表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
メルトアーマーサークル 名呉市臨時防衛部活動日誌。  作者: ショーさん
第一話 再誕生編
3/17

第一話 ③ セキュア 再誕生

「嫌だ!来るな!!」


男は体を引きずりながら必死に逃げていた。


だが・・・男は怪物の鎌に身体を刺された。


そして・・・驚くことに男は徐々に体が溶かした鉄のように溶けていき、その液体は怪物に吸収されていった。


あまりの出来事に俺たちは石ころのように固まる事しか出来なかった。


ただ、裕司と結衣の呼吸が荒くなるのはわかった。


俺自身も、声を殺すのに必死だった。


だが・・・俺たちの方向に足音が聞こえてくるのを感じた。


車の裏で、静かに奴らが来ないことを祈るしかなかった。


結衣と裕司の鼓動音が聞こえそうな程、俺たちは息を殺していた。


ある瞬間、足音が止まった。


一瞬俺たちは危機を逃れたんじゃないかと考えた、が、確信が持てなかった。


世界で1番長い5秒だった。


裕司が鼻で息をしたその瞬間、後ろで大きな衝撃音が走った。


振り返ると、俺たちを守っていた車は吹き飛ばされ、無残な姿になっていた。


そしてその奥には・・・怪物が目を光らせていた。


「い・・・嫌だ・・・」


疲れ切った結衣が震える声で言った。


必死に逃げる方法を探した。


その時、頭に一瞬激痛が走った。


「おい!大丈夫かよ登!!」


裕司の声で俺はなんとか気を失わずに済んだ。


目の前の怪物は変わらずゆっくりと接近していた。


その時、怪物の右肩辺りが突然爆発した。


「うわあ!」


俺たちは衝撃に吹き飛ばされそうになった。


「こっちだ!!早く来い!!」


爆発による煙の中から声が聞こえた。


俺たちは、藁をも掴む思いで声の方向に向かった。


「おい!大丈夫か!ってお前は」


声の主は赤いニットにベージュのトレンチコート、髪はポニーテール、年齢は自分より年上・・・


まさに朝、自販機で助けた女性だった。


「朝は助かった、ありがとな」


その女性はニコリとした後、再び怪物を見た。


驚いた事に怪物は3匹に増えていた。


「あ~やっぱ近代兵器は効かねぇな・・・父さんの言ってた通りだな・・・」


そう言いながらその女性はポケットからスマートフォンを取り出した。


怪物は徐々に俺たちの方に向かっていた。


「・・・おい!アンタなんなんだよ!」


裕司が切実に叫ぶ。


「私か、野上ノア、よろしくな」


スマートフォンで操作をしながらノアはニコリと笑った。


「そうじゃなくて!あんた何者なんだよ!」


「何者かぁ~それはちょっと難しいな~・・・・ただ間違いなく言えるのは・・・あたしはヒーローだ」


そういうと女性は右腕につけたプロテクター・・・スロットのような物をスマートフォンを差し込んだ。


「それって」


まさに夢で見たプロテクターだった。


ノアはこれまでの笑顔をやめ、怪物を睨みつけた。


「・・・これ以上、誰も傷つけさせない」


ノアは独り言のように呟き、その後、静かに深呼吸をした。


「・・・装着」


ノアが呟くとスタンバイスロットを中心に黒と黄色のラインがノアを覆った。


ノアの周りは、溶けた鉄のようなものが宙を舞い、ガチャガチャと変形しながら、彼女の体を纏って行った。


そして、最後に顔のようなアーマーが生成され、ノアの顔を包み込んだ。


「Installation completed

メルトアーマー、ソードモデル」


ノアのスマートフォンが発した機械音声が駐車場に鳴り響いた。


ノアの纏う鎧は西洋の騎士のような見た目をしていた。


ただし、鎧のようにブカブカ感は無く、完全に体にフィットしているように見えた。


赤のアーマーには黄色いラインが入っており、目や肩アーマーの発光は暗い駐車場では眩しく感じた。


顔のアーマーは赤を中心に大きな黄色い目が二つ、目元には黄色いラインが入っていた。


「・・・嘘だろ」


それが裕司が震えながら捻り出した言葉だった。


そんな俺たちをお構い無しに怪物は鎌を研ぎながら俺たちに接近していた。


「良いか、絶対前に来るなよ、あいつらはあたしがぶっ潰す」


ノアはそう言いながら腕を前に突き出した。


すると次の瞬間、地面から深い青色の鋼で出来た剣が生成された。


「...さあ、行くぜ」


ノアは思いきり地面を蹴り上げ、怪物に接近した。


怪物たちの鎌がノアに向かって疾風のように飛んできた。


ノアは鮮やかな身のこなしでそれを避け、剣を振り抜いて反撃した。


怪物の骨に剣がぶつかる音が暗い駐車場に響き渡った。


剣にしっかりと重みがあるのも驚いたが、それ以上にあれ程重量がありそうならアーマーを軽やかさに使いこなす姿に、あっけにとられていた。


命を掛けた戦いのはずなのに黒いアーマーの黄色いラインが煌めく後継は優雅にすら思えた。


怪物たちはノアに囲みかかり、三方向から同時に攻撃を仕掛けた。


だが、ノアは一つ一つの攻撃を見切り、舞うように軽く動き、重い一撃を怪物たちの肉体に刻んでいた。


圧倒的...という言葉でしか表現出来なかった。


1匹の怪物が青く発光を始めた。


「させるか!」


ノアはすぐに発光する怪物をターゲットにした。


だが...残りの2匹がノアの前に立ち塞がった。


そして...青く発光した怪物は俺達の方をギロリと睨み急接近してきた。


「マズイ!ソロンフィールドか!」


もう一匹の化け物と戦うアーマーは言った。


フィールドは身動きの取れなくなった俺たちを中心に展開されて行った。


さっき見た街を覆うバリアに少し似ていた。


「これを!受け取れ!!!」


ノアは裕司に黒いプロテクターを投げた。


「これは」


そのプロテクターはまさにさっき夢で見た物だった。


「これをどうすれば!」


裕司がそれを聞き終わるより前にフィールドは俺達を完全に閉じ込めた。


一瞬真っ暗になった後、徐々に光に包まれた。


だが、その光は俺にとって最悪の光だった。


目の前に広がるのは、瓦礫、火災、そして思い出したくもない景色。


10年前のあの火災の景色が目の前に広がっていたのだ。


俺は思わずスマホに目を落とす。


裕司は周辺とだけ表示され、おじさんは圏外と表示されていた。


「登、これって」


近くにいた裕司が口を開けた瞬間、耳にズキリと来る声が聞こえた。


「ヘェ、オマエノキオク、オモシロイナ」


俺たちの目の前に現れた怪人はノイズの様な声でそう語りかけて来た。


まるで日本語を理解してない人が、意味を理解せずに話す日本語のようだった。


「ソードヲモッタメルトアーマーニハカテナイ、ダカラオマエタチダケデモイタダクゾ」


「おい...!!お前はなんだんだよ」


...


俺の叫びはこの空間を虚しく反響した。


怪人は無言で迫って来ていた。


俺は最悪死んでもいい。


だが裕司と結衣だけには死んでほしくない。


逃げなきゃ。


俺は無意識にそう思った。


だが、裕司はともかく怪我をしてる結衣を逃すのは不可能。


必死に逃げる方法を探した。


「それは目の前の化け物から逃げたいのかい?それともこの場所から逃げたいのかい?」


再び頭痛と共に声が聞こえた。


驚いた俺は顔を上げた。


目の前に夢に見た子供の頃の俺が立っていた。


「けどここで逃げたら君の大切な人、死ぬよ」


「そんなのわかってる、けど」


「あの日、君は自分の弱さを恨んだ、自分が弱いせいで、自分だけじゃない、知らない人まで殺した、あの時の絶望、忘れちゃったのかい?」


「そんな訳ないだろ!!」


思わず叫んだ俺に裕司は困惑していた。


「登、お前さっきから誰と話してるんだ」


裕司の声を無視して俺は少年とこの話を続けた。


「本当はわかってるんだろ?この状況を打開出来る最強の方法」


「最強の方法...あぁ、わかってる」


そういうと少年は静かに消えていった。


目の前の怪物は少しずつ俺たちに近づいていた。


「...裕司、俺にそのプロテクターを俺に!!」


俺は叫んだ


「は!?お前何言って」


「良いから早く」


俺は叫んだ。


困惑気味に裕司は持っていたプロテクターを俺に投げた。


キャッチしたプロテクターは夢で見たようにすぐに右腕にかざした。


すると、プロテクターからベルトのようなのようなものが飛び出し、腕に巻き付いた。


「スタンバイスロット」


プロテクターから機械音声が流れた。


このプロテクターの名前はスタンバイスロットと言うのだろう。


俺は静かにポケットに入れていたスマートフォンを起動し、アプリ、メルトポータルを起動し、真ん中に書かれた〈装着〉のボタンをタップした。


「初装着を行います。データ収集中...収集完了。スタンバイスロットにスマートフォンに差し込み、装着してください。」


俺のスマートフォンから機械音声が流れた。


静かに、スマートフォンを持ち上げた。


自分の鼓動が早まるのが痛いほど伝わった。


白状しよう、俺はヒーローが嫌いだ。


諦めなければ夢は叶うとかヒーローはいつも君たちのそばにいるとか綺麗事しか言わないヒーローが嫌いだ。


本当にヒーローを求めた時、テレビの中から俺を助けてくれなかったヒーローが嫌いだ。


何より、俺はヒーローになれない。


助けを求め、犠牲を増やすことしか出来ない。


その事実が更にヒーローを嫌いにした。


だが・・・今俺は今ヒーローになろうとしていた。


不思議な巡り合わせ...としか表現出来なかった。


スマートフォンをスタンバイスロットにセットした。


「装着」


初めて言ったとは思えないぐらい自然に発した言葉だった。


軽快な音楽が流れるスマートフォン。


そして音楽と共に俺の体にアーマーが装着されていった。


アーマーは次々と自分の体に形成されていく。


そして、最後に顔を守るためのヘッドアーマーが形成された、顔のアーマーは被ると何も見えなくなった。


「さあ、再誕生だ」


暗闇の中で少年の声が響いた。




名呉市で発生したレギュラス事案に関する報告 7


スカルレギュラスのソロンフィールド内にて永瀬登、スタンバイスロットに私用のスマートフォンを装填。


即座にスロットから大量の粒子型メルトを噴出。


ヘッドアーマーの生成が完了し、一連のメルトアーマー装着シークエンスが完了。


「Installation completed

メルトアーマー、起動」


スマートフォンからの音声によりメルトアーマーの正常装着を確認。同時に、ヘッドアーマーの目に当たる部分が青色に発光。


名呉市Kブロック、19時30分


メルトアーマー、シリアルNo N0000002 通称 メルトアーマーセキュア※ デフォルトモデル誕生。


※メルトアーマーセキュアの名称は後に本人が命名






スタンバイスロット!


スマートフォンをスタンバイスロットに装填!!


装着!!


Installation completed

メルトアーマー!!


総意 装着せよ


スタンバイスロット!


そして!ソードモデル!


モデルチェンジシリーズ!


メルトアーマーはサモ社の商品です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ