる。


今度は俺から怪物に接近した。


飛び上がりそうな程軽い体で一気に怪物の前に近づき、俺はランスを思いっきり横に振り被った。


怪物はランスを防ぐ為、腕についている鎌で身構えた。


「今だ!!」


俺は振りかぶったランスを直ぐに正面に持ち替え、怪物に思い切り突き刺した。


「ア、アア・・・!!」


怪物はうめき声を挙げながら青く発光し、その後溶かした鉄のように地面に流れていった。


それと同時に、俺たちを覆っていた黒い幕も溶けていった。






外の光景は一部の車が破壊されているものの、閉じ込められた時と何も変わらない地下駐車場だった。


とりあえず、元の場所に戻れた事に安堵した。


「...なあ、登...大丈夫なのか」


掠れそうな声で裕司が聞いた。


「...あぁ、大丈夫だ、それより二人は」


そう言いかけた瞬間、後ろから耳を貫く声が聞こえた。


怪物・・・それもさっき俺たちを襲った怪物とは別の見た目だった。


先程の怪物が、駐車場の奥からこちらに接近していた。


「まだいたのか!」


俺は即座に槍を構えた。


高速で接近する怪物を思いきり槍で殴った。


だが・・・まるで効いていない。


まるで効いていないとしか表現するしかなかった。


怪物は鋭い目で俺を睨み、大きく吹き飛ばした。


「登!!」


俺は地面に叩き付けられた。


さっき倒した怪物とは格が違う・・・!


すぐに槍を持ち直し奴が来るのを備えた・・・


「ソード。ギガフィニッシュ」


馴染みの機械音声と共に、アーマーを着たノアが俺たちの前に颯爽と現れた。


先程と違い、剣は更に黄色に発光し、剣のあちこちから黄色いスパークが飛び出していた。


「おい!大丈夫か!」


ノアは俺を振り返り尋ねる。


「小さいのは倒した、だけどあいつは・・・」


「上出来!後はあたしが引き継ごう!」


ノアは一瞬で怪物に近づき、目にも止まらぬ速さで怪物を切り刻んでいった。


「凄い...」


結衣がボソリと呟いた。


俺は...ノアの的確で無駄の無い、それでいて力強い剣捌きに目を奪われていた。


「これで!!終わり!!」


ノアの叫びが駐車場全体に響いた。


そして怪物は青く発光し、その後溶かした鉄のように地面に流れていった。


「ふぅぅぅ...あっ!おい!大丈夫か!?」


アーマーを着込んだノア倒れている俺に手を差し伸べた


「ああ・・・なんとか」


「良かった...無事で...」


心の底から安堵した声で呟いた後、ノアは俺の方を見た。


「...お前、名前なんて言うんだ」


「...登だ」


「ソロンフィールド・・・あれ面倒くさいだろ、良く折れずに装着出来たな~」


ノアはそう言いながら肩を思い切り叩いてきた。


ソロンフィールド...さっきの黒い幕か

あの空間は...俺にとってのトラウマ...10年前の火災...


そこまで考えたタイミングでノアが口を開いた。


「登、ちょっと見ろ」


ノアは右腕に装着していたスマートフォンをタップした。


すると、これまで来ていたアーマーが徐々に溶け、元のトレンチコートがあらわになった。


「スマートフォンのアプリの中に解除ってボタンがある、そこ押せばスーツを脱げる」


ノアに言われるがまま俺は解除ボタンを押した。


ノアと同様に俺のスーツは徐々に溶け、学生服が現れた。


「詳しい話は後だ、今は外に」


ノアが落ち着いた声で話しかけた。






外はすっかり暗くなっていた。


いつもならオフィス街と駅前イルミネーションが光り輝く名呉駅前広場も、焦げ燃えた車と救急車、警察車両が埋め尽くす今日はとても美しいとは思えない後継だった。


地下で何が起きてるかまでは把握しきれていない状況という事は想像出来た。


「すいません!怪我人がいるんです!!」


裕司は結衣を連れて救急車の方に駆け寄って行った。


俺も結衣を支えようとしたが、一人で大丈夫と裕司に断られた。


「だ、大丈夫だ・・・俺たちは・・・」


...裕司は俺に少し怯えているようだった。


「はぁ...」


この5時間の疲れがドッと押し寄せてきたのか、思わず床に座り込んだ。


とても落ち着いていられない状況...のはずだが、何故か心は落ち着いていた。


「...うい!」


突然、後頭部に氷をぶつけられたような冷たさが走った。


振り返ると、両手にペットボトルのペプシを抱えたノアがいた。


「おら、お疲れ、ついでに朝のお礼だ」


そう言いながらノアは蓋の空いたペプシを流し込んでいた。


「ありがとう・・・ございます。」


「ああ~敬語とかいいぜ、めんどくさいし。呼び方もノアで」


「・・・じゃあ遠慮なく、ありがとう・・・ノア」


俺はもう一本のペプシを開け、一気に流し込んだ。


疲れた体と脳に直に入り込んでくる。


裕司に借りた漫画にコーラで動くサイボーグがいたが今なら彼の気持ちを心で理解出来る。


5月の夜の地べた。


冷たい風が肌を駆け抜けていく。


「・・・色々、聞きたい事があるんだけど」


ようやく今の状況が飲めてきた俺はノアに尋ねた。


「・・・色々か、そりゃ、まあそうだろうな」


ペプシを飲み終わったノアがゆっくりとボトルを地面に置いた。


「う~ん、私が説明しても多分すぐサモ野郎の説明始まるんだよな・・・そうだ!一つだけ!どうしても聞きたい事聞いていいぜ」


「なんだそれ・・・一つか・・・」


俺は頭の中をフル回転させた。


アーマーの事、怪物の事、そもそも街がどうなってるのか・・・


「・・・ノア、君は俺たち・・・この街の味方なのか?」


絶対にもっと聞くべき事はあった。


だが、思わず聞いてしまった。


想定していなかった質問なのか、ノアは一瞬驚いた後、少し笑った。


「えぇ~もっとあるだろ~聞かなきゃ行けない事」


「ごめん、思わず」


「はは~面白いな~」


ノアは一通り笑った後、トークダウンして話しかけた。


「・・・私が味方じゃないって言ったらどうする?」


「その時は・・・」


俺はスマホを見つめた。


「・・・勝てると思う?私に」


俺の考えていた事がバレたのか。


少し意地悪な質問だ。


ノアも自覚があるのか、人をおちょくるような声で聞いてきた?


「・・・多分勝てないと思う、ただ。」


「ただ?」


「・・・だからと言って戦わない理由にはならないと思う、そこで逃げて、他の人が苦しむのは見たくない・・・」


「・・・へぇ、意見があるな、あたしもだ。」


ノアは少し間を置き続ける。


「まあ一つ安心していいのは、私はこの街と登の味方だ」


真っ直ぐにこちらを見るノアに一瞬目を逸らしそうになった。


だが、俺もノアを見つめながら答えた。


「そっか・・・それは・・・心強いな」


「へへ、そう言われると嬉しいな」


ノアは笑顔で返してきた。


俺は炭酸が抜けた甘いだけの黒い液体を飲み切った。


「はあ・・・炭酸の無いペプシ、クソマズいな」


ノアの一言に確かにと言いかけたがグッと抑えた。


その時、俺のスマートフォンが突然暗転した。


俺だけじゃない、ノアや周りにいる警察、逃げてきた人のスマホも同時だった。


「来た!」


「来たって」


「いいから画面見てな」


暗くなったスマホの画面にスーツを着た一人の男が表示された。


恰幅の良い坊主の男は、生活感のない白い部屋で佇んでいた。


男の右腕には、赤色のスタンバイスロットが巻き付いていた。


街を見渡すと、俺たちのスマホ以外にも、ほぼ全てのスマホ、モニターで同じ画面が表示されていた。


「なんだこれ」「怖い」と言った声が街に響き渡っていた。


画面の男は、静かに口を開けた。


「皆様、こんにちは。本放送を担当させて頂きます。サモ社CEO、ソハネです。」


ソハネと名乗る男は、そう言いながら、深々とお辞儀をした。


「本放送は名呉市の皆様に向けた物ですが、名呉市外の方々にもご視聴出来る環境を整えています。ご了承ください。」


プレゼンに合う笑顔を向けながら、男はゆっくりと口を開けた。


「一部の名呉市の皆様は既にご存じのように、現在名呉市ではレギュラスと呼ばれる怪物が発生しています。」


ソハネはそう語りながら、俺たちと戦った怪物・・・レギュラスが映った監視カメラの映像を表示した。


「レギュラス、我々にも正体は判明していませんが、奴らには近代兵器は聞きません。またレギュラスは名呉市周辺にのみ出現します。」


近代兵器・・・確かにレギュラスはノアの投げた爆弾をもろに受けてもピンピンしていた。


つまり奴を倒せるのは・・・


俺は自分の右腕に巻き付いたスタンバイスロットに目を落とした。


「レギュラスは名呉市にのみ出現する怪物ですが、名呉市を中心に周辺地区の攻撃の可能性があります。その為、サモ社は対レギュラス防衛装置、大型疑似ソロンフィールドシステムを発令しました。」


男は冷静に、それでいて堂々と語りかけた。


「こちらのソロンフィールドシステムは名呉駅を中心に半径15キロの範囲で設定してあります。ソロンフィールドは外部、内部共に突破は不可能、既に通過を試みた各種公共交通機関、自動車などがソロンフィールドと衝突し大きな事故が発生しています。むやみにソロンフィールド周辺に近づくのはお控えください。」


画面には名呉市に繋がる高速道路が表示されていた。


何台もの自動車が原形から大きく離れた姿でスクラップになっていた。


あちこちに車が飛び散っていたが、ある場所を境に一切の車が無くなっていた。


そこが、ソロンフィールドの範囲というのが簡単に理解出来た。


「名呉市の皆様、大変申し訳ございませんが、99999体のレギュラスを駆除するまで名呉市からの出入りを禁じさせて頂きます。ご了承ください。」


ソハネのその言葉で、街中がパニックになるのが伝わった。


もちろん、全員がこの配信を信じていたわけではない。俺含めて、何か悪い夢か、ドッキリか・・・そうでなくとも仮にレギュラスが現れたのなら、国か・・・それこそヒーローが助けてくれる・・・俺はそう願いながらスマートフォンを眺める事しか出来なかった。


「名呉市の皆様。ソロンフィールドの解放条件は一つ、全てのレギュラスを駆除する事です。そこでサモ社はメルトシステムを開発しました。」


そう言いながらは男はポケットからスマートフォンを取り出した。


「ではお見せしましょう。メルトアーマーを」


男はそう言いながらスマートフォンを赤いスタンバイスロットに装填した。


「Creative

Installation completed

メルトアーマー」


一瞬でソハネは黒と青を中心にしたアーマーで体を身に包んだ。


漆黒のアーマー、その表面には青と銀の装飾が施されていた。


その装飾はまるで火花のようだ。


アーマーを着たソハネは軽く腕を払い、再び話し出した。


「これが弊社が開発した、次世代式身体補助器具、メルトアーマーです。」


男は声のテンションを一段上げて話しを続けた。


「このメルトアーマーは、専用のアプリケーションをダウンロードしたスマートフォン、及び別売りのスタンバイスロットをご購入頂ければ直ぐに、どこでも使用可能です。スタンバイスロットは名呉市内の自動販売機を中心にて2980円で購入可能です。既にサモ社製のスマートフォンを使用して頂いてる方にはアプリケーションを配信しています。他社製品をご使用の方も順次ダウンロード出来るように調整しています。」


街中で驚く声が聞こえた。


「レギュラスを討伐して頂いたお客様は、弊社からポイント「いくら」を振り込ませて頂きます。このポイントは通常の現金の代わりに使用して頂く他、モデルチェンジと呼ばれる使用出来る武器を増やす際にもご利用頂けます。」


まるで新作ゲームを発表するかの如く、ソハネは気持ちよさそうに話していた。


「その他、各種質問などはサモ社HPをご覧ください。最後に、選ばれた人間だけがヒーローになる時代は終わりました。これからは、名呉市の皆様、引いてはスマートフォンを使用する全ての人間が次世代のヒーローです。検討を祈ります。」


その言葉を残し、スマートフォンは再び暗転した。


・・・これだけ?


死ぬかもしれない環境に閉じ込めておいて、これだけ?


その事実を認められない俺はただ、スマートフォンの画面を眺める事しか出来なかった。


初めて戦ったレギュラスなら、俺一人でも勝てるかもしれない。


だが、後から戦ったレギュラスは、今の俺では勝てない。


その事実が頭の中を反射した。


「・・・・なんだよそれ・・・皆見殺しって事かよ!」


一人の男がそう叫んだ。


その瞬間、街中の人々の不安や怒りが爆発した。


ただ・・・俺も・・・不安を爆発させたい気持ちはわかった。


「・・・そんな事はさせない。」


ノアはぼそりと呟き立ち上がった。


「待てよ、どこ行くんだ」


「・・・聞いたろ、サモ社はあんた達を閉じ込めて、このままレギュラスと共に封印するつもりなんだ、けどそんなの嫌だろ?」


「・・・ああ」


「だから、あたしが全員潰してくるのさ」


ノアは険しい表情でそう答えた。


「・・・いいか。今のアンタなら、そこら辺の雑魚レギュラスなら駆除出来る。そうすりゃとりあえず安全に暮らせる。だから後は任せろ」


ノアは俺の肩を叩き、そう続けた。


「・・・結構楽しかったぜじゃあな」


「待て!」


「・・・なんだ?」


「・・・俺に!もっとメルトアーマーの戦い方を教えてくれ!」


思わず飛び出た言葉だった。


「・・・俺を、ヒーローにしてくれ・・・!」


ノアは一瞬驚いた後、ニヤリとした顔で俺を見つめた。





現在





「くっ!!」


間一髪でリザードレギュラスの攻撃を避けた。


俺は物陰に隠れた。


リザードレギュラスは口から火炎弾のようなものを発射していた。


こいつには接近戦は不利。


ランスモデルで行くのは適切じゃない。


すぐに俺はモデルチェンジのアイコンをタップしスマートフォンを再装填した。


「Reload

Installation completed

メルトアーマー、テイザーガンモデル」


ランスモデルとは異なる音楽がスマートフォンから流れた。


俺の持っていた槍は溶け、代わりに黄色と黒色の武器、テイザーガンが生成した。


そして俺自身のアーマーも右肩を中心にガチャガチャと姿が変化し、最後の変化を終えたタイミングで俺のアーマーに黄色いラインが追加された。


リザードレギュラスがこちらをギロリと睨んでいる。


俺は物陰に隠れながら隙を狙った。


「今だ!!」


リザードギュラスの体の真ん中にテイザーガンを発射した。


「グらあああああ!!」


予想通り、相手はしびれている。


テイザーガンフォームは攻撃力は低いが相手をダウンさせる事が出来るモデルだ。


「よし!行くぞ!」


俺はリザードレギュラスに向かって走り出した。


「Reload

Installation completed

メルトアーマー、アックスモデル」


俺は走りながらアックスモデルにモデルチェンジした。


アックスモデルは攻撃が大振りになる分強力な一撃を与える事が出来る。


リザードレギュラスが怯んでいるこの状態なら・・・!


重たいアックスを両手で持ちながら俺は思いっきりジャンプした。


「くたばれ!!」


俺はアックスを振りかぶった。


だが、その瞬間、リザードレギュラスのしびれが取れた。


リザードレギュラスは後ろに生えている尻尾で俺を思いっ切り地面に叩き付けた。


「くっ」


リザードレギュラスは倒れこんだ俺を眺めながら口の中を赤く染めた。


あれが火炎弾発射前の準備なのはすぐに理解した。


「Reload

Installation completed

メルトアーマー、シールドモデル」


巨大な盾が生成された。


これで防ぐしかない


そう考えた俺は火炎弾を身構えた。



[Reload

Installation completed

メルトアーマー、マスケットガンモデル」


俺とは別のスマホから音声が聞こえた。


振り返ると、メルトアーマー、マスケットガンモデルに姿を変えたノアが銃を構えていた。


そのままノアはリザードレギュラスの口に発砲した。


「ぎぇあああ!!」


リザードレギュラスの悲痛な叫びが聞こえた。


「・・・なあ登、これ何体目?」


「・・・2体目」


「へ!3体倒した!あたいの勝ちだな」


「いや一体は俺が追い詰めたのを・・・」


「グぎゃああああ!」


リザードレギュラスはこちらを睨みながら叫んだ


「・・・あいつずいぶん消耗してるな、あれならギガファイナルで倒せるだろ」


「ああ、確かに」


「トドメは譲るぜ、先輩としてな」


「そりゃどうも!」


「Reload

Installation completed

メルトアーマー、ランスモデル」


俺は再びランスモデルを纏った。


様々なモデルを試したが、やはりランスモデルが一番しっくり来る。


俺はアプリ内の〈ギガフィニッシュ〉の項目をタップした。


俺の持つランスにスタンバイスロットと同様のスロットが生成した。


俺はスマートフォンをランスに出来たスロットに差し込んだ。


「ランス。ギガフィニッシュ」


音声と共にランスが光りだした。


ギガフィニッシュ。


メルトアーマー内の全てのパワーを武器及び機動力に振り分けた一撃必殺の能力。


使用時間には限度があり、更に相手の攻撃を受けた際には致命傷になりかねない危険な技。


だがそれを使う価値は十分にある。


そうノアが言っていた。


俺は走り出した。


火炎弾の軌道を読み取り、瞬時に身をかがめ、跳ね、旋回する。


ギガフィニッシュ中はそんな事も簡単に出来た。


顔の横をかすめ、徐々に慌てるリザードレギュラスに接近した。


「これで!!ラスト!」


俺はランスを思いっ切りリザードレギュラスに突き刺した。


「あ・・・ああ」


リザードレギュラスは徐々に体が溶けていった。


俺はすぐに空を見上げた。


空に書かれた数字が一つ減り、99392と表示されていた。


疲れからか、俺は地面に座りこんだ。


だが少しの達成感もあった。


「たく、大丈夫かよ」


「ああ、すまない。」


俺はヒーローが嫌いだ。


諦めなければ夢は叶うとかヒーローはいつも君たちのそばにいるとか。


綺麗事ばかり言うヒーローが嫌いだった。


本当にヒーローを求めた時、テレビの中から俺を助けてくれなかったヒーローが嫌いだった。


だが・・・そんなことを考えていた俺もこの力を手に入れた。


正直、この力を使う事に躊躇いもある。


サモ社の事も、町の事も、ノアの事もわからない事だらけ・・・


それでも・・・こんな俺でも誰かを救えるのなら・・・


誰かの為に命を投げ出せるなら・・


俺は立ち上がり、再びノアと共に歩き出した。




メルトアーマーサークル 第一話 セキュア再誕生編 終





名呉市で発生したレギュラス事案に関する報告 93


名呉市Cブロック、23時57分。


メルトアーマーアカバなど、19名がミッドライトスクエアビル横、西野公園にてグリムレギュラスと戦闘を開始。


24時15分、メルトアーマーエニシ、メルトアーマーセキュア、重症。


メルトアーマーレッガー、重体。


他、19名死亡。










メルトアーマーサークル 第二話に続く。

第一話を最後まで読んで頂きありがとうございます!!

第二話以降も不定期で(しばらくは毎週投稿)で続けていく予定です。


誤字脱字、ミス、アドバイスなどは遠慮なくドシドシ書き込んでくれると嬉しいです!

また、評価もお待ちしています!!


登とノアの今後の活躍にご期待ください。

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